小室哲哉の不倫を報道した週刊文春は悪くない! おかしいのは女性と小物だけを糾弾する世間とテレビだ

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小室不倫を報じた「週刊文春」中吊り広告


 小室哲哉の不倫報道をめぐって、「週刊文春」(文藝春秋)批判が巻き起こっている。文春記事の概要は改めて説明するまでもないが、小室がくも膜下出血の後遺症で療養中の妻・KEIKOを、大分の実家に預け、あるいは自宅に残し、看護師のA子さんと密会していたというもの。ホテルやA子さんの自宅で長時間一緒に滞在したり、KEIKO不在時には小室の自宅にA子さんが泊ったこともあったという。ホテルから腕を組んで出てくる小室とA子さんのツーショット写真なども掲載された。

 ところが、この報道を受け19日緊急会見した小室哲哉は、KEIKOの病状や自らの健康問題について語り男女の関係は否定したうえで引退宣言。すると、会見直後からネットでは文春批判が巻き起こり、週刊文春の公式ツイッターである「文春砲(文春くん)」アカウントに批判コメントが殺到し炎上状態になった。

「文春を許さない」「廃刊しろ」「小室さんを返して」「人の不幸で食べたご飯がそんなに美味しいですか?」「「小室さんという日本の宝を潰しやがって」「小室哲哉の音楽に救われた人はどれだけいるんだろう? 文春の報道で救われた人はいるのだろうか?」「くだらないスクープで日本の音楽シーンの財産を引退に追い込んだ文春は滅びればいい」「日本の財産とも言える才能のある方を潰してどうしたいのでしょうか」……。

 有名人からも、ここぞとばかりに同様の文春批判が殺到している。ホリエモンは「やっとクソ文春のヤバさが大衆に浸透してきたか」「すぐに潰せる」と廃刊まで扇動し、ダルビッシュは文春記者が21日放送の『サンデー・ジャポン』(TBS)にVTR出演し「本意ではない結果になった」とコメントしたことに対し、「他人のプライベートほじくりまわして「本意ではない結果」って本当に頭大丈夫なのでしょうか?」とツイートした。

 しかし、本当に「週刊文春」はここまで責められるべきなのだろうか。本サイトはベッキー騒動の時から一貫して、不倫を断罪する風潮に対して異を唱えてきた。結婚という国家が国民の管理のためにつくりだした制度をタテに、不倫をまるで重大犯罪のように糾弾するのはおかしい、と。

 ただし、不倫を暴いた文春を批判したことは一度もない。文春はたんに不倫という事実を報道しただけであり、芸能人がテレビやCMで自らのパブリックイメージをふりまきビジネスをしている以上、そのパブリックイメージの裏にある素顔を暴こうとするのは当然の行為だからだ。

 この裏を暴くという週刊誌のスキャンダリズムがなければ、私たちは、御用メディアのふりまくパブリシティ報道に踊らされ続け、企業や政治家、官僚の不正も知ることができないままになってしまうだろう。

 では、いったい誰が問題なのか。その答えを意外な人物がつぶやいていた。ゲスの極み乙女。の川谷絵音だ。

川谷絵音は「病的なのは週刊誌でなく世間」と本質を指摘

 川谷はまさにベッキーとの不倫を文春でスクープされ、文春砲ブームに火をつけた当事者なのだが、1月19日23時すぎにこんなツイートをしている。

「病的なのは週刊誌でもメディアでもない。紛れも無い世間。」

 この発言についても「お前が言うな」「文春と手打ちしたからだろう」などと非難が殺到していたが、川谷の指摘は正しい。「世間」こそが、ベッキーを極悪人のように扱い、CM降板、休養に追い込んだ犯人だ。文春はたんに不倫の事実を報じただけで、休養しろとも、CMや番組を降板しろともいっていない。「世間」がスポンサーやテレビ局に一斉に抗議電話をかけSNSを炎上させ、ベッキーは番組、CM降板、休養に追い込まれたのだ。

 しかも、問題なのは、この「世間」の判断があまりに不公平なことだ。ベッキーについてはまるで極悪人のように糾弾していたのに、今回、小室に対しては、同情の声をあげ、逆に「文春」にお門違いの罵倒を浴びせている。

 これにはおそらくふたつ理由がある。ひとつめの理由はズバリ小室が男だということだ。「介護に疲れていたんだから別の女性に救いを求めても仕方がない」という同情論は「子育てや介護は女の務め」「男なのに介護をしていたんだから」という前時代的な偏見の裏返しなのである。

 もし小室が女性だったら、こんな展開にはなっていないだろう。むしろ、小室に対して、介護をほったらかして、という強い批判の声が上がったはずだ。

 事実、子どものいる女性が不倫した場合、必ず「子どもをほったらかしにして」などと叩かれている。

 たとえば、シングルマザーで、完全なワンオペ育児なら、現在の小室と似たような状況だと思うが、それでも女性は叩かれる。つい先日、シングルマザーである愛内里菜の不倫疑惑を16日発売の「女性自身」が報じたが、後追いしたテレビでは「子どもを置いて」旅行に行ったということが、とりわけ非難されていた。

