ブラック企業経営者が明かす"社畜化教育"の洗脳手口とは?

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ブラック企業経営者の本音』(秋山謙一郎著/扶桑社新書)

【トカナ初出】(2014年6月)

 従業員の拘束時間を長くし、勤務時間を延ばすために始業時刻よりも早い時刻に朝礼を設定する(給与は始業時刻以降の分しか支払わない)。自社商品を購入しなければ、従業員が仕事ができない仕組みにする(実質的に人件費を削減する)。社会貢献と大きな理想を掲げ、従業員が断れない環境をつくり、ボランティアという名目でタダ働きをさせる(さらに人件費を低く抑えることができる)……。

 従業員をこうした悲惨な目に遭わせる「ブラック企業」、その経営者はいったい何を考え、どんな経営を行っているのか――。

ブラック企業経営者の本音』(秋山謙一郎著/扶桑社新書)では、ブラック企業経営者の考え方に迫ろうと、取材に約3年、延べ100人のブラック企業経営者にインタビュー。そこで明らかになったのは確信犯的に社員を、ブラック企業にとって"使い勝手のいい人間"、すなわち「社畜」に仕立てあげようとする社畜化教育の全貌だった。社畜化教育のためには、入社させて新人研修を終えるまでが重要だという。

■洗脳の入り口

 まずは、ブラック企業の求める"理想的な人物像"がある。理想的な人物像は、「大人しく真面目で、上からの指示には従いそうで、責任感が強い者」。とあるブラック企業の社長はこう語る。

「新卒で大手企業に入れない。大学でもFランクっていうの? 偏差値低くて、就職率もあまりよくないっていう。そのクラスで大人しい真面目な子なら、ウチみたいなブラックでも大歓迎よ。実際にそういう属性のコが一番多い。2、3年使い倒して出て行ってもらうけど」(本書より)

 面接ではFランク大学の大学生を中心に積極採用する。次に、入社後の社畜化教育だ。ブラック企業は誰もが一目で見て、"新人だ"とわかるよう服装に制限を設けることが多い。

「まず新人が新人であることを自他共にわからせることから始まる。新人が着る、いや着ていい服装、ここから新人への洗脳が始まっていると言ってもいい」

「新人には『早くこの境遇から抜け出そう』という闘争心に火をつけるため。古株の者には『ちょっと自分は他のバイトより偉いぞ』という優越感をくすぐることが目的だった」

 ファミレスをはじめとする外食産業のほか、建設業界、美容・理容業界でも、新人に服装の制限を設け、社内における身分が一番下であることを視覚的に認識させ、心理的にプレッシャーをかけるのだ。

■巧みな心理操作で、社畜誕生!

 従業員は"消耗品"だと割り切るあるIT系企業の社長は、徹底して新入社員の存在を無視することも重要だという。

「入社前は、面接時などでは本人の話に合わせて愛想よく振る舞う。で、入社したら、態度を豹変させる。一言も口を利かないとかね。これで新人はまず私のことを怖いと思う」

 慣れない職場で緊張状態にある新入社員は「何か自分は悪いことをしたのではないか」と思い始める。さらに、頃合いを見て、社畜の刻印を焼き付ける。「新人が就業時間中に少しでも手持ち無沙汰にしていたら、その場でどやしあげる。そして言う。『お前、会社にどれだけ貢献しているんだよ』と」

 そして、最後に、奈落の底につき落とす。期待しているから仕事を任せると新入社員には過分な仕事を振るのだ。新入社員は与えられた仕事でベストを尽くそうと張り切る。しかし、無理に無理を重ねているため、結果的に雑な仕事になってしまう。

 その結果を前に上司は「こんな仕事ぶりだと正直給料払えないよ。それにこの仕事、どれだけロスしているんだよ? お前に仕事を振った俺が悪かったにしても酷すぎないか」とキレる。打ちひしがれた新入社員は「会社に損害を与えても、それでも雇ってもらえる」という負い目を負い、無理難題に従うようになるのだ。

 新人研修中に辞めたいという社員に対しては中間管理職が甘い言葉や体育会系の規律を設け、「辞める」と言い出しにくい雰囲気を作り、さらに説得にあたる。というのも、中間管理職にとっても管理職研修を兼ねており、新人が辞めることは自らの成績に響くために必死になるというワケだ。「採用にかかったカネ。辞めるなら最低それ以上稼いでから」というのがブラック企業の本音なのだ。

 時は4月。おそらく、今年も多くのブラック企業で「新人研修」という名の社畜化教育が行われるはずだ。将来ある若者がその悪辣な「洗脳」に取り込まれることのないよう、祈るばかりである。
(文=編集部)

最終更新:2014.06.30 07:39

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