日本代表パス回し擁護で日本メディアが大本営状態に! 批判はタブー、朝日と産経も「成熟」と賞賛で完全に一致

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日本代表批判がタブーになりつつある空気…ベルギー戦後はいかに?(公益財団法人日本サッカー協会公式サイトより)

 決勝トーナメント進出を決めたサッカーW杯日本代表のポーランド戦のパス回しに世界中から非難が集まっている。「日本が最後にしたことはW杯でもっとも見たくないものだった」「不可解な結末でW杯を汚した」(イギリスBBC)「日本の恥だ」(ロシア「スポルト・エクスプレス」紙)「W杯で最も恥ずべき10分間」(ドイツ「ビルト」紙)「失望した。アンチ・スポーツ精神だ」(イタリア・メディアセットTV)――。

 こういう声が出てくるのは、当然だろう。欧州や南米では、カウンター狙いのガチガチの守備的戦術をとるだけで、ファンから激しいブーイングが起きたり、サッカージャーナリズムにボコボコに叩かれたりすることも珍しくない。ましてや、日本代表は、1点差で負けていたのに、自陣で15分近くもボールを回し続けたのだ。しかも、セネガルが1点を入れていたら、敗退するリスクさえあったなかで、こんな他者任せの戦術をとったのだから、批判されるのは当たり前なのである。

 ところが、日本国内の反応は真逆、不気味なくらい擁護一色だ。テレビを付けると、あらゆる番組のあらゆるキャスター、コメンテーターが「ルールの範囲内だからなんの問題もない」「批判されるいわれはない」と口を揃えてかばうばかりか、「素晴らしい決断」「冷静な大人の戦略」「日本もこういうプレイができるようになったということ」などとほめたたえている。そして、海外からの批判についてはまるでヒステリーを起こしたみたいに「嫉妬してるだけ」「外国に言われる筋合いはない」「応援してくれなくてけっこう」などと食ってかかっているのだ。

 言っておくが、筆者はパス回しで時間稼ぎという戦術自体を否定するつもりはない。あのサッカーが美しいとは思わないし、海外メディアから批判の声が上がるのも当然だと思うが、だとしても、所詮はサッカーというイチ競技内の倫理と戦術の問題に過ぎず、その是非はどうだっていい。

 しかし、気持ち悪いのは、日本国内があまりに擁護一色すぎることだ。象徴的なのは、試合の翌々日30日の産経新聞と朝日新聞。まったく同じ言葉で、あのパス回しを評価していた。

 まず、産経新聞は「産経抄」でこう書いていた。

〈ただ、これまで日本はスポーツでも外交でも、正攻法にこだわり過ぎたきらいがある。その意味では日本社会の成熟の表れとも言えよう。政治学者の櫻田淳さんは、自身のフェイスブックに記していた。「日本も、こういう狡(ずる)いサッカーができるようになったかと思えば、実に感慨深い」。〉

 客層を考えると、産経が日本代表を無理やり褒めるのは予想の範囲だが、驚いたのは朝日だ。朝日はスポーツ面でこう解説していた。

〈日本に足りないのは「ずる賢さ」――。代表を指揮した外国人監督らから、たびたび指摘されてきた。〉
〈2018年のこの日。日本代表は、悪質な反則をしたわけでも、相手への敬意を欠いたわけでもない。着実に目的を達する、成熟した姿をみせたのだ。〉

 そう、どちらも「ずるいことができるようになった」、だから「成熟した」と書いていたのだ。通ぶって例の「マリーシア」とやらをもちだしたつもりなのかもしれないが、たった一試合、他人任せの時間稼ぎをしただけでなぜ「成熟」ということになるのか。

 だいたい、ずるいことが「成熟」なら、これまでなぜ、日本代表のフェアプレーが世界から賞賛されていることを嬉しそうに伝えてきたのか。

イングランド批判する朝日のご都合主義、産経はパス回しを「政治や外交も同じ」と

 しかも、朝日新聞にいたっては、日本代表のパス回しを賞賛していた同じ紙面で、2位通過狙いのイングランド対ベルギーを無気力試合と批判していた。ロンドン五輪のバドミントンで韓国や中国などの選手が無気力試合で失格になったことまで引き合いに出して、である。ダブルスタンダード、ご都合主義としか言いようがない。

