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加計問題、誘致先の今治市で安倍関与の新証拠! 市作成資料に「総理主導の枠組み」「スケジュールも内閣府主導」

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加計問題追及の火の手が、誘致先の今治市にも! 市長の「総理が動いてくれている」発言の決定的証拠が明らかにの画像1
自由民主党HPより


「総理のご意向」と記された文書の信憑性を会見で断言した前川喜平・前文科省事務次官は、和泉洋人・首相補佐官が「総理は自分の口から言えないから私が代わって言う」と獣医学部新設を要請していたことも暴露したが、そんな中、工事が急ピッチで進む地元・今治市では、「総理・内閣主導」と明記した文書を市が作成していたことが分かった。

「前川氏の告発内容と一致する決定的文書」と話すのは、「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦・共同代表だ。

「昨年秋から菅市長は『安倍総理が動いているから大丈夫』ということを触れ回っていて、この総理主導発言は地元で広まり、私も聞いていました。が、市企画財政部が昨年11月10日に作成した議員協議会資料にも書いてあるのです」

 たしかに「国家戦略特区の制度を活用した取組の進捗状況について(企画課)」と銘打った資料を見ると、国家戦略特区を視覚的に説明するページに「『総理・内閣主導』の枠組み」と太文字で書かれていた。

 また進捗状況の説明では「今後のスケジュールについても内閣府の主導で進められる」「スピード感を持って進めようとしており、内閣府としても最速で平成30年4月開学を目指していることが伺える」とあり、「総理・内閣主導」で新学部設置が進んでいることを示していた。

 さらに「今後のスケジュール」を表にしたページには、「平成28年10月31日 事業者によるボーリング調査の申出を受理、承諾」や「平成29年3月上旬 3月定例市議会初日『財産(市有地)の無償譲渡決議案』の上程・議決」などから「平成30年4月 開学」に至るまでのタイトな日程が書き込まれていた。

「総理主導」「加計ありき」で計画が進んでいったことを示す証拠

「この資料は、今治市が『総理・内閣主導』と認識していたことを示すもので、地元で広まっている菅市長発言とも一致します。安倍総理主導で加計ありきのタイトな日程で進んでいたことは明らかなのです。とにかく市役所の担当課に聞いても『急げ』『急げ』と言われている。『平成30年開学をしないといけないから、このスケジュールなのです』というのは市役所のすべての担当課から言われます」

 加計学園側からのボーリング調査の申し入れに対する決済も異例のスピードだという。

「加計学園に市有地が無償譲渡される前にボーリング調査が行われました。加計孝太郎氏からボーリング調査の申入れ書が市役所にメールで送られてきましたが、同じ日付で承諾書を出している。その後、郵送で申入れ書が届いて決済しています。一日、二日すら待てないほど急いでいた」

 まさに「総理・内閣主導」で今治市が急き立てられたことを物語る話だが、最近になって菅市長は去年秋の発言を曖昧にし始めた。5月30日放送の『報道ステーション』(テレビ朝日)で、自らの“総理主導発言”について「記憶はない」とした上で「もし千歩譲って発言があったとしたら、安倍政権が安定していることが一番大事なことだった」という弁明をしたのだ。

 黒川氏は呆れてこう語る。

「番組では市長の選対関係者が、『それは国がやっていることだし、総理が全部やってくれていることなので、地元はどうこういう話ではなくなっている』という市長の発言を紹介してもいましたが、同等のことは僕もいろいろな所から聞くので、それだけの人が同時多発的にウソをつくことはないと思います。市長は全否定をするわけにいかないので、全く説得力のない言い逃れをしたのでしょう」

 総理主導発言を触れ回っていた理由も想像がつく。実は菅市長は、「総理のご意向」と発言したとされる藤原豊審議官(内閣府国家戦略特区担当)が、獣医学部新設に慎重な姿勢であった地方創生推進室次長時代に2回面会しているのだ。

内閣府の藤原審議官も消極的だったのが、一転…

 藤原氏が今治市を訪れて大学用地も視察した2015年8月6日と、広島県知事と面会した時に藤原氏も同席した16年1月8日であるが、当時の藤原氏の慎重な姿勢は、今治市議会に16年2月に提出された資料に明記されていた。市関係者との面会内容として次のように報告されていたのだ。

