室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第9回ゲスト 鳩山由紀夫(後編)

安倍政権を批判する鳩山由紀夫元総理に、室井佑月が「鳩山さんがお金を出して」と要求したこととは?

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鳩山由紀夫元総理と室井佑月氏


鳩山由紀夫元首相をゲストにお送りしている室井佑月に連載対談「アベを倒したい!」。前編では「最低でも県外」と言っていた鳩山氏がなぜ、沖縄米軍基地の辺野古移設を止められなかったのを追及した室井だったが、後編では、いよいよ安倍首相と日本の右傾化の問題について切り込む。鳩山氏は安倍首相をいったいどう見ているのか。今の流れを止めるアイデアはあるのか。また、室井の口からは、実弟の故・鳩山邦夫氏との不仲説に関する質問や、なんともあつかましい要求まで飛び出した。最後までぜひ、読んでほしい。


室井佑月「日本の右傾化は民主党政権が国民を失望させたせい」

室井 今の右傾化と安倍一強という社会全体の流れは、はっきり言わせてもらうと民主党政権が政権を取って期待したのに、期待はずれだったという反動もあると思うんです。そのへんのことも、鳩山さんにはぜひお聞きしたい、と。

鳩山 確かにひとつは民主党政権に期待したけど「ダメだったじゃないか」いう部分は、自戒を込めてあると思います。政治と金の問題もあり、メディアからも批判されました。「せっかくリベラル政権ができたと思ったら、自民党政権より悪かったじゃないか」とね。そのためか私のあとの菅(直人)内閣と野田(佳彦)内閣はかなり右寄りになっていきました。そして右傾化のもうひとつの理由は、日本自体が自信を失ってきているからだと思います。本来なら経済一辺倒で世界第2位にまでになった経済大国日本が、20数年で経済も落ち目になって伸びていない。他の国、特に中国の急成長に比べたら、日本は20年間ほとんど伸びてない。そんな状況下で、隣人に対する妬みのようなものが募ってきて、それが中国脅威論に結びつく。相手を認める余裕がなくなってきてしまっていると思う。

室井 一般の国民がそんな考えを持ち、大勢になってしまったら、もう取り返しがつかないと思うんです。だから「日本すごい」と言いたがる人が多ければ多いほど、逆に「国際競争で負けているんだな」とわたしは理解するようにしています。今、メディアでも「日本すごい!」という番組や本、記事が氾濫しているじゃないですか。同時に韓国や中国の揚げ足を取って、嘲笑するような報道ばかりしている。狭い中で自画自賛するのってすごく歪んでいるし、みっともないと思います。

鳩山 わたしの著書『脱 大日本主義』(平凡社新書)にも書きましたが、大きく強く威張るような国を目指すのではなく、ミドルサイズでいいから自分の体に合った体力で人々の幸福を考える。日本はどこの国よりも少子高齢化時代を迎えているのだから、そうした対策を頑張れば、世界に向けてのモデルになれる。

室井 でも、少子高齢化はどうしようもできないし、国際競争に負けてるし。だいたい安倍さん、教育にもお金をかけないじゃないですか。

鳩山 この国は、教育がどこかでおかしくなってしまった。私のときもそうだったかもしれないけど、インターネットが予測もつかないほど急速に普及する予測する中、「自分自身で考える」という教育をしてこなかった。自分で考える経験がないから、外から入ってくる様々な情報を鵜呑みにして受け入れてしまう。自分の頭で「これはおかしいじゃないか」と考えることがなかなかできない状況になっていると思います。大学教育もだいぶ遅れてしまったと思いますが、まずは初等中等教育を根本的にやり直さないとダメだと思っています。

室井 安倍さんが、国立大改革として、文系学部の廃止を通達したことがありましたが、それって、“直接商売に結びつかないからお金を削る”ってことだと思うんです。しかも哲学とか宗教学とか“自分で考える”学問は権力者にとって邪魔だってことでしょ。本当に意味がわからない。

鳩山 そうですよね。大学の仲間が「大学時代というのは、将来、世の中に出てからでは学べないことや無駄だと思うことを学ぶことに意味があるんだ」と言っていたことがあります。それは一面一理だと思う。必要なことだけを学ぶだけではなく、余裕みたいなものを持つことのほうが大事なんです。

鳩山由紀夫「安保法制は米の戦争のために自衛隊員の命を差し出すもの」

室井 それが出来ていないから、安倍さんみたいな人が出来上がるんですよね。自分以外の他の人のことを想像できない。貧しい人たちや他国の人のことを想像できない。あっ、でも鳩山さんも二世議員じゃないですか!

