アニメ大国の中国が質・量ともに日本を超える日は来る!?

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なんで私が中国に!?』(日野トミー著/イースト・プレス刊)

【ビジネスジャーナル初出】(2013年9月)

クールジャパン、ジャパニメーションなどのキャッチコピーでもてはやされ、アニメーションはいまや日本が世界に誇れる産業だ。しかし昨年には、そのアニメの制作量も中国に抜かれてしまったのをご存じだろうか。そのもてはやされ方とは裏腹に、低賃金、長時間労働、人手不足といった労働条件の悪さや現場の過酷さが度々話題になるアニメ業界。それでも、求められる作品のクオリティは高まるばかり。そんな状況下で、少しでもコストダウンするため、アニメ業界でもどんどん海外への外注を行っている。最近アニメのエンドロールを見ていると、中国や韓国の会社名やスタッフ名を目にする機会が増えた。

 現在の日本のアニメは、この中国や韓国に支えられて成り立っているといっても過言ではないが、その実態はあまり知られていない。そんな中国のアニメ事情がわかる本が登場した。それが、8月21日に発売された『なんで私が中国に!?』(日野トミー著/イースト・プレス刊)だ。この本の中で、作者であるアニメクリエイターの日野トミーがアニメ会社を設立するため、急遽中国の西安に行くことに。知られざる中国のアニメ業界とは、いったいどうなっているのだろうか?

 「日本アニメを見まくっているから目が肥えてる」というくらい日本のアニメが好きな中国人。しかし、日本のアニメは大好きでも「日本のオタク的なセンス」は浸透していない。そもそもアニメを見ている媒体が、海賊版動画サイトだから仕方がない気もするが、日本の萌え絵的なものを描くのはとにかく苦手なようだ。それに海賊版では、足りない素材を勝手に描いたり、どこかから拾ってきたりしている。やはり著作権に関する意識はかなり低いようだ。

■Flashを使ったアニメの生産性の高さ

 こんな状態の中国にアニメの外注をして、本当に大丈夫かと不安になってくるのだが、実は中国のアニメには、すでに日本にも負けない強みがある。それが、Flashアニメにおける生産性の高さだ。Flashとは、より少ない枚数でなめらかなアニメーションをつくることができるソフト。日本では『秘密結社鷹の爪』(テレビ朝日系、NHK Eテレ)という作品で使われているのが有名だが、主流になってはいない。

 しかし、中国において「美術系の大学や専門学校では、Flashの授業が必修のところも多い」というほどFlashアニメが盛ん。

 大手アニメ制作会社では、最も大きなスタジオには200人近い人がいて、1作品をいくつものラインに分かれて、並行して大量に制作している。日本の30分アニメは、1話における制作期間が短いものでも1カ月はかかるのだが、中国で大人気の『喜羊羊与灰太狼(シーヤンヤンとフイタイラン)』というFlashアニメは、年間100話以上制作されている。1話15分のFlashアニメといえども、この生産力はものすごい。実際、中国は今や日本を超えて世界一のアニメ生産国になっているのだ。

 また、中国人のつくるアニメーションはディズニーを参考にしているので、枚数(コスト)を制限された中で独特の進化を遂げてきた日本のアニメとは違う。だから、FLASHアニメといえども、かなりの枚数を使うし、初めて見るとなんだか「ぬるぬる動く」とか「動き過ぎ」と感じる。

 前述の本の中で、作者の日野氏が初めてできた部下に「この素材を動かしてみて」と作業の指示をすると、「こっちのほうがかっこいいから」という理由で、指示したテイストとは違う"すごく動く"アニメーションをつくってしまう。中国人は、時間や枚数がどれだけかかっても、力いっぱいつくって手加減していない。日本のアニメで養った目と、ディズニーを模した技術。確かに、このふたつが合わさったら、最強のアニメが生まれるのかもしれない。

 車や鉄鋼だけでなく、GDPやアニメの制作量までもが中国に抜かれてしまった日本。まだ世界一を誇れるアニメ業界においても、その数だけでなく、クオリティや技術といった点でも中国に抜かれてしまう日がくるかもしれない。
(文=和田実)

最終更新:2018.10.18 04:25

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