室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第6回ゲスト 小林節(後編)

小林節が「安倍政権を倒すためには、まず民進党を潰さないと!」と衝撃発言! はたして室井佑月の反応は…

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大反響!小林節と室井佑月の熱血対談、後編をお届け


 憲法学者・小林節氏を迎えてお送りしている室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」。前編では、安倍首相の改憲案の危険性、さらには「安倍政治は王制の再現」という鋭い分析まで飛び出した。
 後編ではいよいよ安倍政権をどう倒すかというところに話題の焦点がうつったのだが、小林氏から「安倍政権を倒すためには、まず民進党を潰さないと…」と驚きの発言が! その真意とは……。

●日本国憲法と安倍政権が復活を狙う明治憲法の最大の違いは、個人主義か全体主義か

室井 いまの日本は安倍さんによる貴族制、王制だという先生の話はすごく納得がいきました。だから、あんな横暴が平気でできるし、国民の自由や人権をさらに制限しようとする。ようするに、俺たち特権階級のやることにさからうな、という話ですよね。憲法だって、最初に先生がおっしゃったように、本来、権力者を縛るためにある憲法を、国民から自由を剥奪するものに変えようとしているわけだし。

小林 彼らの発想は、「大日本帝国は良かった」なんです。私は、安倍さんのお祖父さんの岸信介さんが生きているとき、一度会っているんだけど、まさに「明治憲法が正しい」という考えの持ち主でした。岸さんは、大日本帝国のスーパーエリートで東大を出て内務省に入った後、満州国設立の際に総務部司長に就任。日本の中国進出の中心的役割を担った。太平洋戦争が始まると、商工大臣として戦争の物資調達を担った。ところが、岸さんが敗戦で何を思ったかというと、すべての責任者は東條英機である、と。自分は正しかったが、軍部のせいで負けた、というもの。そして、自分はアメリカと裏取引をして生き延び、戦後、公職追放解除されると、自主憲法期成議員同盟を作って、総理をやめた途端にその会長になった。その主張は一貫して「明治憲法は正しい」です。日本国憲法と明治憲法の決定的な違いは、個人主義か全体主義かです。今の憲法は、「この世の中で一番尊いのは、個性の違う私たちひとりひとりなんですよ」ということ。たとえば、女性が3人いると、「全員天皇陛下好みにならなきゃいかんよ」というのが全体主義。北朝鮮の「美人」軍団がいい例です。殿様好みの容姿になれ。これが全体主義。ところが個人主義は女性が3人いたら「3種類の美しさがある」ということになるんです。

室井 そのたとえは、女性にはなかなかぐっときますね(笑)。でも、安倍政権の考える改憲が全体主義だという怖さがあまり国民には伝わっていない。私なんかでも“権利と義務はセットだから”なんて言われると、一瞬そうなのかなって思っちゃいます。でも、それはおかしいってことですか。

小林 そう、おかしいんです。たとえば、僕が室井さんにお金を貸したとしますよね。あなたは債務者で、私は債権者でしょう。この場合、権利は僕にしかなくて、義務は室井さんにしかない。僕にとって“権利と義務はセット”なんかじゃないでしょう。憲法もそれと同じで、もともと国民の権利と国家の義務を規定するものなんだから、セットになるはずがない。でも、安倍さんや櫻井よしこさんみたいな安倍さん周りの改憲論者はそういう基本的なことがわかってないんです。

室井 そういえば、先生は櫻井よしこさんを憲法問題でやりこめちゃったことがあるんですよね。

櫻井よしこら改憲勢力が語る“権利と義務はセット”論のデタラメ

小林 櫻井さんがデタラメばかり言うからです。以前日本青年会議所のパネルディスカッションで一緒になった際、櫻井さんはこんなことを言い出したんです。「憲法は“権利”が19箇所、“自由”が6箇所も出てくるのに“責任”は3つしかない」と。つまり義務と権利のバランスが悪いから日本は個人主義的になってしまった。だから義務を増やすべきだと言うんです。たとえば「国を愛する義務」や「国防の義務」「国旗に敬礼する義務」などを義務化すべきだと。それに対しもちろん反論しました。法律には総論と各論があり、総論はすべての各論に適用される。憲法12条と13条に総論として「公共の福祉」があり、各条が認める権利に制限を加えている。しかし納税、勤労、教育は国家存続に不可欠なので、国の責任として例外的に3つの義務を課しているのだと。数だけで権利と義務のバランスを語るのはナンセンスです。私は彼女にこうも言いました。「憲法というのは、国家権力から国民の権利や命を守るためのものなんだ」と。私たちの国では国民が王様だから、国を支える3つの義務以上を課すと、憲法じゃなくなるんです。

