能町みね子が週刊文春の“貴乃花親方ベッタリ”報道に激怒し、文春連載コラムの休載を宣言

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「週刊文春」(文藝春秋)2018年2月8日号

 先週金曜日に相撲協会の理事選も終わり、11月に日馬富士暴行事件が発覚して以来、数カ月に渡ってつづく相撲協会VS貴乃花報道も、ようやく一段落。かと思いきや、ワイドショーは週が明けても貴乃花報道でもちきりだった。

 しかも、コメンテーターたちはこぞって貴乃花落選をくやしがり、「貴乃花が落選したということは、相撲界は改革が必要ないと思っているということだ!」「国民が投票すれば、絶対に貴乃花が勝っていた!」などと、相変わらず相撲協会=悪の権化、貴乃花親方=正義という構図の解説をがなりたてていた。

 まったく開いた口がふさがらないとはこのことだ。本サイトで何度もしつこく書いてきたが、貴乃花親方はけっして相撲協会の不正を糾そうとしている改革の旗手などではない。

 角界の暴力横行や相撲協会の隠蔽体質はたしかに問題だが、それは貴乃花親方周辺にもある。貴乃花部屋でも暴行被害を受けたという元力士の告発証言が相次いでいるし、力士をなんの説明もないまま不可解な引退のさせ方をして、問題を隠蔽したこともある。

 さらに問題なのは、相撲協会で不正をはたらいた人物との関係だ。この人物とは、一時、相撲協会で顧問を務めていたコンサルタントのK氏。K氏は、2012年力士をキャラクターにしたパチンコ台制作を業者と契約交渉中、代理店関係者から500万円裏金を受け取っていたことが2014年に発覚。その後もべつの金銭トラブルもあり2016年1月、八角理事長によって追放される。ところが、貴乃花はこのK氏とべったりで、K氏追放に抵抗。これがきっかけになって、八角理事長との確執が決定的になったといわれているのだ。

 改革派どころか、利権派と目されてもしようがないような姿勢だが、貴乃花親方には、加えて、本サイトで昨日書いた、オカルト新興宗教団体「龍神総宮社」への異常な肩入れの問題もある。

 だが、ワイドショーはこうした問題は一切ふれずに、ひたすら貴乃花親方ヨイショし続けているいや、ワイドショーだけではない。貴乃花のこうした負の部分は本来、週刊誌にとって格好のネタのはずなのに、ほとんどの週刊誌はまったく書こうとせず、逆に貴乃花サイドのリークに乗って、八角理事長や白鵬、春日野親方などを叩き続けている。

 テレビはともかく、ゲリラが本分の週刊誌までが一色に染まっている状況には暗澹とさせられるが、その週刊誌報道にブチ切れたのが、相撲好きで知られるコラムニストの能町みね子氏だ。

 能町氏はこの問題が勃発して以降、ツイッターで貴乃花親方を擁護するだけのマスコミ報道を批判し、貴乃花親方のカルト性にいち早く警鐘を鳴らしていた。また、能町氏は「週刊文春」でも連載コラムをもっており、そこでも同様の趣旨の原稿を書いたこともある。

 ところが、その能町氏が「週刊文春」の貴乃花べったりの姿勢に腹を立て、同誌の連載を休載することを宣言したのだ。

貴乃花親方サイドに乗って一方的な報道を続けた「週刊文春」

 能町氏が連載休載を宣言したのは、2月2日のこと。以下のようなツイートを連投した。

〈来週の原稿をもって週刊文春の連載を当面休載します。〉
〈週刊文春の一部の報道が非常に追従的で、内輪のリーク合戦の片棒を担がされているだけに見え、その情けなさに強く幻滅したため降板を考えましたが、降板では自分の発言機会を失うだけなので、最大限にわがままな休載という形を取りました。復帰の時期(というか復帰させてくれるかどうか)は未定です。〉

