室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第6回ゲスト 小林節(前編)

室井佑月と小林節が安倍首相の改憲案と詐術を徹底批判! 安倍政治は法治国家を“殿様の私物”にする

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安倍政権の画策する改憲プロセスや強権的な国会運営に疑義を呈する室井佑月と小林節。


 都議選の歴史的大敗、内閣支持率の低下にもかかわらず、予定通り秋の臨時国会に自民党の憲法改正案を提出する、と明言した安倍首相。独裁と政治の私物化を「反省」するどころか、逆に憲法改正を使って、自分の疑惑を隠し、政権延命をはかろうとしているらしい。
 となると、黙ってないのが、われらが室井佑月だ。都議選前から「安倍政権が弱ってるとかいって油断しちゃだめだよ、次は絶対、改憲を仕掛けてくるから」と警戒。憲法学者・小林節氏との対談を提案してきた。
 小林氏は改憲論者でもともとは自民党のブレーン的な存在でもあったが、ここ数年、安倍政権の解釈改憲や改憲の動きを徹底批判している。
「安倍さんの姑息な改憲扇動に対抗できる方法を小林先生に教わりたい」という室井と、「立憲主義をわかっていない安倍政権下での改憲は絶対に許しちゃいけない」というのが持論の小林氏の対談。前編は、安倍首相が打ち出した憲法9条への自衛隊明文化から、加計学園問題、共謀罪にまで話が及び、二人の口からは安倍政治の本質をつく辛辣な分析も飛び出した。
 安倍首相の改憲に危機感をもっている読者はぜひ、じっくり読んでほしい。

●歴代自民党政権で憲法をここまで軽視する総理大臣はいない!

小林 室井さんに会うのは2度目ですが、そんな感じがしないですね。というのも、家内の口から室井さんの話題がよく出てくるんです。「室井さん、いいよね。言ってること正しいよね」って。私も自分で責任が取れる範囲内で好きなことを言っていますけど、室井さんはああいう敵だらけのなかでも、自分の意見をきちんと言い切っているから、偉いと思う。

室井 ありがとうございます! でも、最近は批判や罵倒ばかりされているから、褒められると何かウラがあるんじゃないかと疑っちゃう(笑)。で、今日は小林先生に、憲法について、いろいろ教えてもらおうと思ってやってきました。安倍政権になって憲法改正の動きが一気に進み始めてから憲法について考えるようになって。少し勉強もしたんですけど、なかなか難しくて。

小林 少しでも興味をもって勉強したのは、安倍さんのおかげですね(笑)。確かに教育に携わる身として、大学が憲法教育をきちんとしてこなかったという反省があります。それ以上に小中高校の教師がきちんと憲法を教えていない。ですから「憲法9条は大事」と言いますけど、どこがどう大事か、多くの人がわかっていない。また「権力者は憲法を守れ」というのは当然の原則なので、これまではあえて説明する必要もないと思っていました。でもそれではダメなんですね。当然の原則さえも理解できない安倍政権 や“安倍教の人々”が改憲を叫ぶ。授業でもっと立憲主義を強調しておけばとよかったと反省もしています。

室井 先生でも反省するんですね(笑)。でも、先生は以前、改憲論者だったんですよね。

小林 いまも改憲論者ですよ。しかし私の改憲は“まっとうな”改憲です。憲法は、国民が幸福に暮らすことを国家が阻害し暴走しないように定める規範です。そして現行憲法は非常によい憲法です。しかし戦争ができないはずの平和憲法9条のもとで、安倍政権は海外派兵を許す安保法制を成立させてしまった。その反省から、権力の暴走を許さないための改正は必要です。つまり国民が幸福になる改正なら歓迎しますが、しかしいまの安倍政権下ではダメです。自民党が出している改憲草案は、国民を戦争に駆り出し、表現の自由を奪い、大衆を貧困に貶めるもので、“改正”ではなく“改悪”です。憲法は国民が権力者の暴走を抑止するためにあるのに、安倍さんは、それを逆転させ“国民を管理統制する”ものに変えようともしている。それは絶対に潰さないといけない。

室井 私も含めて国民が憲法についてもっと興味をもっていれば、ここまで安倍政権が憲法を無視することも、改憲に突き進むこともできなかったかもしれない。でも、憲法をここまでないがしろにしている総理大臣って、ちょっといないですよ!

