朝鮮総連銃撃事件とヘイトデモ、在特会の関係! 止まらない在日朝鮮人攻撃、NHKもテロより総連を批判

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在日本朝鮮人総聯合会ホームページより


 恐れていたことが起こった。23日未明、東京都千代田区にある在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部ビルに向かって拳銃数発が発砲されたのだ。犯人は警戒中の機動隊員に身柄を拘束され、右翼活動家の桂田智司容疑者と川村能教容疑者と発表された。

 しかし、この事件はたんに過激な行動派右翼がテロを引き起こした、というだけではすまない問題をはらんでいる。

 たしかに、桂田容疑者は以前から、行動派右翼として活動してきた人物で、1992年には天皇と皇后の訪中に反対するためトラックで首相官邸への突入を試み、官邸前の交差点でトラックを炎上させて逮捕。懲役5年の実刑判決を受けている。

 だが、桂田容疑者は近年、在日特権を許さない市民の会(在特会)の創設者で日本第一党代表の桜井誠といったヘイト運動家たちと連携。在特会などの関西在住メンバーらで結成された「チーム関西」に参加し、数々のヘイトデモを牽引していた。

 実際、自身のブログでも在日コリアンに対するヘイトスピーチを繰り返しており、なかでも2013年に大阪・鶴橋でおこなわれた「日韓国交断絶国民大行進 in 鶴橋」なるデモでは、当時中学生だった桂田容疑者の子どもがマイクを握り、「いつまでも調子に乗っとったら南京大虐殺じゃなくて鶴橋大虐殺を実行しますよ!」とスピーチし、衝撃を与えた。そして、桂田容疑者自身も、ヘイトデモ参加者らから「教官」と呼ばれ、崇められていたという。

 つまり、今回の事件は在日コリアンへの憎悪を剥き出しに、殺人予告をしてきたヘイト勢力の代表的存在が拳銃という殺傷力のある武器を持ち出し、予告を実行に移したということだ。しかも、ネットをみると、犯人の行動を非難するどころか、「義挙」などと称賛するネトウヨのコメントが溢れており、その背後に同様の思想をもつ者たちが数多くいる。

テロを後押しした三浦瑠麗、長尾敬、青山繁晴らの在日朝鮮人攻撃デマ

 さらに、もうひとつ問題なのは、今回のテロが、保守メディアや右派論客、安倍首相周辺の政治家らの言説と密接に関わっているということだ。連中はこの間、朝鮮総連が北朝鮮本国の意を受けてテロを準備しているかのようなデマを垂れ流し、在日朝鮮人への憎悪を扇動してきた。

 その筆頭が、国際政治学者・三浦瑠麗氏の「日本にはテロ目的の北朝鮮のスリーパーセルが潜伏している」「とくに大阪がヤバイ」「阪神大震災で北朝鮮の工作員の迫撃砲が見つかった」発言だ。

 三浦氏の発言がいかに根拠がないシロモノであるかは過去記事を一読いただきたいが(既報続報)、三浦氏はその発言のフェイクを指摘されると、〈大阪府の朝鮮総連傘下の商工会の人間〉が1980年の拉致事件に関わっていたことを挙げ、〈その当時大阪にテロ組織があったことはわかります〉と抗弁した。

 40年近く前の事件で大阪の朝鮮総連関係者が拉致事件に関わっていたことをもちだして、あたかも朝鮮総連じたいがテロ組織であるかのような印象操作をおこなったのだ。

 三浦氏だけではない。2016年、自民党のデマ拡散屋である長尾敬議員は自民党の会合の場において公安調査庁が朝鮮総連の人数を「おおむね7万人」と明らかにしたことを受け、「会合では、公安調査庁から初めて、『朝鮮総連には工作員などが(日本国内に)約7万人いる』という報告があった」と発言(「zakzak」16年2月22日付)。それによってネット上では「北朝鮮の工作員は7万人もいる!」などというデマが広がっていった。

 また、“ネトウヨのグル”青山繁晴議員も、なんの根拠も示さないまま「北朝鮮の工作員は2万人いる」「コアで武装してるのは400~500人です」などといったデマをテレビやネット番組で繰り返し拡散しつづけている。

 いまさら説明するのもばかばかしいが、これらはすべて現実とかけ離れた、ただの妄想だ。たしかに朝鮮総連が金日成、金正日、金正恩と三代に渡る独裁政権を支持し、北朝鮮の政府機関の一部という役割になってきたのは事実で、2000年代初めまでは、学習組(がくしゅうそ)という対日思想工作の組織も有し、北朝鮮の工作活動に在日朝鮮人が協力したケースもある。

