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EXILEの事務所LDHが社則を書籍化…土下座や一気飲み強要のパワハラ、過労死ライン超え残業についてはどう書かれている?
社長から退いたHIRO自身がその理由を説明している「月刊EXILE」17年2月号
先月27日、小学館の新企画発表会にEXILE MAKIDAIが登壇。来年2018年にLDHが創立15周年を迎えるのを記念して、LDHのアーティストやスタッフが共有してきたルールブック「LDH our promise」を来年2月に書籍化すると発表された。
この「LDH our promise」には、LDHの企業理念「EXILE statement」や、アーティストとスタッフそれぞれの行動規範「LDH rules for artist」、「LDH rules for staff」がおさめられており、それらがファンに公開されるという。
社員に配られる社則・就業規則の類を商品にするという、ただでさえなかなか画期的な企画だが、しかも、それがLDHの社則というのだから驚いてしまう。というのも、LDHにはブラック企業的なスキャンダルが複数存在するからだ。
およそ1年前、「週刊文春」(文藝春秋)16年11月3日号が報じたレコード大賞買収疑惑は記憶に新しい。芸能界のドン・周防郁雄社長が率いるバーニングプロダクションが三代目 J Soul Brothersにレコ大をとらせた見返りとして、LDHに1億円を請求書していたという事実が請求書の写真付きですっぱ抜かれた。
翌週の「週刊文春」16年11月10日号では、周防社長が「週刊文春」報道に激怒したと報じられ、エイベックスとLDHに情報源を探すよう厳命していたり、雑誌の早刷りが出た段階で各メディアに後追いしないよう呼びかけていたと記されていた。実際、バーニングタブーを抱える大手メディアはいっせいに沈黙。後追い報道などはなされなかった。
このスキャンダルの後、16年いっぱいでHIROがLDHの社長の椅子から退き、新たに「クリエイティブ・リーダー」なるポジションに就任することが発表される。17年1月1日から新体制が始まっているが、このクリエイティブ・リーダーという役職に就いたことにより、HIROは経営面を他のスタッフに任せ、自身は世界戦略のプロデュースやクリエイティブに関わる仕事に専念することになった。
急に社長の座から降りるということで、当然スキャンダルとの関連がささやかれた。事実、この新人事に関してHIRO自身の口から説明がなされているのだが、その説明は非常に曖昧模糊としており、その疑惑を逆に深めるものとなっている。
「正直、僕の取り組むことは今までと何も変わらないです。経営上の問題や不満があったから社長を退くわけではないですし、むしろ社長という肩書があったことで、今までのLDHの状況では自分のモチベーションが上がっていた部分は間違いなくありました。じゃあ、なぜ今退くのかといえば、社長という肩書が、今のLDHで自分がやるべき事、盛り上げなければいけないエンタテインメントに対して、邪魔になってしまう場面ができ、自分の可能性や、やりたいことに対して、制限がかかるようになってきたからです」(「月刊EXILE」17年2月号/LDH)
土下座&一気飲み強要、過労死ライン越え残業…LDHのブラック体質
このレコード大賞買収疑惑とは他に、是非ともLDHのルールブック「LDH our promise」で説明を求めたいのが、体罰や過労死ラインを遥かに超える時間外勤務の常態化など、LDHのブラック企業体質に関わる問題である。
「週刊文春」16年7月21日号の特集記事「元社員4人が告発『EXILE事務所の体育会系イジメ』」によれば、社長のHIROの下で絶対的な上下関係が徹底されているとのことで、その一例として、会食で食べた量が多いというだけで副社長と専務が運転手の男を怒鳴りつけて道ばたで土下座をさせていたというイジメが紹介されている。LDHにとってこういった体育会系イジメは日常茶飯事とのことで、社員に買いに行かせたiPhoneケースが気に食わないというだけで自主退職に追い込んだり、腋が臭いと言いがかりをつけて(医師が必要ないと診断したのにも関わらず)手術を強要したり、「食べないとクビだ」と脅してラーメン10杯食べさせたり、丸坊主にさせたり、根性焼きを入れたりといった、まるでヤンキーのような振る舞いが公然と行われていたという。
こういったパワハラについては、「FLASH」(光文社)16年8月30日号の「EXILE 踊る350億円商法」という記事でも取り上げられており、コンサート後に行われる接待では、若手社員がレモンサワーのイッキ飲みを強要されていると書かれている。いまどきイッキ飲み強要なんて大学生の新歓飲みでも自粛されつつあるものだが、「LDH our promise」ではこのようなパワハラ問題についてどのように記されているのだろうか?
