自衛隊の隠蔽はイラク日報だけじゃない! 南スーダンでは「宿営地に25発の弾頭、弾痕9か所」の被害を隠蔽

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『情報隠蔽国家』(河出書房新社)

 森友・加計学園問題や日本大学アメフトタックル問題で、影に隠れてしまっている自衛隊の南スーダンPKO 及びイラク派遣をめぐる日報問題だが、ここにきて、その組織的隠蔽の“背景と構造”が、次々に浮かび上がってきた。

 たとえば、南スーダンPKOをめぐっては、5月25日、内部文書や取材をもとに首都・ジュバで発生した政府軍と反政府軍の大規模戦闘時に、自衛隊の宿営地でも「25発の弾頭、施設に弾痕等9か所の被害を確認」などと記されていたことをNHKがスクープした。

 すでに明らかになっている日報でも「戦闘により約150人の死傷者が発生した模様」「機関銃らしき射撃音15発以上」などと記録されていたが、周知の通り、政府は「戦闘」を「衝突」と言い換えて、PKO部隊へ安保法に基づく駆け付け警護の新任務を付与していた。

 スクープのポイントは、初めて宿営地内部での自衛隊員の様子を詳細に報じたことだ。

 NHKが入手したのは、2016年7月に現地に派遣されていた10次隊の報告書。被害や隊員の様子は大きく黒塗りになっていたが、NHKは取材を進めて、その隠された部分の詳細を明らかにしたという。

 まず、ジュバでの大規模戦闘の際、政府軍と反政府軍は、自衛隊の宿営地を挟んで銃撃戦を展開。報告書には、隊員たちは2度にわたってコンテナへ退避したことが記されていた。さらに、その後宿営地の状況を確認すると「小銃、機関銃等の25発の弾頭、施設に弾痕等9か所の被害を確認」「流れ弾による屋根の被害に留まらず、直射弾による側壁等の被害を3か所確認」との記述があったという。これは、自衛隊員たちが明確に戦闘の現場におかれていたことを意味している。

 しかも、報告書には「惨事後ミーティング」という隊員への面談内容の記載もあった。それによれば、「事案時、孤立し恐怖心を強く感じた」「事案後イライラ感を強く示した」「睡眠障害を訴えた」という自衛隊の具体的な変化が綴られていたという。隊員は、銃弾が飛び交う宿営地のなかで、現実の戦闘に大きな恐怖を感じていた。「イライラ感」や「睡眠障害」は当時の過大なストレスだけでなく、PTSDの可能性も考えられるだろう。

自衛隊員が「死ぬかも」「PKO参加5原則は維持されているか」と当時の心境を吐露

 注目すべきはそれだけではない。NHKはジュバに派遣された10次隊の複数隊員による生々しい証言を報じたのだ。

「銃声がすぐ近くで聞こえていて、もしかしたら弾に当って、当たりどころが悪ければ死ぬかもしれないと当時、考えていました」
「思い出すのは、数時間鳴り止まない銃声と、そのときの情景です。当時、PKO参加5原則が維持されているのだろうかという疑念が浮かび、隊員の中では撤収するのではないかという臆測も出ていました」

 政府が「戦闘ではない」と言い張って派遣を継続したその現場は、いつ死者が出ても少しもおかしくない状況だったのだ。

 繰り返すが、当時の国会でもPKO派遣の継続は「参加5原則」を破っているとの指摘があがったにもかかわらず、安倍首相らは意に介さなかった。そのうえ、駆け付け警護付与の条件である「戦闘行為が行われることがないと認められること」も、これで完全に崩れていたことが明確になった。

 こうした「戦闘」の事実が表沙汰になれば、安倍首相が待望していた安保法に基づく駆け付け警護はできなくなる。だからこそ日報の隠蔽が行われた。そう考える以外にないだろう。

 実際、イラク派遣部隊の日報隠蔽問題の背景にも、自衛隊の「戦闘」の事実が関わっていた。周知のように、これは昨年の国会で南スーダンPKOの日報隠蔽問題を追及されるなか、イラク派兵時の日報についても問われた政府が「確認したが発見されなかった」「残っていないことを確認した」(稲田朋美防衛相・当時)としていたにもかかわらず、実際には陸上自衛隊や航空自衛隊が保管していたというもの。その存在は1年以上も国民に隠されていた。

 4月に公開されたイラク派遣の日報では、やはり、複数の箇所で「戦闘」との記載があった。ところが政府は同月27日、この「戦闘」の言葉について、自衛隊法で定義される「戦闘行為」の意味で用いられた表現ではないとする答弁書を閣議決定。さらに防衛省が5月23日に公表した調査報告でも、「組織的な隠蔽はなかった」と結論づけた。

 いったい誰が納得できるというのか。自衛隊の「戦闘」が発覚して南スーダンPKO問題を泥沼化させないよう、恣意的に「発見されなかった」としたと考えるのが自然だろう。

 なお、防衛省の調査報告が公表された23日は、森友問題をめぐって財務省が改ざん前の交渉記録を公開した日でもある。情報をまとめて出すことで、世間の目の分散を狙い、幕引きを狙おうという安倍政権の意図が透けて見えるではないか。