 だが、総連が担っていたのはおもに思想工作や協力者の獲得、資金援助であり、対日テロの実行ではない。また、北朝鮮本国の意向を受けて動いていたのはごく一部の幹部であり、ほとんどの在日朝鮮人は、総連の政治性に疑問を抱きながらも、在日コミュニティを維持し、日本社会の苛烈な朝鮮人差別から自分の身を守るために、総連に加入してきたのである。

 しかも、総連はいまや、かつてと比較にならないくらい弱体化している。加入者は激減し、高齢化が進み、総連に忠誠を誓っているような人はほとんどが70代以上。どうみても、テロを実行できる組織ではないのである。いったいどこから数字をひっぱってきたら「7万人の工作員」「2万人の工作員」という話になるのか。

NHKの銃撃報道の危険性、安倍チルドレンは在日朝鮮人排斥の国会質問

 しかし、こうした現実を無視し、デマを喧伝する政治家、ジャーナリスト、評論家は後を絶たず、デマはどんどん事実と認識されて広がっていった。日本の右翼テロはマスヒステリーがきっかけになることが多いが、今回のテロも明らかにこのデマに誘発された「テロ組織の朝鮮総連なんてやっつけてしまえ」という世論の広がりに後押しされた部分がある。

 しかも、このテロを生み出す憎悪の扇動はテロが起きてしまった後も変わっていないどころか、さらに激しくなっている。ネット上で桂田容疑者の犯行を称賛し、総連を攻撃する意見が溢れていることは先に紹介したが、マスコミ報道も大差がない。

 たとえば、今回の事件を報じたNHKは、銃弾が撃ち込まれた朝鮮総連中央本部について〈北朝鮮と在日朝鮮人とを結ぶ「事実上の大使館」〉と説明。さらに、ご丁寧にもこんな解説まで付けた。

〈地上10階、地下2階の建物の中には、キム・イルソン(金日成)主席の誕生日を祝う催しなどが開かれる大会議室や、議長や副議長ら幹部の執務室が置かれていました〉

 テロがおこなわれた状況で、わざわざ強調することなのか。まさに「テロの標的になっても当然」といわんばかりではないか。

 マスコミがこの調子では、これからさらにテロはエスカレートするだろう。今回のテロは、対象が総連という組織だったが、この先、米朝関係が再び緊張状態に陥り、戦争可能性が高まっていくにつれて、その銃口は「在日朝鮮人」に向けられる可能性が高い。

 実際、右派言論は完全に「在日朝鮮人」排除に広がっている。たとえば、昨日の衆院予算委員会では、ネトウヨ発言で知られる安倍チルドレンの山田賢司・自民党衆院議員と法務省、外務省の間でこんな質疑応答が繰り広げられた。

山田「日本にはサンフランシスコ講話条約で日本国籍を喪失した韓国籍・朝鮮籍と呼ばれる方々がいます。このうち大韓民国の国籍を保有する方は韓国籍として、それ以外の方はどこの国民に当たるのか」
法務省官房審議官「朝鮮半島出身者と台湾出身者になります。出入国管理で使う用語としての『朝鮮』は、朝鮮半島出身者のことで、国籍を意味するものではない」
山田「彼らは北朝鮮を『祖国』と言い、北朝鮮も『同胞』と言っている。北朝鮮でないのなら、無国籍なのか」
法務省官房審議官「日本国として北朝鮮を国として認めていないことから、無国籍です」
山田「北朝鮮を国として認めていないから北朝鮮国民がいないってことになると、北朝鮮国民に対する核開発関連の教育訓練をするなという安保理決議が全く意味がなくなる」

 さらに山田は外務省に対して「朝鮮大学校で物理工学や情報工学の授業を行っていることは、決議違反ではないか」「我が国国内において、北朝鮮国籍者に対して労働許可を提供しないことをどのように担保しているのか」「朝鮮籍の人が北朝鮮籍者かどうかわからないということであればこの制裁を履行徹底するっていうことは出来ないんじゃないか」などと詰め寄った。

 ようするに、山田は韓国籍を選ばなかった在日朝鮮人をすべて「北朝鮮国籍」と決めつけて、教育や労働の機会を奪い、日本から排斥しようとしているのだ。繰り返すが、山田は安倍首相の子飼い議員である。このままいくと、オーバーではなく、本当に在日朝鮮人への「ジェノサイド」が起きかねない。

最終更新:2018.02.24 12:27

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