小林 それはそのとおりです。安倍さんの前までの歴代自民党政権は、「憲法は嫌いだけど守る努力はする」という姿勢でした。ところが安倍さんは「私の使命は憲法改正」と自己陶酔しきっていて、現行憲法を壊すかことしか考えていない。しかも手段が姑息なんだよね。簡単には改憲できないとの自覚があるから、最初は「手続きだけで、内容には触わらない」と第96条の改正手続きのハードルを下げようとした。その後は「いいじゃん、現行憲法なんて無視すれば」というスタンスで、集団的自衛権行使の海外派兵ができる、安保法制を強引に成立させた。

9条自衛隊明記案に騙されるな! 日本会議と安倍首相の狙いは交戦権復活

室井 あと、緊急事態条項の創設をぶちあげたこともあるし、いまは憲法9条1項2項をそのままに、3項を追加して自衛隊の存在を明記するとか言いだしてるでしょう。加計学園問題で少し大人しくなるかと思っていたら、逆で、疑惑をごまかすために秋の臨時国会に自民党の改憲案を提出するとか言い出した。

小林 3項追加は安倍さんらしい詐欺的なやり口ですね。戦争をするためには軍隊という道具が必要で、国際法では軍隊は認められているし、国家の責任において交戦権を行使する際には、宣戦布告かそれに変わる行動をすることになっている。しかし日本は9条2項で「軍隊をもたない」「交戦権を認めない」ことを規定し、「戦争に参加できない」という縛りを自らにかけたんです。ところが、安倍さんはそれをそのままにして、自衛隊を明文化するという。完全に矛盾しているし、狙いが憲法9条2項の「戦力の不保持」の骨抜きにあるのは明らかでしょう。

室井 だいたい3項追加って、安倍さんの考えじゃなくて、日本会議のお偉いさんの伊藤哲夫さんのアイデアなんでしょ。伊藤さんが去年、自分のシンクタンクの機関誌で安倍さんが今回、提案したのとまんま同じ提案をしていたらしいじゃないですか。しかも、「護憲派に揺さぶりをかけるため」と本音も書いていて、その少し後には、伊藤さんのお弟子さんみたいな人が、同じ機関誌で「自衛隊を明記した第三項を加えて二項を空文化させる」とか、9条骨抜きが目的であることを宣言しちゃっていたみたいだし。

小林 伊藤氏が提案していた3項の追加案は「但し前項の規定は確立された国際法に基づく自衛ための実力の保持を否定するものではない」というものだったが、安倍さんも同じようなものを想定してるんじゃないかな。で、国際法で認められている範囲だから、という理由で、自衛隊の活動をどんどん広げて、事実上、交戦権を認めるところまでいってしまおうという戦略でしょう。

室井 とにかく、なんでもいいから改憲して、国民の抵抗感を取り除いて、将来、基本的人権や平和主義までつぶす布石にしようと思ってるのが見え見えですよね。3項追加と一緒に言い出した教育の無償化もそうでしょう。本当に卑怯。そもそも教育費無償化に憲法改正って必要なんですか?

小林 教育の無償化は法律事項です。民主党政権のときに法律と予算で、高校まで実現したじゃないですか。それを反故にし、ぶち壊したのは自民党政権です。それが大学まで無償化だとは、よく言うよ、という話です。教育無償化は憲法レベルではなく、法律と予算で済む。国会の権限でできることなんです。憲法改正として、壮大な手間暇をかけてやるものではない。自民党が無償化を憲法に入れたい真意は、日本維新の会に対する色目使いですね。維新はお勉強していない人ばかり。「教育の無償化」と、彼らが言っちゃって、引っ込められないだけでしょう。

室井 それと、私が一番問題だと思うのは、安倍さんが総理大臣なのに憲法改正を具体的に進めると明言したこと。しかも、国会で追及されたら、答弁を拒否して“それは自民党総裁としての意見だから読売新聞のインタビューを読め”。どこまでもおかしくないですか? 安倍さんの言動こそが憲法違反じゃないんですか。

小林 いや、“読売を読め”と言ったのは言語道断ですが、安倍さんが憲法改正を口にしたのが憲法違反だというのは、ちょっと違うね。憲法学者や野党のなかにもそういうことを言う人が多いけど、憲法96条で改正手続きについて規定している以上、国民であれ政治家であれ誰であれ、改憲を考えることは違憲ではない。憲法改正の発議権は国会の権限であるけども、内閣は憲法上、国会に対して議案提出権をもっています。それを受けて、否決するか受け入れるかは、国会の問題です。そこで重要なのは、こうした議論を野党や憲法学者がきちんとしてこなかったことです。参加しなかったことで、敵の独走を招いてしまった。だからこそ国民的議論が必要です。あなたのように情報にたずさわっている人でも「それって憲法尊重擁護義務違反じゃないんですか?」と言って改憲派の発言を無視しようとする。そこで、相手は勝手な解釈をしてどんどん前に進んでいる。いまこそ、正面を向いて論争しなきゃダメなんです。

