籠池、稲田、小藪が絶賛! 安倍政権が復活狙う「教育勅語」の正体(後編)

籠池や稲田が持ち出した「教育勅語」の現代語訳は“偽物”だった! 作成したのは元生長の家シンパ

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籠池や稲田が持ち出した「教育勅語」の現代語訳は偽物だった!作成したのは元生長の家シンパの画像1
左・稲田朋美公式サイトより/右・フジテレビ『バイキング』16年3月7日放送回より


 籠池泰典理事長や稲田朋美防衛相はもちろん、芸人の小籔千豊までが口にする「教育勅語は悪くない」論。前編ではそうした主張が明らかに嘘とゴマカシであることを指摘した。

 連中は、「教育勅語は親孝行しよう、友達を大切にしよう、夫婦仲良くしよう、一生懸命勉強しましょうと説いているもの。当たり前の道徳、いいことを書いているだけではないか」と口をそろえる。たしかに、教育勅語には“12の徳目”とされるものが書かれており、11番目までは親孝行や兄弟、夫婦仲良くなどと、まあごく普通の道徳が書かれている。

 しかし、最後の12番目には〈一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ〉とあり、さらに〈以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ〉と続く。これは「国家のために勇気をもって身命を捧げ、永遠に続く天皇の勢威を支えよ」という意味だ。

 しかも、文章の構造を検証すると、そこまでの「当たり前のいいことが書いている」という徳目も、「以テ〜」以下にかかっており、すべての道徳が天皇を支えるという目的のために存在していることがわかる。まさに教育勅語は天皇中心国家を確立し、国民に天皇のために命を投げ出す教育をするためにつくられたスローガンだったのである。

 では、なぜ連中はそのことをネグって、「当たり前にいいことを説いているだけ」などと平気で言いはるのか。

 実は、教育勅語復活論者の多くがもちだす「現代語訳」にその秘密がある。
たとえば、戦後まもないころから教育勅語の復活を訴えている明治神宮のHPに掲載されている現代語訳。冒頭はこういう風に始まる。

〈私は、私達の祖先が、遠大な理想のもとに、道義国家の実現をめざして、日本の国をおはじめになったものと信じます。〉 

 しかし、これは実際の教育勅語とは似ても似つかないものだ。この部分に該当する教育勅語の原文は〈朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ〉、つまり「私が思うに、皇室の先祖である天照大御神が国を始めた遠い昔より、皇室はずっと徳を積み上げてきた」というもの。明治神宮の現代語訳にある「道義国家」に該当する言葉は一切出てこず、かわりに天照大御神を始祖とする皇国史観丸出しの文言が書かれている。

 決定的に違う箇所は他にもある。それは教育勅語の核心である12番目の徳目〈一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ〉から〈以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ〉へ続く部分。前述したように、これは「国家のために勇気をもって身命を捧げ、永遠に続く天皇の勢威を支えよ」という意味だが、明治神宮の現代語訳では、〈非常事態の発生の場合は、真心を捧げて、国の平和と安全に奉仕しなければなりません〉とあるだけ。「義勇」を「真心」と置き換える訳にもかなり違和感があるが、それよりもっと驚くのは、〈以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ〉の現代語訳、つまり「永遠に続く天皇の勢威を支えよ」という箇所がすっぽり抜け落ちていることだ。

 いや、この部分だけではない。実は明治神宮の現代語訳では、教育勅語の肝である「天皇のため」「皇室のため」という言葉は一切出てこず、他の表現もことごとくソフトになっている。

 明らかに教育勅語が天皇支配強化、神格化という目的をもっていたこと隠すための詐術と思われるが、しかし、こうしたインチキな現代語訳を採用しているのは、明治神宮だけではない。明治神宮のHPに掲載された現代語訳の末尾には「国民道徳協会訳文による」との注釈がつけられている。つまり、訳文は明治神宮のオリジナルでなく、「国民道徳協会」という団体の訳によるらしい。そして、「教育勅語は悪くない」と復活を主張する連中の多くは、なぜか決まってこの国民道徳協会の訳文を持ち出すのだ。渦中の塚本幼稚園も、田母神俊雄もこの国民道徳協会の訳文を使っている。産経新聞の阿比留瑠比記者も13日、やはりこの訳文を提示して「どこが悪いのか」とがなりたてていた。