室井 なるほど。国民の権利は最大限に、義務は最低限に、というのが憲法のありようなんですね。櫻井さんは先生の話にどう反応したんですか?

小林 顔を真っ青にして、目も合わせないで、私を無視して帰りましたよ。しかも、その後も櫻井さんは、間違った憲法論をいろんなところで話している。
私の弟子で、安倍さんに愛されて止まない長島昭久(衆議院議員)くんの政治資金パーティーで、櫻井さんが挨拶していたんですが、以前と同じ3つの義務について話しているんです。「みなさん、憲法はおかしいじゃないですか。権利と義務はともなわなきゃいけませんよね」と。僕は、長島くんに恥をかかせちゃいけないと思ったし、そこでは質問も反論もしないでおこうと黙って聞いていた。すると、演説が終わったとたん、彼女、階段も使わずに演壇からポーンと飛び降りて、一番前の真ん中の僕が座っている前まで来て、「先生、お久しぶり! 私、次があるから失礼します」と言って、パっといなくなったんです。僕に何かを言わせる機会を与えず、逃げたんですよ。昨年も『週刊朝日』で僕と櫻井さんの対談企画があったんですけど、前日に編集長の元に電話があって、「小林さんの書いたものを色々と読んだけど、とうていご一緒できませんわ」と断ってきたそうです。

室井 敵前逃亡か。でも、そういう無知で、戦前の日本を復活させたいと思っている人たちが安倍さんの最大のブレーンで、日本会議の改憲運動を担っているわけだから、彼らの改憲が、自衛隊の追加条項や教育の無償化で終わるわけがないですよね。最近、言わなくなっていますけど、直前になると、緊急事態条項を憲法に盛り込むとか言いだしそうな気がしてるんです。

小林 緊急事態条項については、ふざけんな、ですね。緊急事態条項は災害時に政府に大幅な権限を与えて、人権保障を停止するというものですが、その必要がないことは、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本大地震の体験で、はっきりと結論が出ています。消防も不要だと言っていますし、日弁連で報告書も出ています。本末転倒です。震災時に問題なのはまったく逆で、国に権限が集中しているから、中央集権だから、地方も、役人というのは法律と予算の範囲内でしか動けない、ということなんです。いちいち国にお伺いをたてているうちに、どんどん被害が広がっていく。だから、災害対策を本当に真面目に考えるなら、災害対策基本法等を改正して、国の権限を制限して、それぞれの基礎自治体、市区町村に全権を与えることなんです。自治体が首長に全権を集中するスイッチを作っておくことと、国は何かを求められたら人的物的バックアップをする。そうした法律の整備で済むのです。

室井 熊本大地震のときも、余震が怖くて屋外に避難していたのに、現場を知らない政府が、避難者を屋内に退避させろと言って大ひんしゅくを買ったり、県が支援要請しても最初は政府はそれを拒否したり。ちぐはぐで、馬鹿みたいな命令をしていました。緊急時だからこそ、政府という大きなくくりでなく、自治体に権限を集め、国はそれを支援する。それでいいということですよね。

小林 しかも、緊急事態条項は、災害が起きた際に、総理大臣が行政権に加えて、法律を内閣の権限で変えられる、つまり立法権を持つというものです。そうなれば、次には、その法律を執行する裁判所にも影響をするから司法権も持つことになる。それから国会の持っている財政権も持ってしまう。そして一般国民や地方自治体はその命令に従う。まさに独裁体制です。

育児も介護も家族だけに押し付ける家族条項は、福祉国家の否定

室井 あの条項を普通に読んだら「災害が起こったら、お前らの貯金没収な! ひゃっほう!」って言われている気がしました。大地震や戦争など有事があったら、いろいろな権利や人権まで制限されたり、貯金だけでなく家とかも取られちゃうんですよね? 