 この「週刊文春の一部の報道」が日馬富士暴行事件以降の相撲報道を指しているのは明らかだ。実際、この2日前、31日にはこんなツイートもしていた。

〈コラ文春ボケカス、相撲報道で新潮とまったく同じ路線とってんじゃねーよ腰抜けが。〉
〈ジャニーズだとかレプロだとかにも腰が引けなかったあの体勢忘れたんかボケが。みんなで同じ方むきやがって。めっちゃ腹立ってるぞ。〉

 連載執筆者とは思えない辛辣なトーンだが、能町氏の怒りはよくわかる。「週刊文春」はこの間、白鵬や八角理事長一派叩きの急先鋒を演じてきたのはもちろん、明らかに貴乃花サイド、なかには親方本人をネタ元にしているとしか思えない一方的すぎるリーク報道を展開してきたからだ。

 それは、日馬富士の暴行事件が発覚した直後から始まった。「文春」は11月23日発売号で「キーマンは白鵬…これが密かに漏らした核心だ!貴乃花の逆襲」と題し、トップ特集。暴行事件の背後に白鵬をはじめとするモンゴル力士たちの八百長問題、暴行事件は白鵬が仕組んだもの、などと報じ、その後のマスコミの白鵬バッシングの流れをつくりだしたのだが、この記事で「貴乃花の「肉声」を知る極めて近い関係者」だった。

 その後も同様だ。11月30日発売号の「貴乃花が激怒した白鵬の「暗黒面」」「モンゴル力士が貪る怪しい利権」。12月7日発売号の「「モンゴルの闇に迫る!」貴乃花vs.白鵬「八百長の真実」、12月14日発売号「貴乃花が許せない相撲協会“三悪人”八角理事長、尾車親方、白鵬」「白鵬を勘違いさせた華麗なる人脈」「白鵬に群がる“怪しいタニマチ”」、これらは、記事を読むだけで、貴乃花サイドからの情報で書いているのが丸分かりだった。

 しかも、この露骨さは貴乃花の処分問題が浮上すると、さらにエスカレート。12月21日発売号「貴乃花vs.白鵬・相撲協会 本誌しか書けない全真相 最終決戦へ」が象徴的なように、ターゲットが相撲協会へと向けられていく。

 そして、貴乃花親方と文春の関係が決定的に明らかになったのは、処分が決まる臨時理事会当日の12月28日発売号(年末年始合併号)だった。文春はトップ特集で、「貴乃花激白『相撲協会は私の処分をしたいのならすればいい』」なるタイトルの貴乃花の告白記事を掲載したのだ。

貴乃花が文春の「激白」記事を「しゃべってない」と否定した舞台裏

 ところが、この記事について理事会で問われた貴乃花親方は「取材に応じたことはない」と否定。実際、文春の記事を見てみると、中吊りや目次、タイトルには「貴乃花激白」とうたれていたのに、記事中に出てくる証言者は大半が“親方に話を聞いた関係者”になっていた。

 だが、これは文春が嘘の煽りタイトルをつけたわけではないだろう。じつは、同日発売の新潮も「『貴乃花』が本誌に激白!『白鵬』の正体」というタイトルの特集を打っていたが、やはり記事内の証言者は大半が“関係者”になっていた。ようするに、当初、実名インタビューというかたちで文春、新潮の両誌の取材に応じていた貴乃花親方が、処分が厳しくなるのを恐れて、校了直前になって匿名にするように両誌に申し入れた。しかし、中吊りや新聞広告は差し替えが間に合わなかったため、タイトルはそのままになってしまった。そういうことらしい。

 それを証拠に、処分が決まった後の「文春」1月10日発売号には、「貴乃花を再び直撃 『週刊文春に話したのは事実です。一連の経緯に納得はしていないが、貴の岩は必ず土俵に戻します』」なる記事が掲載されていた。12月28日の理事会では週刊誌に話していないと否定していた貴乃花親方が、一転「話したのは事実」という告白をしているのだ。

