"元祖ブラック企業"京セラ・稲盛和夫がチヤホヤされる不思議

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
生き方 人間として一番大切なこと』(著:稲盛和夫/サンマーク出版)

【ビジネスジャーナル初出】(2013年8月)

 「365 日24 時間死ぬまで働け」(『理念集』より)と社員を自殺に追い込む……ワタミフードサービス株式会社(ブラック企業大賞)
 「売り上げがとれなければ給料も休みも与えない」と店長を自殺に追い込む……株式会社クロスカンパニー(アパレル業界賞)

 先日、「ブラック企業大賞2013」が発表された。過酷な労務管理や劣悪な労働環境が次々に暴かれ、ブラック企業に対する社会の目も厳しくなってきた。

だが、その一方で、メディアでは、ブラック企業の元祖ともいうべき経営者が、やたらチヤホヤされている。京セラ・KDDIの創業者・稲盛和夫のことだ。稲盛といえば、京セラ、KDDIを成功させ、2010年、78歳にして日本航空の再建を引き受け、会社更生法の適用から2年で営業利益2000億円というV字回復を成し遂げた。

このため「名経営者」として、人生論にも関心が集まり、10年前に出版された『生き方 人間として一番大切なこと』(サンマーク出版)は100万部を突破した。

 稲盛式経営のポイントは、フィロソフィ(企業哲学)とアメーバ経営。社員としての判断基準・フィロソフィと、組織を小集団(アメーバ)に分け、独立採算で運営するアメーバ経営で「全員参加経営」を実現させる……こう書くと聞こえがいいが、「全員参加経営」の実情は社員にとって過酷なものだ。

 「一言でいえば、それはまるで軍隊であった。京セラでは、毎日朝礼が行われる。中でも、毎週月曜日に行われる全体朝礼は、軍隊のそれ以外のなにものでもない。前の会社の研修で、自衛隊に体験入隊したときのことを思い出した」とは京セラに中途入社したものの、その社風に耐えかね退職した技術マンの言葉だ。

●京セラのブラックな経営実態

 京セラの内部告発本『京セラ 悪の経営術』(瀧本忠夫/イーストプレス/1999年)に、その実態が明らかにされている。

 「京セラで驚いたのは、とにかく残業時間が恐ろしく長いことである。さらに、ほとんどの人が朝早くから来る」

 「京セラ社内では『家庭を考えるようでは、京セラ幹部は務まらない』という言葉がある。事実、長く京セラにいる社員は『最近、少しは"まし"になったが、昔は月曜の朝会社に出てきたら、土曜日の夜まで家に帰ったことはなかった』と言っていた」

 稲盛式経営は、アメーバ単位で時間当たりの採算性が計算される。「売上をより多く、出費(人件費を含め)をより少なく」する競争を余儀なくされる各アメーバの責任者は、数字が悪ければ降格だ。

 「稲盛名誉会長は責任者クラスが大変困るようなシステムを作り上げ、そのシステムにより、責任者クラスが率先して従業員を奴隷のごとくこき使わざるを得ないような手をよく考えたものだ」(同書)。それによる実質連続32時間の労働で、帰宅中に居眠り運転で事故を起こした社員もいたという(幸いにも無事だった)。

 「京セラは、おそらく日本の企業の中で、従業員が定年前に退職していく率のかなり高い会社であると私は思う。(略)過去には40人入った社員が翌月には全員辞めてしまったことがある」(同書)

 それでも、稲盛への信頼は絶大。サービス残業、高い離職率、ワンマン経営者への絶対的な忠誠……これはまさにブラック企業。

●滅私奉公を求める稲盛式経営

 ブラック企業では、ワンマン経営者が社員を独自の理念で洗脳支配するケースが多い。独自の理念が社員の生活までも束縛し、心身ともに追い込まれてしまうのだ。

 稲盛の人生論『生き方』もワンマン経営者ならではの、危うい文言が目立つ。

 「自分の可能性を信じて、現在の能力水準よりも高いハードルを自分に課し、その目標を未来の一点で達成すべく全力を傾ける。そのときに必要なのは、つねに『思い』の火を絶やさずに燃やし続けるということです。それが成功や成就につながり、またそうすることで、私たちの能力というのは伸びていく」(同書59ページ)

 「欲、すなわち私心を抑えることは、利他の心に近づくことです。この自分よりも他者の利を優先するという心は、人間の持つすべての徳の上で特上、最善のものである」(同書154ページ)

 「人間が本当に心からの喜びを得られる対象というものは、仕事の中にこそある。(略)働くことで得られる喜びは格別であり、遊びや趣味では決して代替できません。まじめに一生懸命打ち込み、つらさや苦しさを越えて何かを成し遂げたときの達成感。それに代わる喜びは、この世にはないのです」(同書158ページ)

 強い「思い」と「利他の心」があれば、「仕事」を通じて人生の喜びが得られる……これは会社に自分を捧げる社畜になれば幸せになれる、というブラック企業の論理そのものだ。しかも、「生き方」というタイトルにもかかわらず、その内容は仕事のことばかり。人生哲学を語っているようで、その実、企業哲学を語り、企業の論理を読者に押し付ける一方なのだ。

 稲盛が厄介なのは、臨済宗妙心寺派円福寺にて在家得度をしており、仏法の教えに基づいているように見えることだ。ブラック企業の論理も東洋思想という袈裟でくるまれれば、ありがたく見えてしまう。