小林 僕はそこまで考えていなかったけど、言われてみればそうですね。そういう発想が大事ですね。

室井 あと気になるのは、家族条項です。“家族は助け合え”なんて国に言われたくないし、それぞれ事情があるもの。育児放棄やDV、性的虐待をする親だっているでしょ。それなのに親が歳とったからって子どもが養えって、ありえない。介護も家族にだけ押し付けて、自己責任だと言ってるってことですよね。国が国民に金を使いたくないんだな。

小林 福祉国家の否定ですね。それと、やっぱりさっき言ったように、彼らの目的は「大日本帝國憲法の復活」だから、戦前のような家族に戻したいんでしょう。

室井 狂ってますよ。でも、共謀罪のやり方を見ていると、このままいったら、本当に改憲ってことになってしまう。そんなおかしな安倍政権を倒すには、先生、どうしたらいいんでしょう?

小林 現在の政権下で起こっている根本的な問題は、今の選挙制度のせいで、たかだか4割の得票率で7割の議席を取っているということです。でも、これは、逆に、こちらも4割の得票率で、政権を倒す可能性があるということ。絶対に超えられない壁ではない。ただ、そのためには、野党がまとまらなければならない。そして、野党がまとまるためにはまず、民進党を潰さなきゃいけない。潰れたらどこかに寄っていくしかなくなりますから、政策での再編も可能です。

室井 私、選挙の度に毎回、民進党とかイヤだけど、鼻つまんで投票してますよ。でもだんだん、もう無理じゃね? と思ってきて。最近は分裂させた方がいいんじゃないかと。まさか先生も民進党を潰したほうがいいと思っているとは……。

小林 前回の参議院選挙で、民進党を潰さないと野党をまとめることはできないと痛感しましたね。

室井 そういえば、先生、前の参院選で出馬したんですよね。出馬の前には民進党や共産党に野党統一候補の擁立を働きかけていたのに、結局、民進党に野党の比例代表の統一名簿を作ることを拒否されて。

小林 そう。こっちは野党をまとめようとしているのに、それぞれの党が私に「自分のところの候補者になれ」と言ってきた。それは違うでしょう。まとめようとしたのだから、まとまってくれよ、と。でも無理でした。しかも選挙中には全国で野党に罵倒されましたが、選挙が終わると、今度は全野党から「ごめんなさい。よろしく」と言われて。態度がコロッと変わった。

室井 そんなの、絶対に許しちゃダメですよ。

小林 本当に身の毛もよだつ汚わしい世界でした。ですから、選挙には二度と関わりません。ただ、憲法学者ですから、一番知識を持っているし論争もしてきた。憲法問題について聞かれれば語ります。そして室井さんの言うことは正しいんです。どこかから、風穴を開けなきゃいけない。野党もこのままいくとジリ貧だという自覚もあって。地殻変動は起きているんです。

室井 本当ですか? 野党共闘は口だけなんじゃないかって思っちゃいます。

小林 だから、内心で一番傲慢な民進党を潰すんです。選挙にチャレンジして落選した僕が言うのもなんですが、その疑いは持っていてください。それで、彼らを罵倒しながら、安倍政権を倒す方法を探る。

民進党は、“市民に寄り添う派”と“寄り添わない派”にとっとと分かれろ!

