NHKが森友報道を牽引してきた記者を報道から外す安倍政権忖度人事! メディア研究者・NHK元経営委員らが抗議

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NHK公式サイト「NHKについて」より

 やはり“安倍様のNHK”の体質はまったく変わっていなかったということらしい。籾井勝人前会長体制が終わって、森友学園問題や加計学園問題でもスクープを報じるなど、以前よりは風通しがよくなったかにみえたNHKだが、ここにきてとんでもない“政権忖度人事”が明らかになった。

 この事実は、先月、「日刊ゲンダイ」が先駆けて報じたものだが、同局で森友学園報道をリードしてきた記者を記者職から外すという、驚きの人事が行われようとしているのである。

 外されようとしている記者は、大阪放送局報道部副部長のA記者だ。A記者は森友問題発覚当初からこの問題を取り組み、しばしばスクープを飛ばしてきた。今年4月にも、8億円値引きの根拠としたゴミ撤去費用をめぐり、財務省理財局職員が森友学園側に「トラック何千台も使ってゴミを撤去したと言ってほしい」との口裏合わせを求めていたことをすっぱ抜いている。

 ところが、そのA記者を考査部という部署に飛ばすという内示が出て、この6月に正式に異動となるというのだ。 

「考査部は番組内容のチェックなどをする部署で、報道部とは全然違って、自分で取材活動ができなくなる。A記者は、森友問題発覚当初からNHK内で誰よりも籠池理事長に深く食い込み、検察にも強い記者です。勤務態度や取材に何か問題があったわけでもない。報道機関の常識からみても、この時期に森友問題の特ダネを持っている記者を報道から外すというのは明らかに異常です」(NHK報道局関係者)

  6月1日、NHKの報道姿勢とA記者の人事にかんして、研究者・弁護士有志が永田町の議員会館で会見を開き、その後、「NHK大阪放送局の記者を異動させる人事につき、不当で不合理なおそれも強く、中止を含め根本的に再検討すること」を含む申し入れをNHKの上田良一会長らに行なった。

 会見には、「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表の醍醐聰・東京大学名誉教授や、メディア法を専門とする服部孝章・立教大学名誉教授、2001年から07年までNHK経営委員を務めた小林緑・国立音楽大学名誉教授など6名が参加した。

NHK幹部が現場に「森友をトップで扱うな」「昭恵夫人の映像を使うな」

 会見のなかで弁護士の澤藤統一郎氏は、実務法律家としての立場から「大阪のNHK記者のことは、ひとりの問題ではない。多くの記者に萎縮を与えることになりはしないか」と警鐘を鳴らした。また、社会学者の瀬地山角・東京大学教授は、A記者とは大学の同級生であることを明かしたうえでこのように述べた。

「森友問題が多くの視聴者から関心を集め、かつ視聴者の目線で見たときに、解決にはほど遠い現状のもとで、数々のスクープを連発した敏腕の記者を現場から外すという判断をするということについては、メディアとしての見識を疑います」

 他方、A記者の人事を「日刊ゲンダイ」が報じた直後から、安倍応援団のネット右翼や一部メディアの間では「これは騒ぐほどのものではない普通の人事」とするような話が流れている。

 だが、そんなわけがないだろう。実際、前出とは別の放送関係者は「A記者には内示が出る前の段階で、周辺から陰に陽にプレッシャーをかけられていたと聞いています。本人も局内の上司に『取材をやめたくない』という気持ちを伝えていたようです」と語る。局外の友人も、A氏から「最後まで記者を続けたい」という言葉を直接聞いているという。

 繰り返しになるが、実績も十分な記者を、本人の希望を完全に無視し、報道も取材もできない部署に異動させる。これはやはり、NHK上層部が安倍政権を忖度し、森友問題でこれ以上決定的なスクープを出させないよう、人事権を悪用して“幽閉”したとしか思えないものだ。

 そもそもこの間、NHKは森友問題に関するスクープを複数報じた一方で、現場には幹部からの圧力がかけられていた。このことは国会でも取り上げられてきたとおりだ。

 たとえば、NHKの2018年度予算審議がおこなわれた3月29日の参院総務委員会では、共産党の山下芳生議員が“NHK関係者からの内部告発文書”が届いたとして、その内容をこのように読み上げた。 

「『ニュース7』『ニュースウオッチ9』『おはよう日本』などのニュース番組の編集責任者に対し、NHKの幹部が森友問題の伝え方を細かく指示している」
「トップニュースで伝えるな」
「トップでも仕方がないが、放送尺は3分半以内」
「昭恵さんの映像は使うな」

「トップで伝えるな」というだけではなく「トップでも仕方がないときは3分半以内」という細かい指示にはリアリティがあり、放送現場を知らない人間には簡単にでてくるものではない。

報道局長のイニシャルから「Kアラート」と呼ばれている森友報道への圧力

 また、同じ参院総務委員会では、TBS出身の民進党(当時、現在は立憲民主党)・杉尾秀哉議員が、ある時期から「報道局長が森友問題で映像やニュースの扱い方などを細かく指示をするようになった」という情報を得たとして、「NHKのニュースセンターのなかで、Jアラートならぬ『Kアラート』というふうに呼ばれているそうです」と述べた。杉尾議員も指摘しているが、「K」というのは小池英夫報道局長のイニシャルからとられたとみられている。

 実際、A記者が手がけた財務省理財局が森友側に「口裏合わせ」を求めていたというスクープは、4月4日の『ニュース7』で報じられたものだが、このときもトップニュースではなく、なんと6番手の扱いだった。メジャーリーグ大谷翔平の初ホームランや、東京で初夏日観測という話題よりも後ろだ。時間を計ってみると、おおよそ2分45秒。「3分半以内」に収められていた。

 また、しんぶん赤旗が4月30日付で、朝日新聞が森友文書改ざん問題をスクープした3月2日から佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われた27日までの『ニュース7』と『ニュースウオッチ9』およびテレビ朝日の『報道ステーション』、TBSの『NEWS23』の森友報道を比較検証している。

 周知の通り、3月12日に公開された財務省の改ざん前文書には、昭恵夫人の影響を示す記述が複数存在したが、赤旗によれば、昭恵夫人と籠池夫妻が学園建設予定地前で撮影した写真や昭恵夫人が学園を訪問した際の映像を複数回使用した『報ステ』(写真2回、映像4回)、『23』(写真7回、映像8回)に対し、NHKの『NW9』では3月12日の放送でイメージ映像を数秒流したのみで、それ以外には学園と関連する写真や映像、交渉を録音した音声も一切使わなかったという。

 それらの“事実”を鑑みても、今回、NHKが森友問題のスクープ記者を、あえて取材や報道ができない部署に飛ばしたというのは、やはり、そこには政権の顔色を伺った上層部の“政治的配慮”が関係していると考えるのが妥当だろう。

 いずれにせよ、こんな人事がまかり通ってしまえば、今後、政権に都合の悪いスクープは闇に葬り去られることになりかねない。当然、私たちの「知る権利」もどんどん潰されていく。他のマスコミも見て見ぬ振りをしている場合ではないだろう。このNHK人事の背景を、全メディアが徹底的に追及するべきだ。

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