平昌ではジャンプの高梨沙羅が標的に…五輪選手への道徳押しつけバッシングの異常! 今井メロや國母和宏が心境告白

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公益財団法人全日本スキー連盟HPより


 ついに明日9日、開会式がおこなわれる平昌オリンピックだが、それを前に、ある冬期オリンピック出場経験者の発言が話題を集めている。

 2006年のトリノオリンピックにスノーボードハーフパイプの日本代表選手として出場した今井メロは、1月27日放送『The NIGHT』(Abema TV)にて、ふるわない成績でオリンピックから帰国した際、近所の人間から悪口を言われたり、石を投げられたりもしたことで、「オリンピックの“オ”の字も聞きたくなかった」というトラウマになったと告白した。

 彼女はそれまでのワールドカップで優勝などの良い成績を残していたため、オリンピックでも、「(メダルを)獲らなくても、せめて予選は絶対通過だろうと言われていた」と語る。

 しかし、結果は予選敗退。彼女はこの結果に「すごく恥もありましたし、逃げたくなる気持ちっていうのにすごい駆られて」と語っているが、本当の地獄は帰国した後から始まる。

「そんなに落ち込まなくてもいいのかなって日本帰ってきた瞬間、少し思ったんです。『メルちゃんおかえり』『大丈夫だよ』みたいなことを言ってくださる空港で待ってくれてた方を見て少し安心したんですけど、そこから自宅に帰りまして、なぜかわからないですけど、家で少し騒がしいなってことが何回かあったんですね、で、数日してゴミを捨てに行ったときに『まだ住んでるの?』っていうことを言われて、で、そのうち区域の小学生たちに石を投げられて」

 注目を集めるスター選手としてトリノまで行くも芳しい成績を残せず帰ってきた彼女の自宅には、インタビューやコメントを取ろうとするマスコミが連日押し寄せた。それに対し周囲の人々は同情するどころか、目の前で彼女のことを責め立てた。

 近所の住民から「近隣の迷惑だってことを感じないのか?」や「負けて帰ってきてるんだから」と面と向かって言われた経験と、それらが残したトラウマを彼女はこのように語っている。

「もう、オリンピックの“オ”の字も聞きたくなかったし、見たくないという状態が続きました。(テレビでオリンピックをやっていたら)消します。(結果も)知らないです。(ゲレンデも)行かないです」

平昌五輪を前に高梨沙羅のメイクやベンツ所有に理不尽バッシングが

 また、オリンピックにおいては、今井が経験したような「メダルを獲れなかった者へのバッシング」のほかにも、理不尽なバッシングがしばしば起こる。それが、「素行不良」などを理由にしたバッシングだ。

 現在、その標的になっているのがノルディックスキージャンプの高梨沙羅であることに異論はないだろう。15歳で日本女子として史上初となるワールドカップ優勝を果たした頃には、すっぴんで素朴な少女だった高梨だが、大人になるにつれ公の場に出るときはメイクをするようになっていき、そのことをあげつらって「美容にうつつを抜かしている場合か」などというバッシングの声があがり始めた。

 一度このようなバッシングの種火ができると、あとは際限なく炎上させるためのあら探しのようなものが続いていく。ベンツ所有者向けの会員誌「メルセデス・ベンツ・マガジン」17年冬号にて、彼女がベンツ所有者であることがわかると、今度は「大事な時期に高級車を乗り回して遊んでいるんじゃない」などという批判が起きた。

 メイクもベンツも競技とはなんの関係もないが、この国ではそういった瑣末なところをあげつらってバッシングが起きるという流れが幾度も繰り返されてきた。

 その典型的な例が、スノーボードハーフパイプでトリノとバンクーバーのオリンピックに出場した國母和宏だろう。

 彼がメディアに叩かれだしたきっかけは、バンクーバーへ出発する際のファッションだった。ドレッドヘアーにサングラスをかけ、さらに、シャツをパンツの外に出したうえ腰でパンツをはくスーツの着崩しがワイドショーで流れると批判が殺到。結局、國母は選手村への入村式を欠席することになるが、その後に開かれた記者会見での発言が、このバッシングへの火に油を注ぐ結果となる。

 記者のしつこい質問にいらついた國母は「チッ、うっせぇな」と舌打ちしたうえで「反省してまーす」と答え、この様子もまたワイドショーで大きく報じられることになる。このバッシングは政府にまで広がり、川端達夫文部科学大臣(当時)は「代表の服装としては全く適切ではなく極めて遺憾。一緒にいたコーチが服装について指導せず、記者会見も本当に反省している態度では無く、皆の期待を受けて国を代表して参加している自覚が著しく欠けていた」と発言。一時は出場することすら危ぶまれたが、なんとか出場することはできたものの、8位入賞でメダルは逃した。