 不倫どころか、ただの恋愛すら非難される。たとえば、「女性自身」(光文社)が昨年10月に報じた「真木よう子 長女を元夫に連日預けて新恋人と“火遊び愛”!」。小学生の長女を元夫に預けて新恋人と連日デートしていると非難する記事だが、後追いしたテレビでも、「子どもを元夫に預けてまで」男と会っていると非難された。言っておくが、離婚したとはいえ、元夫は子どもの父親であることに代わりなく育児を分担協力するのは当然でおかしなことではない。その間に、女性が何をしようと自由だろう。しかも、当時、真木はコミケ参加問題に端を発する炎上騒動で映画まで降板するなど相当弱っていた時期。子どものいないところでグチを話したり相談したいことだってあったはずだ。

 しかし、今回の小室のように「そういう時間も必要」「そういう支えも必要」などの擁護論はほとんどなく、「母親が子どもを預けて…」とバッシングされた。

 いや、介護や子育てがからまなくても、男女間の扱いの差はベッキーや矢口真里、斉藤由貴らの不倫に対する論調と、宮迫博之らの不倫に対する論調を比べれば明らかだろう。

 こう言うと、ベッキーはウソをついたからだなどと反論する人もいるが、ウソをついていたのは宮迫も、そして今回の小室も同じだ。小室は、文春の取材に対してA子さんと「手をつないだり、腕をくんだことはないです」と語っていたが、実際はA子さんと腕を組んでいる写真が文春に掲載されていた。

岡田准一、松潤にはバッシングなし、テレビが決めるバッシング

 まさに不公平を通り越して理不尽としか思えないが、それはもうひとつの理由も同じだ。今回、小室を擁護し、文春を批判する多くのツイッターがこう叫んでいた。

「小室さんは日本の宝なのに」
「小室さんの音楽によって救われた人も大勢いるのに」

 小室が本当に日本の宝なのか、小室の音楽で救われた人がいるのかを議論するつもりはないが、この論理は明らかにおかしいだろう。不倫がダメというなら、性別や地位、業績とは無関係に糾弾されるべきだ。それを功績があるから不倫を報じるな!などというのは、明らかな差別、エリート主義ではないか。

 しかし、この差別的エリート主義は明らかに「世間」の指標にとして機能している。権力者、大物芸能人は何をやっても許され、女性や小物芸能人だけを袋叩きにされる。不倫そのものが問題なのではなく、「誰が不倫をするか」が問題になってしまっているのだ。

 そして、この不公平な扱いをさらにエスカレートさせているのが、テレビだ。芸能人が大々的なバッシングが起きているかどうかは、結局、テレビが後追い報道するかどうかにかかっている。

 しかし、テレビはその芸能人が大手プロダクション所属の場合は、どんな鬼畜行為をしていようが一切報道しない。その結果、バッシングもネットに一部に止まり、本格的な炎上は起きない。たとえば嵐・松本潤の二股報道、たとえば岡田准一と宮崎あおいの不倫報道で、まったくと言っていいほど、バッシングは起きていなかったのも、テレビが一切報じていなかったからだ。

 これと逆だったのが、昨年、成宮寛貴が「フライデー」(講談社)に薬物疑惑を報じられたことをきっかけに、引退に追い込まれたケースだ。

 通常、週刊誌がいくら報道をしても、テレビは逮捕もされていない段階で、芸能人の薬物疑惑を取り上げることは絶対にない。ところが、本サイトでも既報の通り、成宮が所属するプロダクション・トップコートは“芸能界の後ろ盾”の弱い事務所で、しかも、大手芸能事務所の「弱小潰し」の標的にもなっていた。

 そこで、ASKAや清原などの“薬物事件逮捕報道”で味をしめていたテレビ局が、大手芸能事務所の意を忖度して、「疑惑」段階であるにもかかわらず「フライデー」の後追いに踏み切り、大騒動に発展。成宮は引退に追い込まれたのだ。

 しかし一方で同種の疑惑を週刊誌に報じられながら一切批判にさらされなかった人物もいる。08年に「週刊現代」(講談社)は、嵐・大野智の“大麻3P疑惑”を報じたことがあった。記事では、大野とカラオケボックスで同席した女性が、参加者の取り出した大麻を大野が「面白いねぇ~」と言いながら楽しげにそれを吸ったこと、その後、カラオケボックスを出て女性2名と3Pとなったことなどを告白。しかも、大野があきらかに“イってる”目つきで女性と写っている写真も掲載され、その内容はある意味、「フライデー」の成宮記事よりも生々しいものだった。

 だが、このとき、大野の大麻疑惑を報じたテレビ局は一社もない。スポーツ紙も東京スポーツのみが後追い記事を出しただけだ。もちろん、「週刊現代」が出たあとも、大野がテレビ出演を見合わせるなんてことは一切なかった。

 これは、清原のケースでもほとんど同じだった。「週刊文春」が覚醒剤使用疑惑を暴き、警察が内偵を続けているという情報がマスコミで流れても、テレビ局は清原がバーニング系の大手芸能プロダクション・ケイダッシュの“所属扱い”だったことから問題視せず、『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)をはじめとして清原を番組に出演させてきた。

 こうしたケースと、たかだか不倫であそこまで血祭りにされたベッキーのケースを比べれば、問題が週刊誌報道にあるわけでないことは明らかだろう。「週刊文春を廃刊しろ」などとヒステリックに叫ぶことは、むしろ国民の知る権利を阻み、強者は何をやっても許されるファシズム的空気を助長することにしかならない、ということを強く主張しておきたい。

最終更新:2018.01.23 01:41

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