 稲盛の罪は他にもある。自らが塾長を務める勉強会「盛和塾」で、多くの稲盛チルドレンをつくりだし、ブラックの種をまいていることだ。盛和塾の塾生は、中小企業の若手経営者を中心に8000人超、お互いを「ソウルメイト」(魂で結ばれた仲間)と呼び、「お元気さまです!」という新興宗教も顔負けの挨拶を交わす。「社員を犠牲にしてでも、勝ち残る企業が正しい」という企業論理がはびこる現在、「ソウルメイト」たちは、ブラック企業化する大義名分を稲盛式経営に見出しているのだ。

 稲盛式経営の実態をみれば、日本航空の「功績」も、1万6000人の社員削減などといった社員を犠牲にしたところが大きい。こうした社員の切り捨ての経営は、ユニクロを展開するファーストリテイリング柳井正会長兼社長も同様だ。

 「生産性はもっと上げられる、押しつぶされたという人もいると思うが、将来、結婚して家庭をもつ。人より良い生活をしたいのなら、賃金が上がらないとできない。技能や仕事が今のままでいいとはならない。頑張らないと」(朝日新聞4月23日付朝刊/9面インタビュー)

 「良い生活をしたい」のならば、会社に滅私奉公を。稲盛式経営がチヤホヤされているかぎり、ブラック企業はなくならないのではないか。
(文=和田 実)

最終更新:2018.10.18 03:25

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

生き方 人間として一番大切なこと

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

"元祖ブラック企業"京セラ・稲盛和夫がチヤホヤされる不思議のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。ブラック企業企業哲学の記事ならリテラへ。

フィフィが水原希子に狡猾なヘイト攻撃

18 片山さつきが坂上忍に批判された 19 ネトウヨ局アナがテレ朝のお昼の顔に 20 嵐・大野智に決意させた同棲謝罪会見強要
1 安倍首相が統計不正に「選挙5回勝ってる」とヤジ
2 嫌韓批判で炎上も…石田純一はブレない
3 渡辺謙が東京五輪の東北無視を批判!五輪の人命軽視がひどい
4 安倍政権が拉致被害者の生存情報を隠し
5 玉川徹が中国人のマナーをあげつらう自番組を批判!
6 勤労統計不正で厚労省委員が官邸と菅長官の圧力を証言
7 安倍首相「自衛隊募集に6割以上の自治体が協力拒否」は嘘だった
8 小川彩佳アナが『NEWS23』キャスター就任か!
10 青山繁晴議員が「僕と握手したらガンが治った」と吹聴
11 厚労省に圧力をかけた首相秘書官は安倍首相の子飼い官僚
12 統計不正は安倍政権ぐるみの偽装だった証拠が!安倍に合わせ…
13 安倍「私は森羅万象を担当」発言の背景
14 北方領土の日、「日本固有の領土」の主張が消えた! 
15 首相官邸の望月記者排除に新聞労連が抗議声明
16 小川彩佳アナ退社の要因はテレビ朝日の安倍政権忖度か
17 ウーマン村本が朝鮮学校差別を煽る政治とメディアを痛烈批判
18 フィフィの蓮舫デマに新聞が丸乗り! 背景に安倍忖度と女性蔑視
19 安倍がトランプ「ノーベル賞に推薦された」で世界に恥
20 辻元清美の外国人献金に大騒ぎする夕刊フジの愚劣

カテゴリ別ランキング

社会

  1. 1「安倍がトランプをノーベル賞に推薦」を海外メディアが
  2. 2 安倍首相が統計不正に「選挙5回勝ってる」とヤジ
  3. 3フィフィの蓮舫デマに新聞が丸乗り! 背景に安倍忖度と女性蔑視
  4. 4安倍政権が拉致被害者の生存情報を隠し
  5. 5渡辺謙が東京五輪の東北無視を批判!五輪の人命軽視がひどい

ビジネス

  1. 1不適切動画バイトを血祭りにあげるマスコミとネットの異常
  2. 2セブン-イレブンオーナーの自殺続出
  3. 3ブラック大賞セブンの実態総まとめ!
  4. 4セブン-イレブン仰天の仕入価格とは?
  5. 5セブンイレブンの加盟店搾取がヒドい

カルチャー

  1. 1直木賞受賞『宝島』が突きつけた「沖縄問題」の本質
  2. 2白井聡が「靖国に歴史的大義がない」
  3. 3ホリエモン、真央のタクシー叩きは弱い者いじめ
  4. 4きゃりーの愛読書がグロすぎる!
  5. 5追悼・橋本治が安倍政権と日本会議が語る「伝統」を喝破

芸能

  1. 1 橋本聖子が池江選手の病を利用しスポーツ界の不祥事放置を宣言
  2. 2「憲法9条を守れ」と主張する芸能人
  3. 3嵐・大野智に決意させた同棲謝罪会見強要
  4. 4『スキャンダル専門弁護士』が伊藤詩織さんやはあちゅうを揶揄
  5. 5ネトウヨ局アナがテレ朝のお昼の顔に

@litera_webさんをフォロー

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄

話題のキーワード

  1. 1アベを倒したい!
  2. 2メディア定点観測
  3. 3ネット右翼の15年
  4. 4ブラ弁は見た!
  5. 5左巻き書店
  6. 6横田 一
  7. 7「売れてる本」の取扱説明書
  8. 8安倍晋三
  9. 9SMAP
  10. 10半井小絵
  11. 11ネトウヨ
  12. 12政治からテレビを守れ!
  13. 13玉川徹
  14. 14反日
  15. 15編集部
  16. 16梶田陽介
  17. 17宮島みつや
  18. 18日本会議
  19. 19櫻井よしこ
  20. 20噂の真相
  21. 21中居正広