ちなみに、前述「週刊文春」16年7月21日号では、LDH社員の給与や就業時間の問題についても取り上げられている。基本給や業務手当などを合わせて手取りで20万円程度とのことだが、問題はその労働時間にある。
記事では、「労働時間は大体月に480時間ほど。時間外勤務は220時間にもなります。70時間分の残業代は月8万円の業務手当に含まれているのですが、それ以上の残業代は一切支払われません」と元社員が明かしている。時間外勤務220時間というのは、厚生労働省が定める時間外勤務の過労死ラインである月80時間をゆうに超える数字だ。
この問題についても「LDH our promise」ではどのように触れられているのか、気になるところだ。
残業代未払いで労働基準監督署から是正勧告を受けたエイベックス
HIROは横浜市立金沢高等学校出身で、エイベックスの代表取締役社長である松浦勝人氏とは高校の先輩後輩の関係。EXILE、三代目J Soul Brothers、GENERATIONS、E-girlsなどLDHの主要なアーティストはすべてエイベックス系列のレーベルであるrhythm zoneからリリースされている。ご存知の通り、エイベックスも色々とブラック体質な企業風土が明らかにされている会社である。
たとえば、エイベックス・グループ・ホールディングスは昨年12月に「実労働時間を管理していない」、「長時間残業をさせている」、「残業代を適正に払っていない」として、三田労働基準監督署から労働基準法に基づく是正勧告を受けている。
昨年の12月といえば、電通社員の過労自殺に端を発し、長時間労働問題について社会的議論が巻き起こっていた時期だっただけに、慎重な対応が必要だったはずなのだが、この労働基準監督署からの是正勧告を受けて松浦勝人社長が出したメッセージは、そういった問題意識にあまりにも逆行するもので、文章が公開されるやいなや大炎上した。
昨年12月22日、オフィシャルブログ「仕事が遊びで遊びが仕事」のなかで、松浦社長は〈このことに対しては現時点の決まりだからもちろん真摯に受け止め対応はしている〉としながらも、是正勧告についてこのように結論づけていた。
〈望まない長時間労働を抑制する事はもちろん大事だ。ただ、好きで仕事をやっている人に対しての労働時間だけの抑制は絶対に望まない。好きで仕事をやっている人は仕事と遊びの境目なんてない。僕らの業界はそういう人の「夢中」から世の中を感動させるものが生まれる。それを否定して欲しくない〉
エイベックスのようなエンターテインメント産業の仕事は9時5時では対応できないものなのは確かで、そういった環境でも適切な労働環境が保たれるよう働き方の多様性について議論されるべきなのは間違いないが、それでも松浦社長の言い分はおかしい。「好きでやっているかどうか」は過重労働の問題とはなんの関係もないし、また、彼の言うような「好きでやっている」仕事のおかげで過労死まで追い込まれた例も枚挙に暇がないからだ。多くの労働者を抱える経営者のものとして、この発想はあまりに危うい。
ちなみに、この件に関しては、今年5月、未払いになっていた数億円規模の残業代を支払うことを公表。また同時に、今後は裁量労働制の導入など、従業員が柔軟な働き方を選べるようにするとの対応策も発表されている。
暴力団を用いて不都合な人物を脅迫したエイベックスの過去
エイベックスがブラック体質なのは社員に対してだけではない。所属アーティストに対しても同様である。
「ようかい体操第一」でおなじみのDream5(16年に活動を終了)でリーダーを務めていた重本ことりは、自伝本『黒い小鳥』(鉄人社)のなかで、月給が家賃と高校の学費が差し引かれたうえではあるが、それでもわずか2万円しかなかったエピソードなどを明かしている。しかし、それよりももっとひどい逸話がある。
彼女がエイベックスから独立した後、かつて同じ事務所に所属していた仲間と連絡を取れないよう圧力をかけられたというのである。
彼女は16年末をもってエイベックス・マネジメントとの契約を終了して別の事務所に移籍しているが、それを機に、かつて良くしてくれたクライアントなどがいっせいに連絡を絶とうとしてきたうえ、挙げ句の果てには、仲良しだった先輩の結婚式にすら出席することができなかったという。
なぜこんなことが起きたのか? その疑問は、すぐに明らかになる。『黒い小鳥』にはこのように綴られている。
〈ある日、私は前の事務所の子からこんなことを言われました。
「実はね、事務所の人からことりと連絡をとるな、誘われても会ったりするなって言われているんだ。だから、ホントにごめんね。連絡とってるのがバレたら芸能人として活動するのは無理になっちゃうし」
それを聞いて、本当に悔しかった。本当に悲しかった〉
そして、極めつけは、株主総会前に財務状態などについて質問状を送ってきた株主の男を松浦社長が自社経営のレストランに呼びつけ、暴力団の男を同席させた状態で「この野郎、埋めてやるぞ」などと脅迫したとされる事件だ。
これは「週刊文春」11年6月30日号で報じられている。記事によれば、08年にコンサルティング会社を経営する本原克己氏がエイベックスの株主総会前に質問状を送ったものの、総会が開かれた当日は挙手をしても質問の機会を得られることはなかった。そして後日、本原氏は暴力団組長の男を通して松浦社長から呼びつけられ、エイベックス経営のイタリアンレストランへ向かうことに。そのVIPルームには酒に酔い怒り心頭の松浦社長が部下や暴力団組長とともに待っており、ボディガードの男に「こいつ殺しちゃってよ」と言ったり、「この野郎、埋めてやるぞ」などと脅迫してきたという。かなり闇の深いスキャンダルだが、前述の通りバーニングとつながりの深いエイベックスのこの不祥事を後追いするメディアはほとんどなかった。
このように、LDHおよびエイベックスにはブラック企業的な問題がごまんとあるのだが、書籍化される「LDH our promise」にはそのあたりについてどのように記されているのだろうか?
これだけ批判にさらされているのだから、もしかしたら報道されたような問題点を踏まえ、その再発防止策が論じられているのかもしれない。まあ、あまり期待はできないだろうが……。
(編集部)
最終更新:2017.11.08 07:09
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