杏と父・渡辺謙の間にある愛憎 恋人・東出昌大との共演に複雑?

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TBS日曜劇場『おやじの背中』公式HPより

 本日放送の日曜劇場『おやじの背中』(TBS系)での、渡辺謙と東出昌大の共演が大きな話題を呼んでいる。

 東出といえば、『ごちそうさん』(NHK)で夫婦役を演じた渡辺謙の実娘・杏との交際が伝えられているが、このドラマで東出は渡辺と義理の親子役。「タイムリーすぎる夢の共演!」「本当の“親子”になるかもしれない2人の演技は見物」と、キャスティングによる話題づくりは大成功だったようだ。

 しかし、ドラマではなく現実の杏と渡辺謙の父娘関係は、実際のところ、そんなに微笑ましいものではない。

 ご存じの方も多いと思うが、渡辺謙と杏の実母である前妻は、前妻の2億円という巨額の借金トラブルをきっかけに離婚。前妻は渡辺が1989年に急性骨髄性白血病を発症し、その闘病生活の中で新興宗教・釈尊会に傾倒。病気が完治したことから、ますます釈尊会にのめり込み、ついには杏の学校の保護者にまで金を無心するほどだったという。

 そうした借金の事実を知った渡辺は、前妻との離婚を決意。離婚裁判を起こすのだが、その最中に、渡辺の長男で、杏の実兄である俳優の渡辺大が、父の“冷酷”ぶりを「週刊文春」(文藝春秋)2004年1月8日号で告発する。当時、大は19歳、杏は17歳のときのことだ。

 大によると、借金をした母は、体は丈夫ではなかったが寝る間も惜しんで昼も夜も働いていた。一方、父・謙は、約束した生活費の振り込みも金額がまちまちだったり遅れたりと、不安定に。そして、いつのまにか借金は「どうやって返すか」という問題から「返すか返さないのか」という話に替わってしまった。そんななか、杏は「急に高校を中退」する。そして、大にこう言ったのだという。

「借金を返せない要因は学費にある、それなのにのうのうと学校に行っていたら失礼だ」
「(大に対して)男はやはり大学へ行って卒業するべきだ」「(高校を)辞めるな」

 すでにモデルとして活動していた杏だが、これからは学校を辞めてモデルとして一家の働きがしらになる──。こうした杏の決意に対し、兄の大は「向学心が旺盛だったので、高校をこんな不本意な形で辞めるのはどんなに辛かったろうと、とても複雑な思いでした」と述べている。ちなみに、当初、杏は渡辺謙の娘であることは隠しつつも本名である「渡辺杏」として活動していたが、離婚訴訟の最中に芸名を「杏」に改めた。母・由美子氏も、当時の女性週刊誌の取材に「“渡辺”の名を外したいという本人の強い希望です」と語っている。

 母親が自分の学校の友だちの親にまで借金を頼み込むなど、杏は父親の謙以上に迷惑を被っているといってもいい。それでも母親の面倒を放棄することなく、また多くの二世タレントとは違い父親の威光は一切借りず、自力で単身海外に渡ってパリコレデビューを飾った杏。さらに役者としても成功をおさめ、自身には返済義務がないにもかかわらず、母親の借金を完済までしている。

 もちろん、女優・モデルとしてブレイクを果たしたいまでは、杏と渡辺謙の親子関係も周知の通り。それでも、杏が公の場で父親のことを語ることはほとんどない。たとえば、09年に大河ドラマ『天地人』に杏が伊達政宗の妻役で出演した際は、父・謙が『独眼竜正宗』で主演していたことを尋ねられ、「ちょうど放送中に私が生まれまして……実はまだ父には今回のことは話してないです。今までも仕事について父と話したことはないので」と、父に対する距離感を感じさせるコメントを残している。

 他方、父親の謙は対照的に、杏がブレイクするにつれ、娘の話を積極的に行っている。杏が朝ドラ『ごちそうさん』出演時も、「放送初日に『いよいよだね』とメールしました。本人からは『尻に火がついているので頑張ります』と返事が来ました」などと明かしているし、今回の『おやじの背中』で、娘と交際中である東出と共演することも、謙がOKしないと実現しなかったキャスティングだ。

 そもそも、母親の借金を肩代わりし、生活の面倒も見ている杏にしてみれば、借金から逃げ、家族を捨てた父親のことを、普通は冷酷に感じるはずだろう。母親の借金返済については離婚した謙に法的責任はないとしても、まだ未成年だった杏が高校中退に追い込まれても手を差し伸べないとは、父親としての養育義務的にも疑問だ。佐藤浩市や香川照之のように、父への恨み辛みを語っても、なんらおかしくはない。

 だが、杏にはそう単純にはいかない“心の葛藤”があるのではないか。じつは離婚前に謙が家を出て行ったとき、杏は一旦、父について行っているのだ。しかし、数日後に母と兄が暮らす実家へ戻ってきたという。そのことを兄の大は、前述の告白文のなかで「理由はよくわかりませんが、父の家にはいづらかったのだと言っていました。妹は自然と父からの連絡を拒むようになり、父と母、父と妹の連絡は、僕がやるようになりました」と書いている。

 果たして、その数日間の心変わりには、一体どんな理由があったのか。──その心中を知るのは杏本人しかいないが、恨みきれない何かがあるのだろう。というのも、2010年に杏が『情熱大陸』に出演した際、杏は主演舞台の初日チケットを「10年間仕事をしてきてはじめて」謙に送っていたのだ。インタビュー中、杏は舞台に誘った理由を「それくらいは来てくださいよ」と笑顔で答えていたが、しかし、初日の幕が開いたとき、送った座席に父の姿はなかった。終演後、杏はこんなふうに語っている。

「(父から)キャンセルしたいって言ってきたので、来てくれなきゃ困るってメール送った」「(自分が)面倒くさい人になったなってメールを送ったときに思ったんですけど、それって今後生きていく上ですごく大事」「面倒くさいやつにどんどんなっていこうって思いました」

 杏は、笑顔でそう話しながらも、なんともいえない寂しげな表情を浮かべていた。

 複雑な感情をすべて背負い込み、父と同じ芸能界で女優としての地位を固めつつある杏。自分の愛する人が、恨みきれない父と共演する姿を、彼女は一体どんな気持ちで眺めていたのだろうか。
(水井多賀子)

最終更新:2014.08.28 02:22

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