デヴィ夫人、与沢翼も…税務署vs.有名人の戦いがすごい!

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『税金官僚に痛めつけられた有名人たち』(光文社)

 国民の3大義務の中でも、金持ちから貧困層までがこぞって頭を悩ませているのが「納税の義務」。その納税をつかさどるのが国税庁と、行政機関である税務署。コワモテの政治家であれ、大企業やブラック企業のワンマン経営者であれ、有名芸能人であれ、この組織に睨まれればひとたまりもなく“潰されて“しまう。まさに最強の公的機関である。

 そんな税務署と戦った有名人たちの記録を対談形式でまとめた一冊が、『税金官僚に痛めつけられた有名人たち』(副島隆彦/光文社)。本書にはデヴィ夫人や与沢翼など計7人の有名人が登場し、税務署にどのように痛めつけられたかが克明に記されているのだ。

 まず、歯に衣着せぬ毒舌で、芸能界有数の“猛女”として知られるデヴィ夫人。もともとデヴィ夫人は、国籍上は「非居住者」である外国人であり、長年、日本で得た収入の2割を源泉徴収される形で納税してきた。ところがある時、「プロ野球の外国人助っ人と同じで、日本で収入を得ている以上、確定申告して税金を払わなくてはいけない」と、突然通告されたという。

 しかも税務署のやり口はかなり巧妙で、たとえば、それまでずっと運営してきた音楽財団への文化事業支援に対しては、「寄付ではなく、単なる趣味、道楽だ」として贈与税を100%課税。この際、本来ならば修正申告をすることができたのだが、税務署員は「修正申告をすると、税務署の壁に『この人は修正申告をしました』と名前を出して貼られますけど、いいですか」と、有名人であるデヴィ夫人の弱味に付け込むような交渉を持ちかけ、「では、僕たちのほうでやっておきますから」と半ば騙すような形で1億円近い追徴課税を課してきたという。言うまでもなく、重加算税は仮装・隠蔽を伴う悪質な脱税行為に対して課されるペナルティである。

 また、パリのシャンゼリゼ通りに法人名義で所有していたアパルトマンを売却した金を日本に送金した際も、会社を通していたことから個人への「配当」と解釈され、最終的には売却代金の98パーセントを失ってしまったという。現地フランスで33%の不動産譲渡税を払っていたため、実質的な二重課税なのだが、税務署はお構いナシ。デヴィ夫人はこの一件を裁判に訴えたが、弁護士ですら「3パーセントの勝ち目しかないけど、やってみますか?」というほど勝ち目のない戦いで、最高裁まで争った末に敗訴している。

 そもそもの資産原資が、インドネシアの故スカルノ大統領の第三夫人として相続した莫大な遺産であることを考えれば、庶民目線で素直に同情することは難しいが、さすがにこれでは「完全にハメられました」「本当に私は、何億円もの税金を支払うためだけに帰ってきたみたいです」と嘆くのも無理はない。

 最近では“ネオヒルズ族のトリックスター”として注目を集めてきた与沢翼が、今年4月に法人税が原因で「資金繰りが完全にショートした」として、会社の破綻を公表したことも記憶に新しい。

 与沢といえばマスコミに登場して湯水のように金を使うことで注目を集め、怪しげな情報商材を売りまくって急成長してきたことは周知の通り。テレビで蕎麦を食べるためだけに長野までヘリを飛ばすシーンが放送されると、その数日だけで3千万円の売り上げがあったというが、こんなビジネスモデルに税務署が目をつけないわけがない。

 当然ながら、与沢も税金対策は行っていたわけだが、皮肉にも破綻のきっかけとなったのは2013年6月に行った、2012年分決算の修正申告だったという。この修正申告を終えた1週間後に税務調査が入り、そこから出てきた法人税、法人住民税、法人事業税の合計は2億5千万円。中でも法人税が1億円を越えたことで管轄が国税局に移ったのだが、ここでは住民税では認められた分割支払いが認められず、「1週間で、1億3千万円全額を一括で払え」という取り立て通告を受けてしまう。

 なんとか8千万は支払ったものの、関連会社社長が売り上げ金を持って逃げてしまったといった理由もあって、支払いは困難に。与沢は分割払いを訴えるが国税は頑として聞き入れず、すぐさま自宅や事業所などを差し押さえて敷金を回収したため、与沢は事業継続が困難となり、資金ショート宣言せざるを得なかったという。

「年収12億円」「秒速で億を稼ぐ」と公言してきた男にしてはいささか情けない結末だが、税務署の前では、どれだけ面の皮が厚かろうが、アッサリと虚構の化けの皮をはがされてしまうということなのだろう。

 相続税として400億円もの大金を支払ったのは、消費者金融大手・プロミスの創業者にして総資産額1144億円の富豪・神内良一氏だ。01年、プロミスの株式1938万株を所有していた長男・英樹氏が急逝。その遺産額約1578億円を相続するためにはどうしようもなかったというが、泣き寝入りするしかなかった神内氏は、「所得税を払っているのだから、二重課税になる相続税は即刻、廃止せよ」「税金取り官僚というのはちょっと頭がおかしい人たちですね」と怒りを隠さない。この経験を経て日本の税制に嫌気がさした神内氏は「もう財産は残さない」と決意。経営から引退してプロミスの株式を売却した資金を使い切るため、すでに「ほとんど儲けはない」という北海道での農業ビジネスや国際福祉に500億円以上を使ったという。
 
 このほかにも本書には、FX取引で億万長者となるも、所得税法違反で告発され2億5千万円の「借金」を背負わされた磯貝商店社長の磯貝清明氏や、マルサのガサ入れを食らって刑事告発されたものの、5年間の法廷闘争を経て、国税・検察に完全勝利するという稀有な体験を持つ元クレディ・スイス証券部長・八田隆氏。「バブルの帝王」と呼ばれ、97年に強制執行を逃れようとした妨害容疑で逮捕された元麻布建設社長・渡辺喜太郎氏などの濃いメンツが登場する。いずれも税金官僚への不信感は相当なもので、それぞれ「相続税は即刻、廃止せよ」「交際費への課税をやめよ」といった主張を展開している。著者も現在の日本を、「金持ち層への嫉妬と妬みを上手に利用して、あらゆる増税を国民に是認させようとする財務官僚の策略に乗ってしまっている」として、「税金官僚が日本を滅ぼす」と嘆いている。

 なるほど確かに税金官僚のやり口には理不尽さを感じないでもない。だが、それでも彼らの主張に素直にうなずけないのは、やはり金持ちに対する庶民の僻みなのか。
(時田章広)

最終更新:2018.10.18 01:44

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