音楽教室からの著作権料徴収問題でJASRAC会長の詭弁がヒドい! 松山千春も批判していたJASRAC最大の問題点

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一般社団法人日本音楽著作権協会JASRACホームページより


 日本音楽著作権協会(JASRAC)の強権的な運営をめぐる炎上騒動がひっきりなしに起きている。いくつかある問題のなかでも一番大きいのは、やはり、音楽教室での演奏にも著作権料を徴収するとの方針を発表した件だろう。今年の2月にJASRACがこの方針を示して以降、この問題に対する議論が紛糾した。

 6月20日には、ヤマハ音楽振興会、河合楽器製作所、山野楽器、島村楽器など247事業者と全日本ピアノ指導者協会、日本弦楽指導者協会が「教室での演奏に著作権は及ばない」として、JASRACを相手取った訴訟を東京地裁に起こしている。

 そんななか、JASRAC会長で作詞家のいではく氏が「週刊文春」(文藝春秋)2017年7月20日号の取材に応じているのだが、これがまたひどかった。この問題について記者から「音楽文化の根っこを弱らせると批判されている」と質問されると、彼はこのように答えたのだった。

「音楽文化の振興を、JASRACの徴収が阻害するみたいな考え方はおかしいでしょうって! 逆に言えばね、教室の方が積極的にそういうこと(著作権)を教えてクリエイターを増やし、日本のいい楽曲をたくさん生んでいくことが、やっぱり音楽文化の振興に必要なんじゃないかと思いますけどね」

 確かに、プロの音楽家を目指す人たちに著作権ビジネスを教えることは有意義なことだろうが、しかし、この答えはどう考えても詭弁以外のなにものでもない。

 JASRACの方針に世間が反発している理由、それは、音楽文化の普及、教育を阻害するものだからである。

JASRAC会長が「音楽教室の生徒の大半は大人」とトンデモ反論

 それは、JASRACに著作権を預けている音楽家の意見でもある。たとえば、宇多田ヒカルはツイッターでこのように語っていた。

〈もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな〉

 Wink「淋しい熱帯魚」や高橋洋子「残酷な天使のテーゼ」などで知られる作詞家の及川眠子も、宇多田ヒカルと同様の意見をツイッターに綴っている。

〈JASRAC正会員の一人として。私は「営利を目的とする場」での演奏であるなら、当然楽曲の著作権使用料は払うべきものだと思う。だけど、音楽教室で「練習のために」弾いたり歌ったりするものから、使用料をもらいたいと思ったことなどない〉
〈音楽はタダではない。違法ダウンロードなど著作権を侵害するものに対してはもちろん厳しく取り締まってほしい。だけど、音楽を学びたい、いつか音楽の世界で花を咲かせたいと願う子供たちには、自由に楽曲を使わせてあげてほしい。それが今の私たちにできる、未来の音楽への恩返しだ〉

 しかし、こういった意見に対し、前掲「週刊文春」の取材でいではく会長は、このように答えた。

「私どもは、決して子どもさんからお金をいただこうと思っているわけじゃなくて、あくまでも営利目的の事業にペイメントをお願いしているんです。現に楽器教室なんかも全部子どもさんで成り立っているわけじゃなくて、子どもさんはほんの一部。大半は大人であったりしているわけです」

 確かに、音楽教室に大人がいないとは言わないが、「大半は大人」という説明にはどう考えても違和感しかない。しかも、仮に生徒が「大人」だったとしても、大人たちが楽器を習うことは、音楽文化の裾野を広げていくことに大きく寄与するはずだ。

 ようするに、JASRAC会長の頭のなかはいかに金をふんだくるかだけで、音楽文化の普及などという観点はまったくないのである。

京大の入学式の式辞にまで著作権料を要求する不見識

 そもそも、JASRACが社会貢献や教育に価値をまったくおいていないことは、先日起きたもうひとつの騒動をみても明らかだろう。

 京都大学の入学式においてなされた山極壽一総長の式辞に、ボブ・ディランの代表曲「風に吹かれて」の歌詞の一部が引用されているとして、JASRACが大学側に対し楽曲使用料が生じると指摘したのだ。

 この件に関しては、多くのメディアに取り上げられて問題とされた結果、JASRAC側はあくまで引用の範囲内であるとして徴収はしない方針を示すのみに終わったのだが、この騒動は、JASRACが日頃からとっている強引な徴収のやり口を我々に認識させた。

 しばしば「ヤクザ」などと揶揄される通り、JASRACはこれまでも強引なやり方で常に徴収の手を伸ばし続けてきた。その手法は度々問題となっている。

 たとえば、JASRACは新入社員や委託したスタッフを動員して、日本全国津々浦々のカラオケスナック、ジャズ喫茶などの小規模の個人商店まで一軒一軒しらみつぶしにまわり、音楽を流していたりカラオケ機器を置いていたりといった様子を確認し、使用料を徴収している。

 その徴収に事業者が応じなかった場合、JASRACは裁判所を通して支払いを迫る。2015年に、171事業者258施設に対し一斉に民事調停を申し込んだ件は大きな話題となった。しかしそれのみならず、結果的に逮捕にまでいたるケースもある。07年にはバー営業の延長でライブ演奏を提供していた飲食店の店主が逮捕されている。この件では店主がJASRAC管理下の曲を演奏していたこともあり店側に一切の非がないというわけではないが、この件で請求されていたのは過去10年分840万円にもおよび、小規模の飲食店に対しこの多額の著作権使用料を請求することに正当性があるのかどうかには疑問が残る。