 稲田朋美防衛相も国民道徳協会の訳文を根拠にしているひとりだ。稲田は8日の国会で「教育勅語の精神を取り戻すべき」という過去の発言を問われ、「教育勅語の核である、例えば道徳、それから日本が道義国家を目指すべきであるという、その核について、私は変えておりません」と答えていたが、教育勅語の原文に載っていない「道義国家」という言葉を使ったのは、国民道徳協会の訳文に基づいているとしか考えられない。

 では、この国民道徳協会というのはなんなのか。何か公的な団体かと思いきや、そうではなかった。国民道徳協会は、戦後から1960年代頃まで自由党、自民党所属の国会議員だった佐々木盛雄なる人物がつくった団体で、佐々木はこの団体から『甦る教育勅語』(1972)という著書を自家出版。そこに書かれていた訳文がもっともらしく「国民道徳協会訳」として広まっているのだ。

 佐々木は戦前、報知新聞記者で論説委員まで務め、戦時中は海軍大本営に従事。戦後、政治家に転身すると、ゴリゴリの右派として鳴らし、「学生暴動が起きるのは、教育勅語を廃止したせい」「家制度を廃止したから日本は弱体化した」「諸悪の根源は占領憲法」「国益を無視した個人の権利を主張するようになって一億総無責任」「マスコミは偏った思想を押し付けている」「日本は食糧難なのに朝鮮人、韓国人に生活保護を与えている、強制送還しろ」「デモを規制しろ」などと、籠池はじめ日本会議の連中の口癖とほぼ同じような内容を、50年以上も前にがなりたてていた。

 この教育勅語の現代語訳もそのゴリゴリ右派の佐々木が、教育勅語を復活させるために意図的に天皇や皇室の部分を隠したマイルドな訳をつくり、それを発表したと考えられる。

 実際、佐々木は『甦る教育勅語』のまえがきで「今日となっては、政府による正式復活は、悲しいかな不可能に近いだろう。だから、せめてわれわれ民間人の手によって、日本人の心の中に、在りし日の栄光と、権威を復活したいと念じるのであって、それが本書の目的」とつづっている。

   しかし、議員引退後の佐々木は、評論、著述活動をしていたとはいえ、世間的には有名な存在ではなかったし、高い学術的見識があったわけでもない。著書も自費出版らしきものがほとんど。なぜそんな人物の、自費出版本に載っているだけの訳文がここまで広まっているのか。

 日本近現代史研究者の長谷川亮一氏はこの「国民道徳協会」訳の流布について、「発表直後に明治神宮発行のパンフレットに広く知られることになったのみならず、一九七九年頃からの神社本庁・「日本を守る会」等を中心とした教育勅語キャンペーンにおいても広く採用され、あたかも定訳であるかのような扱いを受けることになった」と日本思想史研究会で報告している。

「日本を守る会」というのは、1973年に発足した、明治神宮、生長の家などが中心となって運営していた宗教右派団体で、日本会議の前身。そう。このインチキな訳文の普及には、あの日本会議につながる人脈が介在していたのだ。

 しかも、その関係はたんに普及に協力したというレベルではではない。問題の訳を作成した佐々木はもともと、「生長の家」創始者の谷口雅春と非常に近い関係があった。現在の日本会議の中心に、谷口雅春の極右カルト路線に心酔していた「生長の家」元信者たちが入り込んでいることは有名だが、佐々木はその頃の生長の家がつくった右翼組織「日本青年協議会」の機関紙『祖国と青年』にもたびたび登場している。さらにさかのぼると、生長の家の出版部門である日本教文社から本を出版。その中で「尊敬する谷口雅春先生」と記したこともある。谷口雅春のほうも明治憲法の復元を主張する著書『私の日本憲法論』のなかで、佐々木の著述を引用している。

