被害を受けた弁護士が反撃の提訴! ネトウヨの集団懲戒請求を煽動した「余命三年時事日記」ブログのヤバさ

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司法記者クラブで会見をした佐々木弁護士と北弁護士

 ネトウヨと思われる勢力から大量の集団懲戒請求を受けた弁護士2名が、昨日、霞が関の司法記者クラブで、請求者の提訴に踏みきるとの記者会見を開いた。

会見をしたのは、東京弁護士会に所属する佐々木亮弁護士と北周士弁護士。両弁護士は不当な懲戒請求が不法行為を構成するとして、今年4月、Twitter上で請求をした960名に対し損害賠償を求めて裁判を起こすと表明するとともに、訴訟前の和解も呼びかけた。両弁護士は6月20日ごろまでメールによる謝罪を受け入れるとし、それ以降は6月末日を目処に順次提訴するという。

 両弁護士は会見のなかで、自分たちは法律の専門家だからこそ訴訟で対抗できるが、一般の人々であれば、大量に襲いかかってくる集団の「悪意」と戦うことは簡単ではないと強調。このように思いを述べた。

「今回の件は、左右の意見の対立と捉えられがちだが、そういった問題ではありません。たとえば出版社や新聞社に『この記者はろくでもないやつだからクビにしろ』という通知が3000通もくるというのがイメージとしては近く、これに対抗できる一般の人は少ない。ネット上の悪意が匿名性を盾に行われてしまうのは、思想とは関係なく不当なことだと考えています」(北弁護士)

「いままで、こういうブログで煽ってきた悪意が、生活保護受給者であったり、外国籍の方であったり、日本に帰化した方にも攻撃し続けるということがありました。そうした方たちの気持ちを思うと、非常に怖かっただろうなと思う。もちろん第三者的には理解していたつもりですけど、いざ、自分が当事者になると、この怖さはまた違うものがあるなと感じます」(佐々木弁護士)

 すでにネット上では大きな話題になっているこの問題だが、あらためて、その経緯、そして背景はいかなるものなのか。振り返ってみよう。

 ことの発端は、2017年6月15日、東京弁護士会の理事者をはじめ10名に対し190名から懲戒請求がなされたことだった。懲戒理由は「違法である朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同し、その活動を推進する行為は、日弁連のみならず当会でも積極的に行われている二重の確信的犯罪行為である」なるものだったという。同年10月4日までに同じ内容の懲戒請求がなされ、合計で1000名を上回った。東京弁護士会だけでなく、全国の弁護士会に対しても同様の理由で会長らの懲戒請求が殺到し、数万件を超えているという。

 調べていくなかで、この懲戒請求は、ブログ「余命三年時事日記」が呼びかけたものであることが判明した。

「余命三年時事日記」(以下、余命ブログ)はネトウヨ界隈では大きな影響力をもっているブログで、ネトウヨ向けの雑誌「ジャパニズム」などで知られるヘイト出版社・青林堂から書籍も複数刊行されている。

 そのうちの一冊『余命三年時事日記2』によれば、余命ブログは「日本人覚醒プロジェクト」なる学生を中心とした取り組みから始まったとされる。「余命」と呼ばれるブログ主は何度か代替わりをしているらしく、現在は「余命プロジェクトチーム」を名乗る複数人で管理運営をしているとみられる。

煽動した「余命三年時事日記」とヘイト団体との関係

 では、その内容はどういったものなのか。実際にサイトをのぞいてみた。管理者と読者のエントリーが入り乱れているが、〈売国奴と反日勢力は炙り出し大成功〉〈在日特権の問題は、日本から在日がいなくなれば即、終了する。では追い出す方法を考えよう〉などと、典型的なネトウヨの語彙にあふれている。端的に言えばネトウヨの妄想が書き殴られているだけの内容だ。

 本サイトが調べた限り、余命ブログは、少なくとも2017年4月あたりから〈違法である朝鮮人学校補助金支給を要求する声明を出すという行為は許されざるものである。この件は懲戒請求をもって対応する〉などと繰り返し宣言していた。同年5月15日には、弁護士への懲戒請求書の“テンプレート”をPDFでアップしている。

 余命ブログのテンプレートにある「懲戒理由」には〈違法である朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同し、その活動を推進する行為は、確信的犯罪行為である〉などとあり、実際に、佐々木弁護士が受けた懲戒理由と同じ文言だった。

 また、懲戒の呼びかけは、佐々木、北両弁護士が所属する東京弁護士会だけでなく、全国の弁護士会および多数の弁護士を標的にしたものだった。懲戒請求者の氏名や住所、日付などは空白になっており、これにネトウヨ各自が記載したと見られる。

 ブログを読むと、懲戒請求は、2016年に東京弁護士会が出した「朝鮮学校に対する補助金停止に反対する会長声明」や、日弁連の「朝鮮学校に対する補助金停止に反対する会長声明」を攻撃する意図があると思われるが、これらは政府や文科省に対し、各公共団体に対する朝鮮学校補助金交付の停止要請の撤回と、憲法や人権条約等で保障された適正な交付運用を求めるもの。これのどこが「犯罪行為」なのかまったく意味がわからない。

 すなわち、余命ブログが「在日特権」のデマや「反日勢力」などと連呼していることを考えても、弁護士への大量の懲戒請求の背景には、グロテスクなレイシズムがあるのは間違いない。実際、余命ブログは、2015年には「7月9日から在日コリアンは不法滞在者となり強制送還される」なるデマを拡散、法務省ほか各省庁への「集団通報」を煽動していた。