鳩山 わたしは四世で、向こうは三世だから。一世勝っている(笑)。なんて、それは冗談ですが、私も祖父の鳩山一郎を尊敬していますが、祖父はかなりリベラルな男だったと思います。それに友愛という考え方を説いていました。そんな環境で育ったし、それ以上に私は政治家になりたくなかった。一番やりたくない職業だった。だから安倍さんのように「おじいちゃんより偉くなろう」なんて発想は、今でもどこにもないですね。

室井 鳩山さんのおじいちゃんはロシア外交を一生懸命やったんでしたっけ?

鳩山 脳溢血で左半身不随の身を押して訪ソし、1956年に日ソ国交回復をやり遂げました。もし元気だったら中国との関係改善にも取り組んだと思います。「共産主義は大嫌いだ」と言っていましたが、「大嫌いな俺だから、友好を掲げても大丈夫だろう」と。「好きな人間は危ないけど、警戒の中でやれば大丈夫」と。ただ旧ソ連との国交が回復できたのは良かったと思うけど、逆に言えば、北方領土問題でアメリカから恫喝を受けたわけです。当時、2島返還が主流だったときに、突如「4島じゃなきゃダメだ」とある種の恫喝があったんです。

室井 またアメリカか。アメリカのためなら北朝鮮と戦争して、日本人がたくさん死んでもいいんですか? 本当におかしい。

鳩山 元防衛官僚で元内閣官房副長官補の柳澤協二さんと話したときに思いましたが、外務官僚も防衛官僚も、日本はアメリカと協力していれば安心だと思い込んでいると。その先のことまで考えていない。だから今、室井さんがおっしゃったように、もし北朝鮮をやっつけるためにミサイルを飛ばして相当打撃を与えたとしても、すべてを無にはできないから、日本にノドンが飛んでくる可能性は高い。でも、官僚も政治家も、アメリカ追随で思考停止してしまっているんです。

室井 安倍さんって、海外好きですよね。ちやほやされたくて、海外にお金をバラまいているみたいに感じるけど、それも問題だけど、それ以上に問題なのは安倍さんにとって、わたしたちの命も海外で配るお金と一緒くらいの価値なんじゃないの。そう思うとすごく恐ろしくなります。

鳩山 安保も、集団的自衛権で自衛隊を海外にアメリカの協力で派遣することが出来るようになりましたが、あれもまさにアメリカの戦争のために日本の自衛隊員の命を差し出すということです。本来憲法では、国際紛争のために自衛隊を含めて、戦力は絶対に持たない、絶対に戦力は外には出さない、と約束しているはずなのに、行くようにしてしまったのは、アメリカのためでしょう。

室井 安倍さんの考え方だと、武器輸出と同じで、自衛隊の命も鉄砲のひとつくらいの感覚に思える。でもそれを応援する人がたくさんいる。

鳩山 私は「大日本主義」だと思っているんですけど、かつてのように、植民地支配はあり得ないとしても、「日本は偉い国なんだ。他の国とは違う強い国でいなきゃいけない」「強い国とは軍事的にも強い国じゃないといけない」という思いが安倍さんだけでなく、一定数の国民にもあるのでしょう。

鳩山「民主党を作ったとき私が代表で弟が副代表は間違っていた」

室井 格差が広がり、経済大国から脱落し、社会にも不満だらけで、かつ自信もないから、自分たちが差別できる対象を作り出して差別する。友愛精神に反しまくっていますね。

鳩山 まったく逆です。友愛精神は、絶対にどんな状況でも殴りあっちゃいけないんです。相手の違いを認める上で、戦争は絶対にやってはいけない行為です。ただ、どうも気になっているのは、アメリカも軍産複合体で、軍事力を何年間に一度行使しないと、経済に影響が出る。日本も経済が20年以上もうまくいかない。なんとかこの軍事力で、武器を製造することによって日本の経済を好転させようと思ってるかもしれないということです。それは絶対に考えちゃいけないことなのに、しかし、武器輸出三原則なども緩めてしまった。こんな状況を見ると、人の命よりも経済が大事、株価が大事で、株価を上げる、経済を良くするためには、人の命が失われても良いと思っているのか、とさえ感じてしまいます。

室井 わかりました。お話を聞いていて、鳩山さんと安倍さんの違いは“品”ですね。

鳩山 そうですか(笑)。そう言っていただくとありがたいですけど、そこから出てくる思想も違いますね。

室井 弟さんの鳩山邦夫さんとも一度お会いしたことがあるんです。奥さんと太郎さんもご一緒で、みんなで六本木の中華料理店で食事をして。邦夫さんは先生と似ていないし、外見はちょっとヤクザチックだけど、根っこはすごく品があった。

鳩山 弟は傍若無人だけど、人が好きだった。場を和ませたいとか、自分中心な面もあったけど和やかな雰囲気にさせてやりたいと。そのために私に茶々入れるなどして、ネタの材料にしていました。それはいいと思っていました。そして人間そのものでした。人間のエゴも出ていたけど。彼が突然死んでしまって、わたしは大ショックでした。

室井 人間的な魅力があった方でした。世間では兄弟仲が悪いとも言われてきましたが、本当はどうだったんですか?

