巨額粉飾の東芝は労働環境もブラックだった! 不正経理の“元凶”西室会長=岡村社長体制下でうつ病や自殺者も

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『ルポ 過労社会』(中澤誠/ちくま新書)

 総額2000億円超の巨額“粉飾”が発覚し、歴代3社長(西田厚聡氏、佐々木則夫氏、田中久雄氏)のクビが飛んだ東芝。9月30日には、臨時株主総会が開催される。臨時株主総会では、2度延期し大幅に遅れた2015年3月期決算と2016年3月期第1四半期決算などの承認とともに、それまでの16人から11人へと取締役を減員し、社外取締役の数を過半数に引き上げる定款変更などが議題になっている。10月からは株主内部統制が強化され、室町正志会長兼社長体制での実質的なスタートになる。

 四半期ごとの利益水準を重視する経営陣、「チャレンジ」と称して各事業部門に要求される過剰な業績改善、現場ではチャレンジで掲げた数値目標を達成するための「施策」と称した事業計画を作成し、この「施策」をもとにした東芝のブラックな経営体質。これが見直されるかと思いきや、内実はまったく変わらない。

「今回の新体制のトップ人事を主導した“黒幕”は1996年から2000年に社長を務めた西室泰三相談役。室町新社長は西室相談役の大のお気に入りで、若い頃からの子飼いでした。西室さんは一連の不正発覚直後から、まるで自分が東芝立て直しの責任者であるかのように振舞っている。不正経理があったのは西室さんが東芝の社長をしていた時期(1996年~2000年)とはズレているので、本人は“セーフ”だと思っているのでしょうが、第三者委員会から不正経理の原因と指摘された『上司に逆らえない企業風土』をつくりあげたのは間違いなく西室さん」(全国紙経済部記者)

 しかも、西室氏らの経営方針が生んだのは不正経理、粉飾決算だけではなかった。社内で「パワハラ」が横行するとてつもなくブラックな労働環境を生み出したのだ。

 西室相談役は1996年に社長に就任するや、米国流の経営を積極的に取り入れ、98年には執行役員制を導入し、99年には社内カンパニー制を敷いた。東芝きっての国際派と持ち上げられたが、その実は、目先の収益にこだわる短期的視点のリストラを繰り返し、業績の責任を下に押し付ける組織を作り上げた。

 西室氏は2000年に社長を退いたあとも5年(通常は4年)の長きにわたって会長職に留まり、後を引き継いで社長になった岡村正相談役(元日本商工会議所会頭)とともに、その路線をさらにエスカレートさせていった。

『ルポ 過労社会』(中澤誠/ちくま新書)によれば、岡村社長時代から社内はすでにブラックな労働環境になっていた。たとえば、埼玉県深谷工場の液晶生産部門では加重ノルマに精神を病む労働者が続出していたのだという。2000年秋から、埼玉県深谷工場で「M2」プロジェクトと呼ばれる液晶生産の新規プロジェクトが行われたのだが、前身の「M1」プロジェクトでは開発に1年1カ月と時間がかかったということもあって、「M2」プロジェクトでは半年で完成させることが求められた。「社運をかけたプロジェクト」ということもあり、深谷工場には100人近いエンジニアが集められたのだが、そのなかにはのちに、うつ病を発症し東芝相手に解雇をめぐる裁判を起こす重光由美さんもいた。

「M2」プロジェクトにおいて重光さんは自身を含め3名が担当する、ある工程のリーダーを務めることになる。当時の生活は8時から9時の間に出社し、帰宅は23時を過ぎることが日常的で、午前0時を超えることも増えた。もともと「M2」プロジェクトでは週末も出勤を予定したスケジュールが組まれていたが、計画が遅れ出すと輪をかけて休日出勤が増え、プロジェクトが始まった00年12月から翌年4月にかけての所定時間外労働時間は、客観的な証拠が残っているだけでも平均して月90時間34分にも上るほどになった。労働基準監督署が過労死認定するための基準「過労死ライン」の「月80時間」を上回っている。

「タイトな開発スケジュールに、相次ぐトラブル対応。計画の遅れを取り戻すための繁忙な日々が続いた。やがて体が悲鳴を上げた。プロジェクトに加わって約半年後、うつ病を発症する。上司に何度も『担当を外してほしい』と訴えていた」(同書より)

