タイ洞窟の少年たちにまで「反省しろ」「自己責任」の声! 日本の自己責任論バッシングのルーツは安倍首相だった

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救助隊が公開した洞窟で発見された少年たちの様子

 タイ北部チェンライ県のタムルアン洞窟に閉じ込められていた少年ら13人が全員救助された。彼らには低体温症などの症状が出ているものの、命に別状はなく、1週間程度の入院の後、家族のもとへ帰ることができるであろうと報じられている。

 この知らせに世界中で歓喜と祝福の声が起きた。国際サッカー連盟(FIFA)は少年たちをワールドカップロシア大会の決勝戦に招待するとしていたが、彼らの健康状態を考えて断念。しかし、今後FIFAが主催する大会に招待するなど、なんらかのかたちでお祝いをしたいという意向を示している。


 また、イングランド代表のカイル・ウォーカー選手はツイッターで少年たちに自分のユニフォームを贈りたいと記し、さらに、プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドは次シーズンの試合に少年たちを招待したいとツイッターに投稿して祝意を送った。

 同様の動きは世界中で起きており、あのトランプ大統領ですらも、自身のツイッターを通して少年たちの生還に祝福を述べた。

 しかし、日本ではこれらと180度真逆の発言が多く出ている。11日放送『ひるおび!』(TBS)で立川志らくは「本当に嬉しいことなんだけれども」と前置きしたうえで、このように語った。

「でも、少年たちが忘れちゃいけないのは、この事件によってダイバーが一人亡くなっているということ。あと、農家の人に迷惑をかけた。それからすごいお金が使われた。少年たちに罪はない。連れて行ったコーチが反省して。今後、この少年たちをヒーローのように祭り上げるよりも、『亡くなった人もいるんだよ』と、『本当に感謝しないと』と、それを教えていかなくちゃいけないですね」

 志らくはきょう12日の放送でも「コーチの責任」「コーチが連れて行かなきゃこんなことにならなかった」などとコーチ批判を繰り返した。

 また、10日放送『NEWS23』(TBS)では、星浩キャスターが「子どもたちね、ちょっとした冒険気分で行ったんでしょうけど、これほどの騒ぎになってしまったので、やはり子どもたちもちょっと反省の必要もあると思いますね」とも発言。

 こういった意見はネット上にも散見され、以下のような書き込みが多く投稿されている。

〈自業自得だと思うから、この祝福モードは理解できない〉
〈W杯決勝に招待という”ご褒美”的なものを上げるのは違うんじゃないかな?と思ったり。不幸な事故というわけではなく、不注意による自業自得という側面も強い〉
〈助かって良かったけど、ダイバーが亡くなってるし迷惑な子供たちだなコーチもなにやってんだかって思っちゃう〉

 いかにも昨今の日本らしい自己責任論のオンパレードだが、他の国ではこういった論調にはなっていない。

 それは、現地のタイですらそうだ。彼らに対して「自業自得」などという言葉を投げかける人は、まったくいないわけではないものの、かなり少ないといっていい。2018年7月7日付ニュースサイト版毎日新聞の記事で、京都大学東南アジア地域研究研究所連携講師の外山文子氏は、その理由を〈政府高官が「コーチが責任を感じて気に病まないようにしてほしい」と呼びかけたことも関係する〉とコメントしている。

 この事件は確かに全世界を巻き込んだ大騒動に発展してしまったが、子どもたち自体は特別悪いことをしたわけではない。ただ洞窟に入っただけのことだ。家族ならともかく、マスコミや世論が「反省しろ」と説教するようなことではない。

 しかし、もしこれが日本で起きていたと仮定するとどうだろう。少年たちや引率のコーチを叩く言説に溢れていただろうし、政府側が「責任を感じて気に病まないようにしてほしい」といった声明を出すというのも考えにくい。

自己責任論バッシングのルーツは安倍首相だった!イラク人質事件では被害者に費用請求発言も

 日本でこのような自己責任論が幅を利かせ始めたきっかけのひとつが、2004年、イラクでボランティア活動をしていた日本人3名が武装勢力に誘拐され、人質とされた事件だ。この事件ではいまと同じような自己責任論がわきあがり、すさまじいまでの人質バッシングが起きた。そして、その発信源のひとつが当時の自民党幹事長、安倍晋三だったのだ。