安保法日米密約文書は存在していた! 国会質問の翌日に秘密指定、始まった流出犯探し

 この1、2年で相次いで発覚した公文書の隠蔽問題。しかし、実はこうした事態は、あの安保法制をめぐっても起きていた。

 ジャーナリストの青木理氏が、近著『情報隠蔽国家』(河出書房新社)のなかで、現役自衛官へのインタビューなどを元にその隠蔽の内幕を詳述している。

 それは、安倍政権が安保関連法案を強行した2015年夏、国会で飛び出した“日米密約”の記録文書をめぐるものだ。同年9月2日の参院特別委で共産党の仁比聡平議員が暴露したこの防衛省の内部文書は、河野克俊統合幕僚長が2014年12月の衆院選直後に訪米した際、米陸軍のオディエルノ参謀総長に対してこう説明していたと記されていた。

〈オディエルノ「現在、ガイドラインや安保法制について取り組んでいると思うが予定通りに進んでいるか? 何か問題はあるか?」
 河野「与党の勝利により来年夏までには終了するものと考えている」〉

 つまり、日本の行政府や立法府による決定よりもはるかに前に、日米軍部間で安保法制の成立が決められていたことを意味していた。ただでさえ憲法違反の法案において、政府がこの民主主義を無視した“密約”を認めれば大混乱は不可避だったが、文書を突きつけられた安倍首相は「仁比委員が示された資料と同一のものの存在は確認できなかった」(安倍首相)と強弁。そして、最終的に安保法制は強行採決に持ち込まれ、可決されてしまった。

 ところが、実はこのとき防衛省内では、安倍首相が「存在しない」と言い張った文書の「流出犯」探しが必死で行われていたのだ。さらには、国会で文書の存在が飛び出した直後に、防衛省はこの文書を秘密対象にしてしまったというのである。

 これは、文書漏洩の「犯人」と決めつけられた防衛省情報本部の三等陸佐・大貫修平氏が、青木氏のインタビューに実名で応じ、証言したものだ。大貫氏は警務隊(自衛隊内の司法警察)による過酷な聴取のうえ、送検されたが、嫌疑不十分で不起訴になった。また、昨年3月には「身に覚えのない内部文書の漏えいを疑われ省内で違法な捜査を受けた」として国に慰謝料を求める国家賠償請求訴訟を起こしている。

 昔でいえば“情報将校”の役職にある大貫氏は、仕事の性質上、さまざまな機密文書も扱う立場だった。例の“日米密約”の会談記録もメールでやり取りしていたという。その大貫氏が青木氏によるインタビューのなかで語ったところによれば、実に「国会で質問された翌日、上層部の指示で文書が『省秘』に指定された」というのだ。

「省秘」というのは、自衛隊員の秘密保持義務を定めた自衛隊法59条等に基づくもので、大貫氏によれば「漏らせば懲役刑を科せられます」という。実は、この文書は当初、取扱注意という意味合いしかない「取扱厳重注意」というカテゴリーだったのだが、青木氏も〈つまり問題の文書は9月3日に行われた「省秘」指定作業によって初めて防衛省・自衛隊としての「正式な秘密」に格上げされたことになる〉と記しているように、国会で暴露されたのをきっかけに、突然、秘密文書の扱いに変えられたわけである。

文書漏洩の取り調べで「この件は官邸マター」「行政の長も激怒」の言葉が

 それだけではない。大貫氏が青木氏に明かしたところによれば、この「省秘」指定から2日後の9月5日前後、情報本部の統合情報部周辺では、さらなる隠蔽工作が行われていたというのだ。情報本部に在籍していた大貫氏がこう証言している。

「これも上層部の指示でしたが、問題化した文書をパソコンから削除しろと職場で指示されました。国会で騒がれてしまったから、必死で隠滅を図ろうとしているのだと私は受け止めました」

 さらに大貫氏は、取り調べにあたる刑務官から「この件は官邸マターだから捜査に協力しろ」「この件については行政の長も激怒しているんだぞ」といった言葉も浴びせられたという。

 つまり、安倍首相が国会で「文書は確認できなかった」と強弁したから、防衛省は実在する文書をなかったことにするため、秘密文書に指定し、省内からも痕跡を消そうとした。そうとしか思えない。詳しくは青木氏の『情報隠蔽国家』を読んでもらいたいが、この安保関連文書の隠蔽問題にしても、森友・加計学園問題や自衛隊日報問題にしても、その根はすべて、安倍首相につながっているのである。

 私たちは「見える」ことのみを“現実”だと把握する。しかし、公文書の隠滅は、国民から真実を隠し、のちの歴史の検証をも遮断してしまう。それは、為政者にとって、ありのままの現実が不都合だからにほかならない。実は、すでに海外での戦闘で自衛隊員が死亡しており、政府がそれを隠していたとしても、もはや、少しも不思議ではないだろう。いま、安倍政権のもとで起きている事態の深刻さは、その域にまで達しているのだ。

最終更新:2018.05.28 11:54

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