「組み体操」を強制する文科省や教師は何もわかっていなかった! 自分で体験した途端「4段でも無理」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
news23_180207_top.jpg
組み体操が危険なものであり、場合によっては生徒たちに生涯消えない傷を残す可能性もあることを指摘した『NEWS23』(画像は1月30日放送分『NEWS23』より)


 死亡事故も含む重大事故が相次ぎ、問題性を指摘され続けている「組み体操」問題。1月30日放送『NEWS23』(TBS)では、「学校のモンダイ “感動”と潜むリスク 組み体操相次ぐ事故のウラ側」と題し、学校現場における組み体操をめぐった動きを特集していた。

 特集ではまず、いかに組み体操が生徒たちを危険にさらしているかを紹介。2015年には、大阪市の中学校で生徒157人が参加する10段のピラミッドをつくったところ、校舎の2階よりも高いその山が崩壊する事故が起こっている。これにより、男子生徒1人が右腕を骨折する大けがを負ったほか、5人の生徒も打撲などのけがを負った

 また、16年には広島の中学校で、生徒が3段に重なる移動式ピラミッドの2段目にいた男子生徒が運動会の2日後に脳内出血のため死亡。落下するとき後頭部に強い衝撃が加わったのがその要因と考えられ、遺族は「事故を未然に防ぐ安全対策を講じていなかった」として学校側を相手どり、約9600万円の損害賠償を求める裁判を起こしているケースも紹介されていた。

『NEWS23』には、実際に組み体操で大けがを負った女子生徒も出演。インタビューに応じた彼女は、小学校6年生のとき、1段目6人、2段目5人、3段目3人、4段目1人で構成される高さ3メートルの4段タワーの一番下におり、タワーが崩壊した際に左肘を複雑骨折した。1年の間に3回もの手術を余儀なくされるような大けがで、事故から4年経った現在でも完治はしていない。寒い日には痛みが走り、以前のようには肘が曲がらないという。

 組み体操をめぐっては、昨年度だけで5271件もの事故が起こっており、1969年以降の統計をまとめると、これまでに死亡事故は9件、障害の残る大けがも102件起きているという。

 こういったデータがある以上、組み体操を生徒に強いることが危険なことはわかりきっているのにも関わらず、なぜ現在のような状況になっているのか。『NEWS23』の取材に名古屋大学大学院の内田良准教授はこのように語っている。

「組み体操に対する根強い期待というかですね、『感動するからいいじゃないか』みたいな。『来年はもっと盛り上げよう』という、そういうかたちで組み体操は巨大化してきたと」

義家弘介元文科副大臣は組み体操でのけがに感動し「うるうるきた」

 内田氏が指摘した「感動するからいいじゃないか」という考えは、まさに学校現場で流布されているものである。前述した左肘を複雑骨折した女子生徒の学校で配られていたプリントには、組み体操の意義として「伝統をつなごう!」や「我慢し、努力し、一生懸命な姿が感動を生む!」といった言葉が書き散らされていた。

『NEWS23』では指摘されていなかったが、組み体操による「感動」押し付けの背後には、安倍政権の教育政策がある。

 16年1月29日付東京新聞の取材に対し、義家弘介文科副大臣(当時)は「組み体操はかけがえのない教育活動で、悪いことではない」「危ないのは組み体操だけではない。何件だから危ない、と線引きすることには慎重な対応が必要」「事故が起こって問題になったからと上から目線でずばっと何段と切るのは、指導上は不幸なこと」「事故が起きているのは組み体操だけでない。柔道、剣道などあらゆるところに規制を出さなければいけなくなり不健全」などとして、すでに十分過ぎるほど危険性を指摘されている組み体操を徹底的に擁護したうえで、こんな戯言まで述べたのだ。

「(組体操は)自分も小中学校で行ったし、小六の息子も去年やった。五~六段の組み体操で、息子は負荷がかかる位置にいて背中の筋を壊したが、誇らしげだった。全校生徒が羨望のまなざしで見る中で、「ここまで大きくなった、見事だ」と私自身がうるうるきた」

 自分を犠牲にしてでも他に奉仕することを強い、それに美しさを見出す組み体操をめぐる彼らの思考回路は、「国のために“個”は捨てろ」と全体主義的な価値観を国民に強要させようとする安倍政権の思想と完全に合致する。

『NEWS23』でも取材を受けていた内田良氏は、著書『教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』(光文社新書)のなかで、組み体操は戦後教育のなかでいったんは廃れていたものであったと説明している。

 戦後まもなくの時期には〈小中高すべての学習指導要領に記載があ〉ったものの、死亡や重度障害の事例が後を絶たず訴訟に発展することもあり、〈おそらく組体操の文化は少しずつ、衰退していったものと推測される〉というのだ。しかし、それが2000年代に入ってから復活した。内田氏はこのように綴る。

〈組体操において、子どもたちは痛みや恐怖を感じる。だが、それは他者のためであり、そのようにして皆で相互に耐えることで1つのものをつくりあげていくという教育的物語が、そこにある〉