鳩山 本人同士では決して仲が悪くなかった。むしろ子どもの頃に仲が良すぎた反動があったのかもしれません。政治家としても進む道、政党が違ったりしましたし。民主党を作ったときに、私が代表になって弟が副代表になった。でもこれは絶対にあってはいけないことだった。彼の方が8年も政治経歴が長いのですから。ただ時の流れみたいなものがあって、弟を代表にできなかった。彼はそういうところが非常に人間的だから、いろんな不満が出たと思います。

室井 でも愛情がある悪口だったよね。邦夫さん。

鳩山 そうだと思います。最近聞いた話では、弟の娘婿が、「しばしば由紀夫さんのことを話しているのを聞いたけど、一度も悪口は聞いたことがない」と言っていたんです。常に子どもの頃の話になって、蝶々をとったり野球をしたり、仲のいいことしか話さなかったと。非常に嬉しかった。だから外向けの顔と実際の内心と違ったと思います。メディアを意識しながら喋るときだってあるわけで、私をテーマにして、「白い鳩、黒い鳩」とかね。正直どっちも同じだけど、あえてそういうことを言うとマスコミも湧きますからね。狙ってやっていたんでしょうけど。わたしは彼が大好きでした。

室井「鳩山さんのお金で『ニュース女子』の逆版をつくって」

室井 そうだったんですね。なんだかしんみり……あっ、肝心の安倍さんの倒し方です! なにかいいアイデアがあればぜひ教えてください。

鳩山 ひとつは、あらゆる政権が倒れるときは、スキャンダルが原因です。まっとうな「この国をどうする!」という議論のなかでは倒れていかない。安倍政権も、モリカケ、スパコン、リニア新幹線も出てきた。JR東海の葛西敬之さんとの関係がどう出るのか。これに検察内部の主導権争いがあると見ていますけど、正確かどうかわかりません。

室井 でも安倍さん、今のところモリカケ問題では逃げ切りそうだし、スパコンやリニアはテレビでは大きく扱われません。ワイドショーでは相変わらず北朝鮮危機を煽ってばかり。だからこそこの政権は異常だと思うんです。マスコミの追求も緩い。あっ、すっごく大切なことを思い出しました。鳩山さんに会ったらぜひお願いしたいことがあったんです。鳩山さんはお金持ちじゃないですか。だったらテレビ番組をひとつ持ったらいかがですか?「ニュース女子」の逆版みたいな番組。

鳩山 なるほどね。どれくらいお金かかるんだろうなあ。

室井 鳩山さんにとったらお小遣い程度ですよ! 今度調べておきますね。今、ネトウヨ番組みたいなのが、地上波でもネットでも氾濫しているんです。でも一方でリベラルな番組は本当に少ない。だから以前、立憲民主党や共産党にも、逆張りの左派系リベラル番組を作ろうと提案して、陳情したんですけど、お金がないし、金持ちスポンサーもいないと。だったら鳩山さん、適任じゃないですか! いいアイデアだと思いません?

鳩山 そんなにたくさんの小遣い持ってませんよ(笑)。ただメディアは確かに重要です。わたしも『UIチャンネル』(世界友愛フォーラム)というインターネット放送を毎週月曜の夜8時から配信していて、230回を超えています。孫崎享さんや高野孟さんとか色んな方に出ていただいています。だから、室井さんの提案は前向きに考えましょう(笑)。

室井 鳩山さんも頑張り続けてほしい。アジア外交を続けてほしいし基地問題ももっともっと発言してほしい。だって近くの国と仲良くすることがこの国が守られる一番有効な手段と思うから。

鳩山 絶対にそうです。

………………………
⚫️前編「室井佑月が鳩山由紀夫元総理と沖縄・米軍基地問題を語る! なぜ「最低でも県外」は実現しなかったのか?」はこちら

鳩山由紀夫 元内閣総理大臣。1947年生まれ。東京大学工学部卒業。1986年の初当選したのち、93年に自民党を離党し新党さきがけ結党に参加。96年民主党を血統し代表に。2009年、第93代内閣総理大臣に就任。政界を引退した現在は東アジア共同体研究所理事長として様々な活動を行う。

室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)などに出演中。連載に「週刊朝日」(朝日新聞出版)、「女性自身」(光文社)などがある。

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