 普段、真摯な顔で“相撲道”とやらを説いているとは思えない二枚舌ぶりだが、「週刊文春」の貴乃花べったり姿勢はその後も揺るがず続いていく。1月18日発売号では、「貴乃花部屋の最強DNA 貴景勝父が語る“ガチンコ一直線”」と、もはや事件なんてなんの関係もない貴乃花ヨイショ記事まで掲載。さらに、理事選が近づき、反貴乃花の春日野部屋の2014年の暴行事件隠蔽がスポニチでスクープされると、「文春」も最新号2月1日発売号で「理事選緊迫“貴乃花潰し”の急先鋒 春日野親方「暴力」と「八百長」肉声テープ入手」と、7年前の八百長事件での口止め工作を報じた。

 組織の内紛で週刊誌が対立する一方だけを情報源にするのは珍しくないが、ここまでくると、ほとんど貴乃花親方のPR機関。能町氏ならずとも「情けない」と言いたくなってしまうのは当然だろう。相撲記事を担当したことのある週刊誌記者もこう語る。

「文春がここまで貴乃花親方に肩入れしているのは、雑誌が売れるからというのもありますが、文春の相撲担当が、貴乃花親方と密な関係を築いているからでしょう。実際、角界や貴乃花周辺でトラブルが起きると、文春はほとんどのケースで貴乃花側についてきた。あと、貴乃花親方の息子がイケメン靴職人として脚光を浴びましたが、これも文春のヨイショ紹介記事がきっかけだった。まあ、息子の宣伝くらいならほほえましいレベルですが、今回はちょっと乗っかりすぎですよ。しかも、貴乃花側の問題をまったく書いていないわけですから、不公平といわれてもしようがない」

能町みね子氏には、「週刊文春」だからこそ連載を続けてほしい!

 実際、能町氏は別に相撲協会の主流派を擁護するために「文春」やマスコミを批判しているわけではない。その極端に不公平な扱いや、理事選での政治的な動きにメディアが加担していることに怒っているのだ。

 たとえば、先に紹介したように、理事選直前、スポニチが春日野部屋での4年前の暴行事件をスクープし、続いて文春が春日野親方による7年前の八百長事件口止め工作を報じた直後、能町氏はツイッターで、文春が7年前の事件を大々的に報道する一方で貴乃花部屋の暴行裁判を一切扱わないことに疑義を呈していた

 この貴乃花部屋の暴行裁判というのは、2014年、引退した元貴斗志が貴乃花親方に無理やり引退届を出されたとして、翌年3月、相撲協会を相手取り「地位確認等請求」「報酬の支払い」などを求めて東京地裁に提訴した裁判のこと。裁判はまだ、東京高裁で係争中だが、この裁判の中で、元貴斗志は貴ノ岩から暴行を受けたと主張。また、「夕刊フジ」によると、この裁判では、さらに二人の元貴乃花部屋の元力士が証言台に立ち、貴ノ岩や同じく貴乃花部屋の現世話人である嵐望などの暴行を証言したという。

 春日野部屋の暴行事件については4年前のことを大々的に報じているのに、貴乃花部屋については、現在進行中の裁判で出てきている話にもかかわらず一行も触れない。その姿勢は恣意的と言うしかなく、そういう意味では、能町氏の怒りは極めて正当と言っていい。

 ただ、一つだけ加えておくと、能町氏が連載を休載することには反対だ。マスコミが貴乃花ヨイショ、モンゴル力士バッシングに覆われているいま、能町氏が文春に原稿を書かなくなってしまえば、それこそ貴乃花親方の危険性を指摘する意見がメジャーなメディアでは皆無になってしまう。

 百田尚樹氏の『殉愛』騒動の時、林真理子氏が「週刊文春」連載で、この問題が同誌でタブーになっている状況を批判したが、能町氏もこれから毎号、貴乃花批判、「文春」批判を展開すればいいではないか。「文春」には作家を大事にする伝統があるから、記事を編集部にストップさせられる可能性はそう高くないはずだ。

 貴乃花派の急先鋒である「文春」だからこそ、能町氏が連載を続ける意味があると思うのだが……。

最終更新:2018.02.06 10:00

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