國母和宏、里谷多英、安藤美姫…バッシングを受け続けた選手たち

 その後の國母は、バックカントリースノーボードのボーダーとして世界的な名声を得たり、コーチとして平野歩夢や平岡卓のソチ五輪のメダル獲得に大きく貢献するなどしている。

 國母がバッシングを受けたのは、まだ競技で成績を残す前だが、そのような素行不良を理由にしたくだらないバッシングは、たとえオリンピックで結果を残したとしても、なんら変わることなく浴びせかけられる。スキーモーグルの里谷多英がそうだった。

 里谷は長野オリンピックにて、日本人女子としては冬季オリンピックで初めてとなる金メダルを獲得したが、優勝直後にシャンパンを公然と飲んでいたことと、表彰式にて国旗掲揚時に帽子を脱がなかったことがそれぞれ問題視され、大バッシングを受ける。

 彼女の場合は酒にまつわるバッシングが多くまとわりつき、05年には「週刊新潮」(新潮社)で酔っ払った末に夫に暴力をふるっていたことが報じられ、同年に「週刊文春」(文藝春秋)にて、六本木のクラブのVIPルームで白人男性と性行為におよんだうえに暴れた件を書き立てられた。これに関しては書類送検となっているが、後に起訴猶予処分となっている。

 フィギュアスケートの安藤美姫もそういった執拗なバッシングを受け続けた被害者だ。

 メディアに出始めた当初は女子高生スケーターとしてもてはやされた彼女だが、トリノオリンピックでの惨敗後は執拗なまでにバッシングを受け続けた。

 特に、13年に女児を出産してからは、彼女が未婚のシングルマザーで、父親が誰なのかを公表しなかったため、メディアは連日のように騒ぎ立て、父親暴きに躍起になった。

 彼女はその年、ソチオリンピック出場を賭けてシーズンを戦ったが、それに対しても、「産むだけ産んで、まだまだお母さんが必要な時期の子供を置いてオリンピックって、自分のことしか考えていない」や「父親がいないなんて、子供がかわいそう!」、「他の五輪出場候補選手は、脇目も振らずに練習してる。遊んでた安藤なんかが出場したら、その人たちがかわいそう」といったバッシングが投げつけられた。

 子どもを産むことは「遊んでた」などではないし、子どもを抱えながらオリンピックを目指す選手だって他にもいるはずだが、目立つ彼女だけが叩かれる。とにかく、品行方正に競技だけに取り組んでいない(ように見える)選手に対しては果てしないバッシングが浴びせかけられるのだ。そんなものは肝心要の競技にはなんの関係もないのにも関わらず。

 しかも、こうしたバッシングは、過剰な道徳主義というだけでなく、スポーツ文化という視点からみても的外れなものだ。

 バンクーバー五輪でファッションが攻撃対象となった前述の元スノーボード代表・國母和宏が最近になって、そのことを明らかにしている。

保守派が攻撃する平昌オリンピックでは選手にもさらなるバッシングが

 國母は「Number」(文藝春秋)17年2月9日号にて、バンクーバーオリンピックでの騒動について、「いや、だろうな、っていう感じですね。えーって思うほど、バカじゃない。学校でも制服を着崩してたら注意されるじゃないですか」としつつ、それでも敢えて自分を貫き通したファッションにしたことについて、「葬式に行くときに葬式の恰好をするように、スノーボードの大会に行くからスノーボードに行くための恰好をしてただけで。もう、あのときから、滑ることに集中してて、スーツをびしっと着ることで、そのイメージが揺らいだりするのが嫌だった。あそこから、俺のすべてのルーティンは始まってるというか」と語っている。

 その態度をスノーボードの業界は支持した。バンクーバーオリンピックでの騒動後も契約ブランドは國母を味方し、バックアップも継続している。前掲「Number」では、バンクーバーオリンピック代表のスノーボーダーの村上大輔が「スノーボードがオリンピック競技になった時点で、いろんな人が“スポーツ”として見始めた。だから余計に理解されにくいと思うんですけど、ボーダーはライフスタイルが大事。80%ぐらいは、オリンピックとは別の部分が占める。ビデオだったり、バックカントリーだったり、プロの大会だったり。ブランドもそっちを大事にする。ブランドが欲しいのはアスリートじゃなくて、カッコいいボーダーなんです」と語っており、それはスノーボーダーとしてはなんら間違った行為ではないとしている。

 実際、國母のファッションを批判していたのは日本のメディアだけだった。ようするに、彼らはスポーツ文化というものをまったく理解しておらず、ただ、自分たちの時代錯誤的な価値観を押し付けたいだけなのだ。

 明日から開幕する平昌オリンピックはすでにオリンピックそのものが政治的、差別的な理由で攻撃対象になっているが、その主体となっている保守派メディアやネトウヨと、過去のオリンピックで選手バッシングを展開してきた“道徳保安官”たちとは重なっている部分がかなりある。

 平昌オリンピックでは、選手に対しても、これまで以上に理不尽なバッシングが起きる可能性が高い。

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