「(藤原氏より)新設大学への財政支援による今後の財政悪化や人口減少により学生が本当に集まるのか危惧されていた」

 構造改革特区申請を14回も出し続けたものの獣医学部新設が実現しなかった今治市関係者にしてみれば、16年2月の段階では、内閣府の消極姿勢を告げられて実現可能性に自信が持てなかったに違いない。しかし同年秋になると、一転して菅市長は総理主導発言を口にし始めた。「総理が全部やってくれていること」「安倍総理の強いリーダーシップをもってやるから安心して欲しい」といった楽観的見通しを語ることで、地元に横たわっていた悲観論的見通しを払拭しようとしたに違いない。安倍総理主導(直接指示)によって、獣医学部新設の実現可能性が一気に高まったとしか考えられないのだ。黒川氏はこう続けた。

「朝日新聞が『総理のご意向』という文書をスクープした17日から約2週間、菅市長はぶら下がりで少しコメントした程度で、ほとんど逃げ回っていましたが、市議会で国家戦略特区特別委員会が開かれた30日に直撃されて、ようやく発言をしました」

 実際、前川前事務次官が会見をした後、市役所の秘書課に聞いても「市長の会見を開く予定はない」と言っていた。5月25日に菅市長が海運関連の展示会「バリシップ2017」の歓迎会で挨拶、関係者との談笑を一通り終えた時に直撃、「加計学園疑惑についてどう思うか」と聞いたが、一言も発することなく、すぐに秘書課職員が間に入り、主催者から退出を命じられた。「昨年秋の総理主導発言については語りたくない」という菅市長の本音が透けてみえるのだ。

 しかし市長の発言だけでなく、市が作成した文書にも「総理・内閣主導」と記載記されていた。今治市長発言や作成文書が前川前事務次官の会見内容と一致したことで、安倍首相の犯罪的行為の疑いがさらに深まった。それは「国家戦略会議のトップ(座長)の安倍首相が天の声を発し、加計学園が選ばれるような条件を加えることで競合相手の京都産業大学を排除した」という官製談合の様相も呈してきた。「安倍首相は官製談合の仕切り屋ではないか」という疑惑だ。

安倍首相が国家戦略会議でやったことは、官製談合のやり口と同じ

「発注者の意向で本命業者を入札前に選ぶ官製談合事件に等しい」と指摘するのは、談合担当(受注調整)をしてきたあるゼネコン関係者だ。

「公共事業の発注者は、どういう入札条件を加えれば、どの業者が選ばれるのかのデータベースを持っています。そのため官製談合では、発注者の意向で入札前に本命業者(チャンピオン)を選ぶことが可能です。国家戦略会議のトップである安倍首相の“発注者意向”で、『広域的に獣医学部がない』という条件が付加されて、加計学園が選ばれたということでしょう」

 今治市や愛媛県が官製談合事件の“共犯者”となる可能性が出て来たということだ。韓国の前大統領と同じような最高権力者の疑獄事件の舞台になれば、県や市のイメージダウンは避けられない。中村時広愛媛県知事もこうしたイメージダウンについて懸念を表明した。24日の会見で内閣府から国家戦略特区申請の助言があったことを改めて認めた上で、決定プロセスをクリアにすることも国に求めたのだ。

 知事会見後、「安倍総理の天の声で決まったのではないか」「違法性があったのではないか」と聞くと、中村知事は「僕は分からない。過去の経緯から説明。県はあれ以上でもあれ以下でもありません」と答えた。しかし県として「加計学園選定に違法性があったのか」について徹底的にチェックしなければ、「談合や利権や癒着まみれの愛媛県」と見られる懸念は払しょく困難だろう。

 17日に現地視察をした民進党の「加計学園疑惑調査チーム」(共同座長は今井雅人衆院議員と桜井充参院議員)からは次のような声が出ていたからだ。

「官邸の意向が働いて内閣府主導で話が進んだ疑念がある」「森友は官僚の忖度だろうが、加計学園は首相の直接指示の可能性がある」(今井議員)

「京都産業大学が手をあげていたのに排除された経過が不可解。もともと『(獣医学部)空白区』という条件はなかったのに、(2016年)11月9日に突然『空白区』が条件になった。世界的な権威の研究者がいて提案内容もしっかりしていた京都産業大学ではなく、加計学園が選定されたのは、公正中立な決定とは言えないと思います」(木内孝胤衆院議員)

 官製談合の仕切り屋をしたようにみえる安倍首相の疑惑に対して、地方と中央の両サイドから徹底的な真相解明をする必要がある。

最終更新:2017.12.04 03:58

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