室井 私は戦争放棄を謳ういまの憲法は世界でも一番素晴らしい憲法だと思っているので、改憲はもちろん、議論もしてほしくないんです。でも、それが敵に付け込まれるということか……。うーん、でも、どうなんだろう。議論にのっちゃうと、逆に強引に改憲にもっていかれる気がする。それに「2020年まで」と言ったのは、どう考えてもおかしくないですか。

共謀罪が施行された後に始まる恐ろしい監視社会

小林 もちろん。憲法改正を口にするのはともかく、スケジュールを切ったのは明らかにおかしいです。しかし安倍さんは、あくまで自分が正しいと思い込んでいる。自分は民主国家において、史上初の衆参3分の2の議席を獲得した。そんな自分には民主的正統性がある。そういう自信なんです。しかもこれまで、自分が先頭に立つと上手くいった成功体験もある。選挙も4連勝した。安保法制に続いて、共謀罪も東京五輪のテロ対策と称して強引に通してしまった。次は、五輪を迎えるにあたり憲法改正を成し遂げようと、本気で思っているんじゃないですか。

室井 そういえば、共謀罪のことを話さなきゃ! 共謀罪みたいなひどい法律をあんなやり方で強行採決するなんて許せないですよ。共謀罪は完全に内心の自由や表現の自由を破壊する。プライバシーも丸裸にされる。そんな大事な人権をオリンピックごときで差し出していいんですか?  ていうか、オリンピックが開けないとか、テロ対策だっていうのも全部嘘だったわけでしょう。

小林 室井さんってホント、小気味いいね。こういうところがあるから、うちの家内が「そうだそうだ!」と賛同するんだろうな。確かに今回の共謀罪採決はプロセスもなにも無視した議会制民主主義の破壊そのものです。しかも、これからもっと恐ろしい事態が起きる。共謀罪は、たとえば「安倍さん、殺したいよね」と誰かと話しただけで成立する。本当に殺そうなんて思ってないし、やれるとも思っていない。だけどその帰り道に銀行でキャッシングしたら、「あいつ、準備に入ったな」と形式上は判断される。ここでポイントは、その話を聞いていなきゃ、わからないことです。だから盗聴、尾行、潜入捜査をしていなきゃいけない。今後はこれを合法化する動きが必ず出てきます。

室井 もう、そうなってきてますよね。加計学園問題で文科省の「総理のご意向」文書を本物だと告発した前事務次官の前川喜平さんだって、絶対に公安とかがかなり前から尾行したり張り込んでいたんですよね。出会い系バーに行ったところを。

小林 すごかったですね。ああいうのを暴露されるということは、監視のネットワークがすでにできているということです。

室井 本当に掴みたかったのは、未成年買春ですよね。そしたら大喜びだったんでしょうけど、結局はそんな事実はなかった。同じ情報をもらった週刊誌も「これじゃ載せるような犯罪でもないし」となっていたらしいです。でも読売新聞はもう公人でもない、法的にも倫理的に問題でもなんでもないプライバシーを大々的に報じた。私たちが危惧して、イヤだなと思っていたことが、すでに現実化しちゃってる。しかも前川さんは自分が参考人として国会に出てもいい、知っていることは全部語ると言っているじゃないですか。でも与党が堂々とそれに反対して、真実を明らかにすることを妨害します。それだけで、語るに落ちたって感じじゃないですか。菅さんがいくら「怪文書だ」と言っても、みんな嘘だとわかりますし。なのに、何かあったら数の論理で閣議決定しちゃう。昭恵さんが私人かどうかも閣議決定されたし、はっきり言って狂ってる。

小林 参考人招致は、議会の権限であって、全会一致が慣例ですが、森友学園問題のときには多数決で呼んだ。それなのに、都合が悪くなるとそれを拒否。3分の2の議席数をもっている与党が「いらん」と言ったら、どんな重要な人物も呼ばれない。それがいま起きている安倍一強独裁の現実なんです。ただ、以前の自民党は絶対多数をもっていてもここまで横暴なことはやらなかった。

