テレビ局も抱える著作権トラブル、"原作"と"原案"の違いは?

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土屋アンナ オフィシャルブログより


【日刊サイゾー初出】(2013年8月)
 ついに製作者側が東京地裁に損害賠償請求訴訟を起こし、判断が司法に委ねられた土屋アンナの舞台降板騒動。そんな中、注目を集めているのが、"原作と原案の違い"という問題だ。

 今回の騒動では、舞台の原作者である濱田朝美は"舞台化を許諾していない"と述べているが、舞台製作者側は"原案にすぎない"と主張。この問題は『ミヤネ屋』(読売テレビ系)や『ひるおび!』(TBS系)などのワイドショーでも大きく取り上げられ、著作権が発生する原作とは違い、「原案の場合は、作者の許諾やギャランティは必ずしも発生しない」「原案には著作権は存在しない」という説を紹介していた。

 しかし、ここでひとつ疑問が生じる。テレビで紹介された説を現実に置き換えれば、「身体が大きくなったり小さくなったりする海賊の少年が主人公の物語」という、あからさまに『ONE PIECE』を想像させる物語を、著作権者である尾田栄一郎や集英社の許諾もなく、勝手にアニメや小説、舞台にすることができるということになってしまう。それってOKなのか?

 確かに、原作と原案の違いについて、明確なルールは存在しない。例えば、北川景子主演の土曜ドラマ『悪夢ちゃん』(日本テレビ系/2012年)は、恩田陸の『夢違』が原案とされているが、こちらも小説には出てこない主人公の少女時代のオリジナルストーリーをテレビドラマとして展開。また、映画化もされた渡部篤郎主演のNHKドラマ『外事警察』(09年)でも、麻生幾の同名小説は「原案」とクレジットされているが、小説に登場しない人物や、名前は同じでも所属部署や役割が異なる人物が多く登場するなど、小説とテレビドラマでは異なる点が多かった。

 さらに、吉永小百合主演で、吉永自身もプロデュースにかかわった映画『北のカナリアたち』でも、湊かなえの『二十年後の宿題』が原案とクレジットされているが、吉永が原案小説の文庫版の解説に寄せた文章によれば、元教師が主人公のオリジナルストーリーを構想していたところ、よく似た設定の「二十年後の宿題」を偶然発見。「原案とさせてほしい」と、湊に連絡をとったのだという。

 これらは、小説に着想を得てオリジナルの設定を加えたもの、あるいは制作を進めていた際に類似した物語を発見し、著作権者に了承を得たことなどから、「原案」としたケースといえよう。だが、原作にはない人物が登場したり、設定がかなり改編されていても、原案ではなく「原作」としている場合も多々ある。

 よく知られているのは、月9ドラマ『ガリレオ』(フジテレビ系/07年~)シリーズのケースだ。柴咲コウや吉高由里子が演じた女性刑事は、原作である東野圭吾の小説には登場しないし、大ヒットを記録した映画『テルマエ・ロマエ』でも、物語の重要人物である上戸彩演じる女性マンガ家は、原作ではまったく描かれていない。また、木皿泉脚本の『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系/05年)も同様で、亀梨和也・堀北真希と共に主演とした山下智久の役は、白岩玄の原作では存在しない。現在、高視聴率を獲得しているあの『半沢直樹』(TBS系)だって、ストーリーは原作に忠実ではあるが、原作では堺雅人演じる主人公の父親は自殺しておらず、妻も広告代理店で働くやり手で、ドラマの上戸彩のように社宅妻たちとの付き合いに頭を悩ませる専業主婦ではない。

 改変しても、原案ではなく原作として扱う。──ここには、著作権者の心情、態度も大きくかかわっているのだろう。わかりやすい例は、沢尻エリカ主演で話題を呼んだ『1リットルの涙』(フジテレビ系/05年)だ。原作となったのは同名の難病闘病記で、ドラマでは難病と闘う主人公の姿と共に錦戸亮が演じる同級生の男子との恋愛模様が描かれたが、これは原作にないオリジナルの物語。原作者の母親は、娘が体験できなかった恋愛をドラマの中で体験させてあげられるからと、この改変について好意的に承諾したのだという。

 こうした友好な関係を築くことができれば一番いいのだが、もちろん、そんなケースばかりではない。忘れてはいけないのは、原作者と揉めてしまい、妥協案で「原案」に落ち着くケースもある、ということ。ワイドショーでは今回の土屋・原案者VS製作者の騒動をまるで他人事のように報じているが、実はテレビ局も、こうしたトラブルを頻発させているのである。

 たとえば、07年に放送された『生徒諸君!』(テレビ朝日系)では、それまで原作としてクレジットされていたマンガ家・庄司陽子が、第5話から突然「原案」に変更。この経緯について製作者側から説明は一切なかったが、マンガ版のファンの間で「原作とドラマが大きく違う」と話題になっていたことからも、なんらかのトラブルが発生した結果なのではとみられている。

 原作から原案に切り替えて話が済むのであれば、まだいいほう。『ハガネの女season2』(テレビ朝日系/11年)の場合は、第2話で原作マンガにはないオリジナルのストーリーが登場。しかもそれが、発達障害を抱える男児が特別支援学級のある学校に転校すべきか否かをクラス投票で決める……という展開で、原作者の深谷かほるはこれに同意せず、その意見が製作者側に通らなかったことから、最終話で原作者を降りることを決意。原作のクレジットを外した。

 さらに、映像化される前にこじれ、テレビ局VS版元で訴訟になったケースもある。12年に起こった、NHKがドラマ化しようと動いていた、直木賞作家・辻村深月の『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』(講談社)の問題だ。こちらは脚本準備稿に対し、講談社が原作に沿うようにとNHK側に脚本の修正を要望。しかし、ドラマ製作サイドは原作からの改変を求め、両者の意見は平行線の状態に。ついには撮影開始の前日に講談社が映像化の許諾を撤回したことで、NHKは約6,000万円の損害賠償請求訴訟を起こすまでに至ってしまった。

 ずさんなのはテレビ局だけではない。98年に放送された『奇跡の人』(日本テレビ系)では、版元の角川書店がなんと作者である真保裕一に許可を得ぬままドラマ化を許諾。真保はスポットCMでドラマ化されることを初めて知ったといい、当然のことながら大激怒。版権を新潮社に移すという手段に打って出たケースも過去にはあった。

 このように、「原作者が口を出すとうまくいかない」といわんばかりに、原作者がワガママ・悪者扱いされることも少なくない。よほどの大物作家でもない限りドラマ化にはほとんど意見できないケースも多く、仲介する立場である出版社も映像化実現に漕ぎ着けたいことから、作家は編集者から製作者側と同じように「原作と映像は別物」と説得されることもあるという。

 土屋アンナの今回の騒動では、原案者に対して監督の甲斐智陽氏が「舞台化してやっている」意識があるのでは? と批判されているが、これではテレビ局や版元も同じ穴のムジナではないだろうか。
(文=編集部)

最終更新:2015.01.07 11:51

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