 現在の安倍政権まで地続きとなっている21世紀に入ってからの保守化の流れが「組み体操復活」の流れに大きな影響を与えているのは間違いないだろう。

 前述『NEWS23』で内田氏は、中学3年生の男子生徒が10段ピラミッドをつくると、1段目に位置する生徒には最大200kgの負荷がかかると指摘している。ピラミッドが成立している状態で200kgなのだから、それが崩れて身体の一部だけに重点的に負荷がかかるようなことになれば身体はどうなってしまうか、説明するまでもない。

『NEWS23』の取材で教師たちの信じがたい認識不足が露呈

 番組では、小学校・中学校・高校の教師が集まった「“安全な組み体操”講習会」の模様を取材していたが、そのなかで3段ピラミッドに挑戦した教師たちは疲労の色を隠せず、「これが4段になるとどうなるか想像できますか?」との講師の質問に対し、中年男性の教師は息も絶え絶えに「無理」と語った。たかだか3段程度で自分には無理なものなのに、生徒には10段を強いているのだから狂っているというほかない。

 また、驚くべきは、その講習を受けた感想として、また別の男性教師からこんなコメントが出ていたことだ。

「専門的なことをわからないまま指導している部分があったなということに気づいたので、きちんと理解したうえで教えていくことが事故の防止につながるんじゃないか」

 組み体操による事故件数は11年度から15年度までの間は年間8000件前後を推移していたが、十分な安全確保を求めるスポーツ庁からの通知があった後の16年度は5200件あまりまで減った。とはいえ、それでもまだ5000件以上もあるのだ。また、自治体により組み体操をめぐる扱いにはばらつきがあり、東京都、奈良県、大阪市、福岡市、金沢市などのようにピラミッドやタワーを廃止したところもあれば、愛知県、名古屋市、神戸市、岡山市などのように段数制限を設けていまだに組み体操を残している地域もあると、番組では説明されている。

 死亡事故が起こっているにもかかわらず、温存される組み体操。だが、子どもたちは、保守層の人々が感動で「うるうる」するためのマスターベーションの道具ではない。一刻も早く廃止されるべきだ。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

「組み体操」を強制する文科省や教師は何もわかっていなかった! 自分で体験した途端「4段でも無理」のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。教育編集部の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 沢田研二が歌い続ける反原発、憲法9条
2 百田尚樹がウーマン村本とのバトルで
3 片山さつきの訴訟恫喝に非難殺到 
4 新文科事務次官は前川喜平に“口封じ”画策していた
5 籠池夫人が安倍夫妻、榮太郎、青山繁晴らの嘘と手のひら返しを暴露
6 ご当地アイドル自殺で自己責任論ぶつ松本人志に違和感
7 片山さつき大臣に国税への100万円口利き疑惑が浮上
8 稲田朋美が極右集会で小川榮太郎と
9 美智子皇后が誕生日談話で安倍にカウンター
10 菅に日歯連から3000万円迂回献金
11 蓮池透氏がさらに安倍の詐術を批判!
12 『朝生』で百田尚樹が徹底論破され大恥
13 室井「安倍を倒せ」に山本太郎の答えは
14 長渕剛が安倍政権を批判する新曲を発表
15 イオン文春裁判で高裁が高額訴訟を批判
16 中居がすべらない話でJのタブーに!
17 本田圭佑の朝鮮学校訪問と発言の勇気
18 三浦瑠麗が近財職員の自殺にトンデモ発言
19 櫻井よしこは嘘つきだ!小林節が告発
20 グッディ!土田マジギレ真の原因
1 加計理事長会見で新聞・テレビ記者が徹底糾弾!
2 加計理事長のデタラメ会見に加計学園の職員が
3 ノーベル平和賞ムクウェゲ医師が批判した慰安婦問題
4 籠池夫人が安倍夫妻、榮太郎、青山繁晴らの嘘と手のひら返しを暴露
5 旭日旗問題で國村隼の発言は正論だ! 
6 本田圭佑の朝鮮学校訪問と発言の勇気
7 翁長前知事県民葬で菅官房長官に「嘘つき」の怒号
8 百田尚樹がウーマン村本とのバトルで
9 安倍首相がカジノ法で虚偽答弁!トランプ圧力やっぱりあった
10 靖国神社宮司が天皇批判!右派勢力が陥る倒錯
11 片山さつき大臣に国税への100万円口利き疑惑が浮上
12 民放連が改憲CMを無制限垂れ流しの方針
13 茅ヶ崎市での慰安婦映画上映に慰安婦像を蹴った極右団体が
14 沢田研二が歌い続ける反原発、憲法9条
15 稲田朋美が極右集会で小川榮太郎と
16 テイラー・スウィフトのトランプ批判に拍手
17 フジ、テレ東、NHKの入管PR番組と安倍政権の排外政策
18 『ワイド!スクランブル』コメンテーター就任の柳澤秀夫に期待
19 スクープ! 神社本庁・田中総長が辞意を撤回
20 新文科事務次官は前川喜平に“口封じ”画策していた

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