 ネット上だけでなく、現実のヘイト団体との連携も見え隠れする。たとえば、余命ブログは、「日本再生大和会」なる団体と連動して、大勢の弁護士を名指しし、刑法の外患誘致罪や予備及び陰謀罪で地方検察庁に告発状を送りつけていたこともブログ等の記載からわかる。

 ちなみに「余命プロジェクトチーム」の書籍などで日本再生大和会の代表とされるT氏は、「ゴキブリ朝鮮人は出ていけ」などと叫ぶヘイトデモを繰り返してきた人物。また、ホームページの履歴や在特会の関連サイトの情報を総合すると、「在特会神奈川支部運営」の要職にある人物が同会の幹部を務めていたと考えられる。

 さらに「余命プロジェクトチーム」による著書には、「三代目余命」を名乗る人物と、在特会の創設者にしてヘイト政党・日本第一党党首の桜井誠氏の対談が掲載されている。少なくとも「余命」ブログとヘイト団体との関係が極めて良好なのは間違いないだろう。

佐々木弁護士が集団懲戒請求を受けたのは青林堂の労働事件を担当したから?

 いずれにせよ、懲戒理由の文言が同一であることを鑑みても、「余命」ブログに煽動されたネトウヨたちが今回の事案を引き起こしたとみて疑いない。しかも、この集団懲戒請求が恐ろしいのは、攻撃対象が朝鮮人学校の問題に関わる弁護士だけにとどまらないことだ。

 実は、今回、提訴の会見を開いた佐々木弁護士は日弁連や東京弁護士会の役職にもついていないし、朝鮮人学校補助金支給要求声明にもまったく関わっていない。佐々木弁護士によると、「唯一心当たりがあるのが、青林堂の元社員がパワハラを受けたという労働事件をやっていること」だという。青林堂は前述のように、「余命三年時事日記」の書籍化をはじめネトウヨ本・ヘイト本を多数出版しているが、その青林堂のパワハラ事件で佐々木弁護士は労働者側の代理人を務めている。そのことで「(ネトウヨ界隈の)恨みを買ったのかなというのが、唯一の心当たり」という。

 北弁護士も同様だ。昨年9月、〈根拠のない懲戒請求は本当にひどい〉などと佐々木弁護士を支援するツイートをしたところ、今年3月29日に、佐々木弁護士と北弁護士に、約960件の懲戒請求がなされたという。懲戒理由は、佐々木弁護士が過去に投稿した〈ネット右翼の諸君は相変わらずだなぁ。無邪気に私に懲戒請求してるのも900人くらいるけど、落とし前はつけてもらうからね。(^ー^)ー☆〉というツイートをコピペしたもので、それ以外に理由は付されていなかったという。

 レイシズムの拡散のために弁護士の集団懲戒請求をするというだけでも大問題だが、つまるところ連中は、妄想を膨らませながら不特定多数を“敵”と認定し、懲戒請求をおこなっているのだ。

 なお、佐々木弁護士が会見で明かしたところによれば、大量の懲戒請求が続いた昨年9月、これはおかしいと思ってTwitterで意見を述べていたなか、懲戒請求者の一人と思しき者から封筒が届いたという。そこには「懲戒請求者は9000000000名ですからね」と書かれていた。世界の総人口は70数億人である。封筒のなかには「外患誘致」と書かれた紙片だけが入っていたという。

 実は、この「外患誘致」というのも「余命」ブログのキーワードだ。

「反日売国奴」を死刑にしろ!とがなりたてる「余命」ブログのヤバさ

 たとえば、前述した桜井誠氏との対談が収録されている本のタイトルは『余命三年時事日記 外患誘致罪』。やはり青林堂から刊行された同書の巻末には「今すぐ使える告発委任状」と題して、〈日本再生大和会代表 T(書籍内では実名・編集部注)〉に〈外患罪に関する事実の告発、取り下げの一切を委任いたします〉とする文書のテンプレが印字されていた。

 同書には「外患罪容疑者リスト」なるものが記載されており、旧民主党の政治家を中心に60人以上の実名が挙げられている。ほかにも、元朝日新聞記者の実名をあげて「外患罪容疑者」と記している。また「余命」ブログのほうでも、複数の弁護士の実名や事務所住所などを記載したうえで、刑法第81条の外患誘致罪等で告発したという旨の記述があった。

 いったい、何がしたいのか。『余命三年時事日記 外患誘致罪』にはこのように書かれている。

〈余命プロジェクトチームの目標である「日本再生」のためには、国内に巣食う反日売国奴の排除がどうしても必要なのである。このような獅子身中の虫は、中国や北朝鮮であれば即座に逮捕して銃殺刑でまとめて処分してしまえばいいが、法治国家である日本ではそういう手段をとることはできない。〉
〈「外患罪」が適用されれば、彼ら反日売国奴は「死刑」になる可能性もあるのだ。〉

 常軌を逸している。連中がネトウヨであり、その妄想からくる差別主義や弾圧の発想が極めて危険であることは言をまたないが、たしかに、ここまでくるともはや左右の思想上の対立を超えている。こうしたとんでもない悪意は誰の身にも降りかかる恐れがあり、決して「ネトウヨVS弁護士」の構図だけ捉えて他人事にしてはならない。

 今回の集団懲戒請求事案については、他の弁護士による訴訟の動きもある。また、佐々木氏と北氏は、大量の懲戒請求を煽動した「余命」ブログに対する刑事告発についても、会見で「調査中」と語った。

 ネトウヨによる卑劣な圧力・嫌がらせ行為に萎縮する社会であってはならない。ましてやその目的は差別の正当化である。本サイトでは、今後もこの問題を注視していくつもりだ。

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