 管理者教育にカウンセラーの雇用、当時の東芝は全国の企業の平均水準を上回るメンタルヘルス対策を行なっていたとされているが、それも名ばかり。

「改善されない労働環境に、重光さんのうつ病は悪化していき、2001年5月ごろから休みがちになった。(略)体調不良で仕事を休み自宅で寝ていると、上司が『明日の会議に出てくれないか』と電話してくることもあった。2001年9月、休職に追い込まれた。復職もかなわず休職期間が満了した3年後、会社から解雇を言い渡された」(同書より)

 重光さんは労災認定と解雇無効を求めて提訴。08年に東京地裁は東芝の過失を全面的に認める解雇無効の判決を出し、09年には労災不支給取り消し訴訟でも勝訴し労災認定された。解雇無効の判決に関しては東芝側は即日控訴した。

「2014年3月、最高裁は重光さんが体調不良を訴え、欠勤を繰り返していたことから、『会社は過重労働を認識しうる状況で対応は可能だった』と判断。二審判決を破棄し、賠償額を算定し直すため、東京高裁に審理を差し戻した。裁判は現在、東京高裁で和解協議中だ」(同書より)

 しかも、さらに深刻なのは、精神的に追い込まれたのが、重光さんだけではないということだ。

「重光さんだけではない。長時間労働が恒常化し、プロジェクトの他のメンバーも疲弊していた。重光さんがうつ病発症後、同僚の男性二人が相次いで自殺し、一人は後に過労が原因として労災が認められた」(同書より)というのだ。

 今回、リテラでは重光さんに当時の様子を詳しく話を聞いた。

「私が休職したのは、2001年9月。その時期を挟むように7月には同僚のOさん。12月には同僚のKさんが自殺しています。ともに私の同期の30代男性で『M2』プロジェクトにかかわっていました。Oさんのときには、7月のある日、急に全員が招集され、『O君が今、行方不明になっている。連絡があったら「何も心配しなくていいから、とにかく出てきて」と伝えてほしい』と話がありました。しかし、その数日後、Oさんは遺体で発見されたのです。Oさんは結婚し家も買ったばかりでの自殺で、私たちがお葬式を手伝ったのですが、ご家族が痛々しかった。また、6カ月後のKさんの自殺では仕事に関する遺書も残されていたようで、さすがに会社側もまずいと思ったのか、自殺の事実を隠ぺいしました。私たちには死亡の連絡がなく、総務関係者などが参列した葬儀が終わったあとに組合報で簡単に訃報を知らされただけでした」(重光さん)

 当時から「チャレンジ」と称した各事業部門への過剰な業績改善要求は行われていたという。

 「事業部長クラスが『チャレンジ』を指定し、部課長クラスがそのための『施策』をまとめるというものでしたが、私の上司は丸投げで、私がそのための『施策』を具体的に考えていたのです。最近の東芝の会計スキャンダルで『チャレンジ』『施策』という文字が躍っているのを見て、まったく変わっていないなと悲しくなりました。裁判は和解協議が長期化しているのでストレスがたまります」(重光さん)

 東芝の米国流の経営の内実は、パワハラどころか自殺者まで続出させた東芝のブラックな労働環境ということか。

 しかし、こうした米国流の経営を導入し、推し進めた張本人たちは今も、東芝の実権を握るどころか、日本の政財界にも強い影響力を行使する。

 西室相談役は、11月4日にもグループ3社の株式上場が予定される日本郵政の社長を務めるとともに、15年の安倍政権の“目玉政策”である「戦後70年談話」の有識者会議の座長を務めた。

 岡村相談役は15年春の叙勲(旭日大綬章)を受章し、東大ラグビー部出身という経歴もあり、19年W杯組織委財務委員長を務めていることから、6月には日本ラグビー協会会長に就任した。この人事には名誉会長となる森喜朗元首相の意向も大きかったという。

「豊かな価値を創造し、世界の人々の生活・文化に貢献する」という企業理念を持つ東芝だが、会計だけではなく、ブラックな労働環境さえも粉飾し続けてきたのだ。
(小石川シンイチ)

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