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水道橋博士が安倍首相を批判してネトウヨから大炎上! 博士が12年前のインタビューで嗅ぎ取った安倍の反知性
水道橋博士の「博士の悪童日記」より
“サブカル文化人”として人気のお笑いタレント・水道橋博士がここ数日、ネトウヨによって炎上させられている。
〈水道橋博士が左翼ポルノで楽な商売してる〉〈こんなところにも反日左翼がいましたかwww〉〈芸人は 傾き出すと 左向き〉〈死ね非国民!〉
2ちゃんねるにはいくつもスレッドが立ち、博士のツイッターには数え切れないRT や悪罵のリプライが殺到している。
なぜこんなことになっているのか。解読すると、どうも発端は、出版社KKベストセラーズのサイト「BEST TIME」に9月24日付で掲載された「水道橋博士 『数こそ力でリベラルを破壊していく…』安倍政権に危機感」なるタイトルの記事のようだ。そのなかで水道橋博士は、冒頭、アベノミクスは失敗していると断言し、政治の“安倍一強”をこのように批判していた。
〈確かに株価は安倍政権前に比べて上がったかもしれない。でも現実的に幸せになったことを実感している人は、統計をとっても今は全然少ない。一部株価が上がって、大企業が儲かっている事実はあります。だけど安倍政権がすすめているような、数こそ力で、リベラルを破壊していく政権運営ってめっちゃくちゃ怖いなあと思います。〉
さらに自民党内で「連続2期6年まで」の総裁任期を「連続3期9年まで」に延長し2020年の東京五輪を安倍総理でという動きがあることについて博士は「あんな話が出るのかということにあきれます」と批判したうえで、こう綴っている。
〈本当に権力って長くやればやるほど腐敗しますよね。でもこれは歴史を見れば、古今東西、世界共通でそういうことは常識じゃないですか。だから任期ってあるんでしょ? なんかそういう常識すら通用しない。〉
また、この記事で水道橋博士は、政権批判をする者に対して血眼になって襲いかかる“安倍応援団”やネット右翼たちの行動についても批判している。
〈オレなんて安倍政権の強権的やり方を、お笑いとして、からかっているだけだけど、それに対して本気で怒るひとたちが現れていて、ネトウヨとかもそうですけど、もはや、そういう人は自分の他人を圧する熱狂すら客観的に見えてないのかって不思議でしょうがないです〉
〈「日本人に誇りを」「日本は本当は凄い」「昔の日本人はこんなに偉かった」とか、朗々と語る、ぶっちゃけ偉そうな人が本当に増えて、そういう人が若者に説教する姿や、また、それをありがたがる若者の多さとか、正直、「よく言うよ」って溜息が出ますよ。〉
一読して、すぐに浮かぶのが、これ、ここまで炎上するような発言なのか、という疑問だ。まず、アベノミクスについてだが、博士のいう通り、各種世論調査を見てみても、7割がアベノミクスの実感がない、または評価しないと回答している。「数こそ力で、リベラルを破壊していく」という安倍政権評も的を射たものだ。周知のとおり、安倍首相は国民の反対意見に全く耳を貸さず、数の力で特定秘密保護法や新安保関連法の可決を強行してきたし、内閣情報調査室や公安警察を使った野党攻撃、さらには、人事と金を使った党内リベラル勢力潰しを図ってきた。そして、今、中曽根康弘や小泉純一郎ですらやらなかった総裁任期延長を持ち出し、プーチン並みの独裁体制を築こうとしている。
水道橋博士はこれらの事実を指摘しただけで、どこからどう見ても、暴言や間違いなどまったくない。安倍首相を「サイコパス」などと表現してきた本サイトからすれば物足りなさを覚えるほどだ。
後段の安倍応援団批判、ネット右翼批判も博士の言う通りだろう。いまの日本社会は、有名人が安倍政権批判や政策批判をしようものなら、すぐさまネトウヨが飛んできて、「どこの国の人ですか?日本から出て行ってください」「反日芸人は死ね」などの悪罵が投げつけられ、炎上させられてしまう(いまの博士の状況がそれを証明している)。
いや、ネットの炎上だけでなく、テレビ局に対しても電凸が組織的に展開され、その結果、テレビからは政権批判がほとんど姿を消してしまった。コメンテーターに起用された有名人やお笑い芸人も当たり障りのないことを言うだけ。そのかわりに、各局の情報バラエティは日本を覆う空気に媚びるような“日本スゴイ”番組で溢れかえっている。とにかくこの文章にかんしていえば、博士の主張はどこをとっても正論なのだ。
しかも、博士は自ら「オレ個人の政治思想に関して言えば、基本的には右も左もない」「偉そうな人を見つけたら、お笑いとして職業的にからかうだけ」「政局だって、ただ『面白い』から野次馬的に眺めて分析するだけ」と言っているように、別にイデオロギー的立場からこうした批判を繰り出しているわけではない。繰り返すが、件の安倍政権批判も、ネトウヨや安倍応援団批判も淡々と事実を指摘したうえ、そのファナティックさを嘆いているにすぎない。