 この事件で人質の拘束が発覚した直後から、自民党では右派議員を中心に「(人質の)家族はまず『迷惑をかけて申し訳なかった』といえ」「遊泳禁止区域で勝手に泳いでおぼれたのと同じ」「好んで危険地帯に入った人間を助ける必要があるのか」といった自己責任論があがっていた。また、人質が解放された後も無事を喜ぶどころか、外務省政務次官経験のある議員が「救出費用は20億円くらいかかった」などという情報を流したことで、「税金の無駄遣いだ」「チャーター機など出すべきでない」「被害者に費用を請求すべきだ」との声が続出した。

 実際、救出にかかった費用は1000万円程度で、人質になった3人は航空機の費用なども支払っており、これらの主張はデマに基づいたヒステリーとしかいいようのないものだったが、幹事長の安倍は各種の会合でこうした自己責任論と被害者費用負担論に全面的に同調。そして、人質が解放された翌日の会見では、自らこう言い放ったのだ。

「山の遭難では救出費用を遭難者に請求することもある」

 この無神経ぶりには唖然とさせられるが、これはただの失言ではなかった。安倍は自民党の総務会でも人質への費用請求を求める声を受け、「しっかり考える」「かかった費用は精査する」と答弁。実際に政府に請求を検討させる姿勢を見せたのだ。

 もっとも、こうした動きは意外な人物の発言で急転する。当時、日本社会のあまりに激しい人質糾弾の空気に欧米メディアから疑問の声が上がっていたが、そんななか、アメリカのパウエル国務長官が人質事件について「イラクの人々のために、 危険を冒して現地入りをする市民がいることを、日本は誇りに思うべきだ」と発言したのだ。

アメリカに説教されると沈黙した安倍首相 しかし自己責任論

 イラクで武力行使しながら武力行使に反対するボランティアの行動を尊重するというのは、“腐っても自由の国、アメリカ”という感じだが、それはともかく、この発言によって日本の政治家たちはクモの子を散らすように自己責任論から逃走した。それまで勇ましく「人質に救出費用を払わせろ」と言っていた自民党の右派政治家たちも完全に沈黙。マスコミの取材にもノーコメントをつらぬくようになった。

 それは安倍首相もまったく同じで、これ以後、この件で自己責任論を口にしなくなった。第一次安倍政権のときに従軍慰安婦について「旧日本軍の強制性を裏付ける証言は存在していない」と大見得を切りながら、アメリカに猛反発を受けて沈黙してしまったのとまったく同じパターンだ。

 ようするに、弱い自国民に対しては上から目線で恫喝をかけるが、自分より強いアメリカに言われたら何も言い返せない。それが連中の本質なのだ。

 しかし、沈黙したからといって、彼らが自己責任論を捨てたわけではない。これとほぼ同じ構図は、2015年に発生した湯川遥菜氏と後藤健二氏が人質となったイスラム国による拘束事件においても繰り返されたからだ。

 表面上、安倍首相は自己責任論を口にしなかったが、きっとその心根は2004年当時とまったく変わっていなかっただろう。実際、安倍首相は救出に動かず、交渉を妨害したばかりか、湯川氏と後藤氏が人質にとられている状況で、相手を挑発し、殺害という最悪の状況をつくりだしてしまった。

 しかも、その安倍首相はふたりが殺害されたとたん、「罪を償わせる」と報復ともとれるような発言をし、「日本国民に指1本触れさせない」と威勢のいい啖呵を切って、自衛隊の対テロ部隊海外派遣をはじめとする安全保障体制の強化を次々打ち出した。「国民の生命と財産を守る任務をまっとうする」として、翌年の参議院選挙後に憲法改正のための発議を行うことまで言明した。

 国民を見殺しにしながら、殺害されるやいなや報復の感情を煽り、「戦争のできる国づくり」に政治利用する。その卑劣さには反吐が出るが、しかし、これこそが自己責任論を扇動する者の典型的なパターンなのだ。イラク人質事件以降、日本では事あるごとに自己責任論バッシングが繰り返されている。

 今回のタイの事件では、世界各国から集まった救出チームの働きが多くの人の感動を呼んだが、被害者たちの無事を喜びこそすれ、決して自己責任論を振りかざして叩いたりしないタイの人々の反応には、大いに学ぶところがあるのではないだろうか。

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