 今月11日には、著作権を管理する楽曲を店内BGMとして無断使用し権利を侵害されたとして、札幌市と高松市の事業者に対し使用差し止めや損害賠償を求める訴訟を起こした。楽曲の使用差し止めなどを求めて提訴されたのは初めてであるという。報道によれば、全国の同様の事案に対して、今後も民事訴訟を含めた方法で解決を図りたいとしているとのことで、同じようなケースは今後も増えていく可能性がある。

JASRACのやり方には、かつて松山千春も不満の声をあげていた

 JASRACがこれだけ強権的な姿勢を貫き続けてきたのは、やはり、日本には著作権管理団体がJASRAC以外なかったということが大きい。01年からは他の事業者の参入も認められてはいるが、現在でもJASRACが9割以上のシェアを独占する状況である。

 こういった状況には、当の著作権者のなかにも不満を募らせる者が多くおり、たとえば、松山千春は「週刊プレイボーイ」(集英社)1998年5月19日号のなかでこのように語っている。

「日本音楽界の不幸は、欧米には著作権管理団体が2つも3つもあるのに、日本にはJASRACひとつきりってことだよ。いくつもあればアーティストのほうも著作権の委託先を選べるだろ? こっちのほうがしっかりしているとか、パーセンテージが高いとかって」

 日本国内で著作権管理を行うことのできる法人が長らくJASRACしかなかったのは、国が音楽分野における著作権仲介業務をJASRAC以外に許可しなかったからであるが、前述の通り、01年に参入規制を緩和した著作権等管理事業法が成立したことで、他の民間の会社も著作権管理事業に参加することができるようになった。

 同業他社の参入により競争原理が働くことで、手数料の引き下げや、新たなビジネスの創出が期待されたのだが、結果として起こったのは、競争ではなく、JASRACによる既得権益を守り続けるための妨害工作だった。

 妨害工作はいかにして行われたのか? それは「包括契約」という業界の慣例を悪用したものだった。

「包括契約」とは、「どの曲が何回放送されたか」などを1曲ずつ正確にカウントして楽曲使用料を算出する方法をとらず、放送局がJASRACに月単位、または年単位で一括して払うことにより「JASRACに登録されている曲はすべて使用可能」という許諾をとる方式である。つまり、JASRACがこの契約システムを変えないかぎり、放送局はJASRAC以外の著作権管理会社に登録されている楽曲を使用するごとに追加の使用料が発生することになる。

 そこで当然起きるのは、JASRAC以外が管理している曲は面倒だから放送しないという動きである。なぜなら、JASRACは市場の90%以上を独占しており、JASRACに登録されていない曲を締め出したところで、放送局側は特に不便はないからだ。

同業他社を締め出して独占禁止法違反の判決を受けたJASRAC

 こういったJASRACの状況に異議申し立てをし、独占禁止法違反の判決を引き出した著作権管理事業会社のイーライセンス(事業統合により昨年2月よりネクストーンに改称)の三野明洋取締役会長による著書『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』(文藝春秋)には、ラジオ局の内部でこんな文書がまわっていたと綴られている。

〈たとえば、J-WAVEが番組担当者あてに配布した「イーライセンス社 放送使用楽曲の管理業務開始のお知らせ」には、わざわざ丁寧に【選曲時のお願い】として、「前述のとおり、別途報告・支払いなど煩雑な作業が発生します。 *やむをえない場合を除いて、当面は極力使用を避けるよう、お願いします」と付け加えてあった。
(中略)
 さらに、FM NACK5という埼玉の放送局にいたっては、〈楽曲オンエアの制限について〉として、大塚愛、倖田來未、Every Little Thingなど具体的にイーライセンスが管理するアーティスト名と作品名の60曲リストを添付し、「オンエアを当分見合わせることに致します」としたのは決定的だった。後日、裁判では大きく問題視された〉

 12年に、JASRACと音楽業界のあり方に疑問を抱いた作曲家の穂口雄右氏が、自身で作詞と作曲と編曲を手がけたキャンディーズの「春一番」、「夏が来た!」をJASRACの管理下から外し、自身で管理することを発表。これにより一部のカラオケ会社で配信が停止になる騒動があったが、これも「包括契約」の制度ゆえに起こったことである。

「ミュージック・マガジン」17年4月号では、JASRACをめぐる最近の現象について、〈JASRACが徴収対象を広げてきた背景には、CDのセールスの落ち込みにより、レコード業界からの著作権収入が減少したことがあるとされる〉と説明されていた。

 実際その通りであることに疑いの余地はなく、であれば、今後CDのセールスが回復する見込みなどない以上、新たなビジネスを創出することで対処するしかないはずだ。ただ、それは音楽教育の分野を狙い撃ちして未来の芽を潰すような焼畑農業的なものであってはならないだろう。

 CDを購入して音楽を聴く時代はとうの昔に終わりを告げ、今やデジタルダウンロード販売の時代すら過ぎ去りつつある。今後はいま以上にApple MusicやSpotifyのような定額制ストリーミングサービスで音楽を聴くのが当たり前の時代になっていくのは間違いなく、そのように激変する時代だからこそ必要な著作権管理があるはずだ。JASRACは未来を見据えた運営をするべきだろう。

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