ところが、ネトウヨ連中はこれに顔を真っ赤にして怒り、水道橋博士に襲いかかった。博士の発言は悪質まとめサイトによって加工され、それを読んだネトウヨたちがまた激昂して「パヨク」というよくわからないネトウヨスラングを大量に投じ、水道橋博士のツイッターのタイムラインはぐちゃぐちゃにされてしまった。
前述したように有名人の政権批判にはなんでもんかんでも噛み付くネトウヨだが、この程度でここまで興奮するのは、いくらなんでも過剰な感じもする。いったいなぜなのか。
それは博士の言葉が、それこそ「左」からの批判ではなかったからだろう。たとえば、博士は前述の文章で、ネトウヨや安倍応援団に対して〈自分の他人を圧する熱狂すら客観的に見えてないのかって不思議でしょうがない〉とその自覚のなさを批判し、〈右に染まるのは一瞬だけど、リベラルが育つのは時間がかかる〉と、その安易さを指摘している。
また、この炎上の最中、水道橋博士はこんなツイートもしていた。
〈『永遠のゼロ』を文庫で読んで感激され百田先生のTwitterまでフォローされる方は、読書家なので、同じ文庫で、三十四回講談社ノンフィクション賞受賞作『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』(安田浩一著)も読んでみてはいかがですか? 同じ講談社文庫です。〉(原文ママ)
ようするに、水道橋博士が問題にしているのは、ネット右翼や安倍応援団の極右思想でなく、無知なまま感情に流され、安易に愛国心にすがり、浅薄なデマを信じて拡散する反知性的な姿勢なのだ。だからこそ、「日本はスゴイ!」「反日は死ね!」とわめいているネトウヨたちは愛国ポルノや似非ノンフィクションに浸る前に、本物のジャーナリストが追った“自分たちの姿”を鏡で見てみたらどうか、と挑発してみせたのである。
いや、ネトウヨに対してだけではない。実は、水道橋博士の安倍首相批判も、根底にはその反知性的態度への嫌悪があるはずだ。水道橋博士は今から12年ほど前、TBSの政治トークバラエティ『アサ秘ジャーナル』の収録で、当時自民党幹事長だった安倍氏をゲストに招いた際、ある映画の話で「言い合い」になったという。
〈(略)マイケル・ムーア監督がブッシュ政権を批判した『華氏911』を見ましたかって聞いたら、安倍さんが「見ていない」と言ったんです。
まあ、当時、自民党の中で見ちゃいけないというお触れが出ていたらしいんですけど。すかさず「なんで見ないんですか?」と言うと安倍さんは「個人の自由でしょう」って、そのまま「言っておきますけど…マイケル・ムーアは映画でお金儲けしてアメリカンドリームになった人だから」みたいなことを揶揄して言うわけです。〉(「BEST TIME」16年9月22日付)
水道橋博士はこの時「マイケル・ムーアは映画で当たったお金は、いろいろな形で低所得者層に寄付してますよ。確かに映画は当たったし、お金儲けしたかもしれないけどそれは還元しています」と言い返したというが、博士がこのエピソードを公開したのは、作品を見てもないのに謀略情報を信じ込んでレッテル貼りをする安倍の反知性的本質を暴露する意図があってのことだろう。
だが、安倍応援団やネトウヨ(そして、実は安倍首相自身も)は、こうした批判にこそもっとも過敏に反応する。「知性」コンプレックスの強い彼らは、「知性や教養のなさ」を「上から目線」で説教されたとたん、それに耐えられずヒステリーを起こして、相手を「反日」「サヨク」よばわりをはじめる。そして、批判者の小さな間違いを必死になって見つけ、それを針小棒大に膨らませ、デマや陰謀論を拡散する自分たちと同じ地平に引きずりおろそうとするのだ。
多くの知識人や文化人は、その傾向をよくわかっているから、心の底では馬鹿にしつつも炎上という面倒なことを避けるためにネット上ではその部分には触れないようにしている。ところが、博士は今回、そこに踏み込んでしまったのである。
もちろん、ネットリテラシーに長けた博士が無自覚にそれをやったとは思えない。博士はおそらく今、安易な感情を煽ってマスヒステリーをつくりだし、独裁政治を築こうとしている安倍の政治手法と、デマと悪罵の攻撃で政権批判を抑え込む安倍応援団=ネトウヨが連動している状況に相当な危機感を抱いているのだろう。だからこそ、あえて「上から目線」の「ネトウヨ批判」によって、彼らを挑発しようとしたのではないか。
そして、この過剰反応を見れば、この博士の目的は達成することができたと考えるべきだろう。
しかも、博士は今のところ、炎上攻撃にもまったくひるんでいない。どこぞのネトウヨ作家のように片っ端からブロックすることもせずに、悪罵攻撃にもいちいち返答をして見せ、数々の修羅場や炎上をくぐりぬけた芸人としての気骨を見せている。
これからも博士には、それこそ「知性と教養」の側から安倍政権やそれを支持する安倍応援団の「反知性」をどんどん挑発し続けてもらいたい。
(宮島みつや)
最終更新:2017.11.24 07:16
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