室井 倫理感もまったくなくなってるでしょう。何をやっても許されるという感じで、どんな不祥事を引き起こしても責任を取らないし。

世襲議員の特権意識がつくり出した王政の再現が安倍政治だ

小林 私は自民党と30年以上の付き合いがありますが、「自民党は本当に劣化したな」と思うに至ったのが、世襲議員が過半数になったときです。それまでは憲法は国家や権力が暴走しないための規範だ、と言うと、「そうか」と納得してくれたんです。しかし世襲議員は違う。彼らは、封建時代の貴族のような意識と生活で、国民と乖離している。また世襲議員にありがちですが、意見が合うときは、「さすがは大学教授! 先生は違いますよね」なんておべんちゃらを言ってくる。でも、意見が合わないと「小林さん、あんたねえ」と、まるでヤクザなんです。多様な意見を認めないし、都合が悪くなると態度が豹変する。何だ、このヤクザちっくな連中は、と思うほどです。彼らは結局、自分たちが特権階級だという自負があるんです。考えてみてください。生まれたときから大きな屋敷に住んでいて、書生や地方議員がヘコヘコと挨拶に来ていて。道を歩いているとおまわりさんが、「ぼっちゃん、こんにちは!」と敬礼する。子どもに敬礼するおまわりさんなんて、普通はいないですよ。安倍さんも政治家一族の3代目のぼんぼんです。でもひとつだけ思い通りにいかなかったのは、学校の教室のなかでは教師に敵わなかった、ということです。だからいまになって、学校教育や教師を罵倒することを覚えた。ある種の復讐です。しかも総理が安倍さんで副総理が麻生太郎さんで、どちらも父親や祖父の世代からの付き合いで来ているわけです。

室井 わたしの周りにも金持ちの息子はいます。でも、低姿勢で礼儀正しい人が多いですよ。

小林 それは経済権力者だから、経済論理、法制度のなかで動くしかない。ところが、政治的権力者というのは、究極の権力をもっている。それは加計学園問題が象徴的です。法治国家とは、国民の代表たる国会でつくった法律に則り、どこの誰にでも同じ条件で適用されるのが原則です。学校をつくろうと思ったら、その学校は、それだけの力があるのか、地域に需要があるか、などきちんと詰めていく。これが法治国家の正しいやり方です。しかし竹中平蔵という政商が提案した「国家戦略特区」は、総理大臣を議長として、御用商人的な学者と一部側近の官僚を集めた会議で、トップダウンで決まってしまう。巧みに、法治国家を“お殿様”の私物にする制度なんです。

室井 お殿様が、お殿様とお友だちのためにつくったルールってことですよね。だから色々な問題が表面化してきた。でもそれに対して“お殿様一派”のやり口はひどいですね。自分に歯向かう人間には、犯罪でもないのに御用新聞にデカデカと報じさせる。安倍さんをかばっていた“御用ジャーナリスト”の山口敬之さんなんて、準強姦疑惑で逮捕状まで出たのに、それをもみ消したり。これって法律やルール無視じゃないですか。

小林 言ってみれば、かつての王族支配、貴族の世界の再現です。「庶民がやれば強姦だけど、俺が手篭めにしてやったんだ、ありがたいと思え」と。本来は、日本も「すべての国民は対等であり、基本的人権をもつ」民主主義国家だし、誰に対しても公平に法律が適用される法治国家のはずだった。ところが、現在の安倍政権の意識は、旧世代の王様と貴族の状態です。しかも彼らは、究極の国家権力をもち、警察も自衛隊も税務署ももち、それを使ってマスコミを支配している。つまるところ、現在の安倍政権下にある日本は安倍さんを戴く王制なんです。

室井 だから、ああいう国会運営や答弁をやっても平気だし、逆に国民に対しては、共謀罪とか権利や自由を制限したがるのか。だったら、こんな王政は絶対に倒さなきゃいけませんね。フランス革命みたいに。

後編に続く)

小林 節 憲法学者、慶應義塾大学名誉教授、弁護士、1949年生まれ。元ハーバード大学研究員、元北京大学招聘教授であり、テレビ論客としても知られる。2016年には安倍政権の安全保障関連法廃止や言論の自由確保、憲法改正阻止などを掲げ「国民怒りの声」から出馬するも落選。その後も「小林節が斬る!」(日刊ゲンダイ)連載などで安倍首相を批判し続ける。『小林節の憲法改正試案』(宝島新書)、『白熱講義! 集団的自衛権』(ベスト新書)、『憲法改正の覚悟はあるか――主権者のための「日本国憲法」改正特別講座』(ベストセラーズ)など著書多数。

室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『あさイチ』(NHK)などに出演中。

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