室井 そう考えても今のこのふわふわ浮ついた感じで、そのときだけ風の流れで、「この政策は反対にしてみよう」「こういうふうに動いてみよう」という民進党をバラけさせる必要がありますね。この連載でも何度か言ってるんですが、都知事選のときの小池百合子のように、民進党の中で市民に寄り添う派とそうでない派に別れ、大げんかする演出をしろと。そのほうが、テレビで扱ってもらえるじゃないですか。

小林 それ、いいと思います。

室井 本当ですか! 最初は内輪の揉め事でも、テレビの人って民進党にあたりがキツイから、揉めてるとなると絶対に撮りにくるはずなんですよ。

小林 民進党はまとまるフリをするからね。自民党系の民進党Aと、社会党系の民進党Bにとっとと分かれるべきです。自民党系さえでていけば、反安倍軍国主義政権という点では一致できる。

室井 でも、早く別れてくれないと、来年いざ選挙の時期になったら、また前回の都知事選のようにグダグダになる。だからどんどん批判して追い詰めましょう(笑)。

小林 室井さん、話をしていてすごいなと思う。使っている言葉も間違っていないし。室井さんと話して、「もっと教養があればいいのに」なんて一度も感じなかったですよ。ちゃんと勉強してる。勉強した人間とそうでない人の差は、安倍さんなんか見ているとよくわかるんです。

室井 ありがとうございます! そんなこと初めて言われました。わたし高卒だけど、でも大人になってから勉強するのは好きになって。じゃあ、褒められたついでに、ひとつお願いしていいですか? 先生の教え子や、お弟子さんとかって、英語が出来る人が多いでしょ? そういう人を紹介してくれませんか。というのも、最近、国内で声を上げても無理じゃないかと思い始めて。それを報道する人もいないですし。この前、日本の共謀罪に対して国連の特別報告者が懸念を示したじゃないですか。だから、国連や、海外メディアに「日本はこんなひどい状態だ」ってことを、ガンガン英語にして手紙を書いて送る。それって、ひとつの手だと思うんです。しかも、先生のような著名人や高名な学者が代表で送る。それを海外メディアから逆輸入して、指摘、報道してもらう。そうなれば日本のマスコミは無視できない気がします。

小林 外国に発信するのは、ひとつの方法としてありだと思います。なぜかというと、日本の権力側も非権力側も、外圧に弱い。たとえば「ジャパン・ハンドラーズ」という日本を食い物にしているアメリカ人に、与党も野党もさからえない。その点、私はアメリカで仕事をしてきたから、「それは間違っている」と、別のチャンネルでアプローチできる。

室井 今、国連は影響力が低下したなんて言われていますが、報道の自由に関して国連報告者のデービッド・ケイさんが調査するため来日した際、政府の妨害にもかかわらずフリーのジャーナリストなど言論の関係者が協力しました。それで古賀茂明さんへの圧力や、高市早苗総務相の「電波を止める」発言が海外でもクローズアップされて。海外から日本のメディアにプレッシャーがかった。そういうことをどんどん増やしていく、もうそれしか方法はないんじゃないかと思っているんです。でも、あたし、英語がまったくできないから。グーグル翻訳ソフトで日本語から英語に翻訳しても意味不明だろうし(笑)。そういう活動をしてくれそうなお弟子さん、いないですか? 暇こいてて、それでいて英語ベラベラみたいな。

小林 確かに私の教え子は、企業、政界、官界、メディアにも沢山います。でも私が政治批判をしたり、日米問題や沖縄問題をメディアで発言すると、「こういうこと言わないでくださいよ」と電話で苦言を呈してくる官僚もいる。悪魔の手先のようなやつもいっぱいいるんです。あっ、でも、いるいる! 誤解されて会社辞めて暇こいている元教え子。英語の達人ですよ。今度ぜひ紹介しましょう。

室井 やった、英語の達人! この作戦でいっしょに安倍王政を倒しましょう!
(了)


小林 節 憲法学者、慶應義塾大学名誉教授、弁護士、1949年生まれ。元ハーバード大学研究員、元北京大学招聘教授であり、テレビ論客としても知られる。2016年には安倍政権の安全保障関連法廃止や言論の自由確保、憲法改正阻止などを掲げ「国民怒りの声」から出馬するも落選。その後も「小林節が斬る!」(日刊ゲンダイ)連載などで安倍首相を批判し続ける。『小林節の憲法改正試案』(宝島新書)、『白熱講義! 集団的自衛権』(ベスト新書)、『憲法改正の覚悟はあるか――主権者のための「日本国憲法」改正特別講座』(ベストセラーズ)など著書多数。

室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『あさイチ』(NHK)などに出演中。

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