 さらに、両者の関係を裏付けるのが、「道義国家」という言葉だ。前述したように、この言葉は教育勅語の原文には一切該当箇所がないにもかかわらず、国民道徳協会の現代語訳に唐突に出てくる。「道義国家」という言葉自体は、戦前、軍部のクーデターにも関与したアジア主義者・大川周明が生み出したものだが、谷口雅春はじめ生長の家関係者は、戦後、侵略戦争や、国民の人権制限を正当化する大義名分としてこの言葉をしきりに使っていた。そして、いまも日本会議まわりの連中が使う典型的なタームとなっている。

 たとえば、日本会議会長の田久保忠衛は2016年7月13日の日本外国特派員協会での会見で「道義国家を目指す」と語り、外国人記者たちは意味がとれず困惑する一幕があった。また神道政治連盟も「世界から尊敬される道義国家、世界に貢献できる国家の確立」を掲げている。そして、極右路線時代の生長の家の思想に心酔している稲田防衛相も先述したように、この言葉を国会答弁で持ち出した。

 つまり、このインチキな現代語訳は谷口雅春に影響を受けた人物によってつくりだされ、谷口の熱心な信者たちが普及させ、そしていま、安倍政権でふたたび日本会議の連中によって教育勅語復活のツールとして活用されはじめているのだ。いわば、いま流通している国民道徳協会の訳文は日本会議をはじめとする右派勢力の組織ぐるみの詐術的訳文といってもいいだろう。

 しかも、気をつけなければならないのは、この教育勅語がインチキな現代語訳によってソフトになったからといって、彼らが目指しているものがソフトになったわけではない、ということだ。

 連中がめざしているのは、いまも、天皇、国家のために命を投げ出す国民を育てることだ。

 実際、稲田自身もいまでこそ、「親孝行の部分などは……」としか言わなくなったが、新人議員時代には「WiLL」(ワック)で「教育勅語は、天皇陛下が象徴するところの日本という国、民族全体のために命をかけるということ」と発言。国民に命を捧げさせる教育勅語の精神を復活させるべきと主張していた。

 ただし、それを直接的に言葉にすると、国民からは拒否される。そこで、そういった箇所をすべて隠し、親孝行などの徳目を前面に出し、言葉を「真心」などといったソフトなものに変換して目くらましをしているのだ。

 当の安倍首相の側近中の側近が、その手口を思わずもらしたことがある。憲法改正についての自民党プロジェクトチームの会合(2004年、第9回会合)で、加藤勝信一億総活躍相がこんな発言をしたのだ。

「個人・家族・コミュニティ・国という階層のなかで、日本人は国も捉えているのではないか。したがって、急に国に奉仕しろといわれても飛びすぎて、まず家族・コミュニティに奉仕をする延長線上のなかに国に対する奉仕も位置づけたほうがなじみやすいのではないか」

 自民党や日本会議などの右派勢力はいま、国民を国家に奉仕させるために、まず「家族」への意識から変えさせようとしている。最近の教育勅語復活の動きや、憲法に家族条項を創設しようという動きはまさにその一環といえるだろう。

 しかも、これは今から127年前に行われたやり口でもある。あのときも、日常に親しまれた「親孝行」などの徳目を利用して国民を戦争に動員させていったのだ。

 最後にもう一度いっておく。インチキな訳文を使って「教育勅語は親孝行などの当たり前の道徳、いいことを書いているだけ」などと甘言を弄する連中に騙されてはならない。

 「愛国は悪党の最後の逃げ場である」という言葉の正しさは、森友学園問題で醜態をさらしている自称愛国者たちが十分すぎるほど証明してくれたではないか。
(エンジョウトオル)

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