 一方、話を飛躍させまくっていたのが産経新聞だ。前述の「成熟した」論の後にマキャベリの言葉を引き合いに出し、さらにこう続けていた。

〈興味深いことに、政治家からは「選挙と同じだ」、外交官からは「外交と同じだ」との感想が聞こえてきた。ルールの中でぎりぎりの駆け引きをし、多少体裁が悪かろうと結果を出すことがすべての世界ということか。〉

 なんで、サッカーが政治や外交の話になるのか。モリカケなど「ずるい」政治をしまくっている安倍政権のことも「成熟した証拠」などと擁護したいのか。しかし、そんなクソみたいなアナロジーが成立するなら、攻撃しないパス回し作戦の成功は、専守防衛に徹した憲法9条の有効性を証明したとか(笑)、それこそなんとでも言えるだろう。サッカーの試合にまで自分たちの右派思想を仮託しようという、産経の姑息さにはいつものことながら辟易とさせられる。

 もっとも、恥ずかしいのは、朝日と産経だけではない。他のメディアやコメンテーター、ネットの意見も似たり寄ったりだ。「ルールの範囲内」の倫理や姿勢が問題になっているのに、小学生のように「ルールの範囲だから悪くない」と強弁したり、ふだん「攻撃的なサッカーで勝たないと意味がない」と言っている元サッカー選手が「大人の判断」と強弁したり、さらには、「この試合で日本の道徳の価値観が変わる」「プロセスを重視してき日本人もこれからは結果を重視する時期が来たということ」などと、壮大な日本人論まで持ち出して、日本代表を擁護するコメンテーターまで現れていた。

 どいつもこいつも一見、もっともらしいことを言っているような体裁をとっているが、実際は、「日本代表がやったことなんだから素晴らしい」「決勝トーナメントに進めたんだからアリに決まってる」とがなりたてているだけなのだ。

まるで戦中の非国民狩り!パス回しを批判した野村周平や足立梨花は炎上状態に

 賭けてもいいが、日本がポーランドに1点取られた時点で、もしセネガルとコロンビアが引き分け狙いでパス回していたら、いま、日本代表を「大人の戦略」「成熟した」などと賞賛しているメディアは「卑怯」と両国を大批判していただろう。

 しかし、恐ろしいのは、この根拠も中身もない日本代表肯定論が大手を振ってまかり通っているというだけではない。少しでも日本代表に異論を唱えようものなら、「日本代表の足を引っ張るのか」「日本を背負ってくれている選手に失礼だ」、さらには「日本を応援しない非国民」などと総攻撃を受け、炎上する状態となっていることだ。

 実際、俳優の野村周平や足立梨花は、たんにツイッターで戦術としてパス回しを批判しただけなのに、「頑張った選手たちに対して失礼だと思います」「影響力のある人がこういうことを言うのは残念」「決勝に進出したことに対しておめでとうの一言も言えないのはどうかと思います」などと批判が殺到。野村周平は謝罪に追い込まれ、反論し続けた足立梨花は「逆ギレ」などとさらに非難を浴びた。

 その結果、メディアや社会全体が日本代表を批判してはならないという空気に覆われてしまった。

 元大阪市長の橋下徹は〈ポーランド戦の最後のパス回しを批判するのは頭の悪い証拠。緻密な状況分析による最高の戦術。そして指揮官西野監督の勇気と胆力。あそこで勝負するのは太平洋戦争に突入した日本軍と同じ〉とツイートしていたが、頭の悪いのは橋下のほうだ。サッカーの試合で攻撃的に行くことと、太平洋戦争はなんの関係もない。むしろ、この日本代表を批判するものは非国民という空気、決勝トーナメントに行ったんだから文句を言うなという結果オーライのメンタリティこそが、太平洋戦争を引き起こしたのではないか。

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