産経新聞とFNNがまたペテン的手口の世論調査! 大失敗の日露首脳会談を「国民の6割が評価」の結果に誘導

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産経新聞社サイトより


 侵略戦争への真摯な反省もなく、対米従属姿勢を見せただけに終わった安倍首相の真珠湾訪問。しかし、それでもマスコミは「歴史的なできごと」と大宣伝を展開している。

 真珠湾訪問については、国民がどう評価するかはまだわからないが、同じようにマスコミが大宣伝しても、失敗をごまかせなかったのが先日の日露首脳会談だ。

 共同通信が17、18日に実施した全国電話世論調査によれば、日露首脳会談を「評価しない」が54.3%で、「評価する」の38.7%を15.6ポイント上回った。

 また、朝日新聞が19、20両日行った世論調査では、会談自体への評価についてこそ「評価しない」と「評価する」が拮抗したものの、「会談では、北方領土で、日本とロシアが共同での経済活動をする協議に入ることなどで、合意しました。今回の会談で、北方領土問題をめぐる交渉が、どの程度進んだと思いますか」という項目では、肯定的回答(「大いに進んだ」2%、「ある程度進んだ」25%)に対して否定的回答(「あまり進まなかった」48%、「まったく進まなかった」22%)が大きく上回った。

 当然だろう。安倍首相はあれだけ北方領土返還に浮き足だっていたのに、結局、交渉らしい交渉はほとんど見られず、しかも蓋を開ければ日本が3000億円にものぼる経済協力で貢がされるという結果に終わった。安倍倍首相はプーチンの手のひらで転がされていただけだったのだから、国民は「なんでそうなるの? バカなの?」と思うに決まっている。むしろ、安倍首相が生出演したニュース番組など、メディアがもっとしっかりと首相の先走りやミスを指摘していれば、日露会談自体に対する世論の評価はさらに数段下がっていたことは明らかである。

 ところが、そんななか、やっぱりあの新聞だけは、共同や朝日とはまったく違う「世論」を伝えていた。そう、“安倍政権の機関紙”と呼ばれる産経新聞である。19日付の夕刊一面には、こんな見出しが躍った。

「日露首脳会談、評価63% 北方領土『進展』26% 本社・FNN合同世論調査」

 えっ!? 国民の6割以上が日露首脳会談を評価したってホント? と、思わず目を疑ってしまったが、記事によれば、産経新聞がFNNと合同で17、18両日に実施した世論調査の結果、〈安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が北方四島での共同経済活動実施などで合意した日露首脳会談について、「評価する」との回答が63.9%にのぼり、「評価しない」の30.7%を上回った〉のだという。つまり、あの元島民らからも「成果ゼロ」と苦言を呈された首脳会談について、「評価する」が実に33.2ポイントも差をつけて圧倒したというのだ。

 いや、ひょっとしたら、普段から政権の御用新聞となっている産経のこと、「電話回答では産経新聞の調査だというだけで回答を断る人もいるから、サンプルにバイアスが生じることもあるだろう」と思う方もいるかもしれない。しかし、それでも仮に「評価する」が10ポイント程度上回っていただけならば想定の範囲内と言えなくもないが、実際には、その差30ポイント以上。こんな大差ははっきり言ってめちゃくちゃである。

 当然、ここにはペテン的なからくりが存在した。

 実は、産経新聞20日付朝刊に掲載された「主な質問と回答」によれば、問題の「日露首脳会談、評価63%」(夕刊見出し)の根拠となった質問は、このような文章であった。

「安倍首相とプーチン露大統領の首脳会談で、北方四島での共同経済活動の実現へ協議することで合意し、元島民の自由往来の対応を検討することになった。今回の会談を評価するか」

 もうお分かりだろう。つまり、産経新聞は単に首脳会談自体を「評価する」か「評価しない」かを尋ねていたのではなく、その前に「北方四島での共同経済活動の実現へ協議合意」「元島民の自由往来の対応」という言葉をかぶせることで、意味を限定し、肯定的な評価を導くようにミスリードしていたのである。

 賛否が拮抗した朝日の設問と比較すれば、その恣意性は明らかだ。朝日の設問は「安倍首相と、ロシアのプーチン大統領は、日本で首脳会談を行いました。今回の会談を評価しますか。評価しませんか」というもので、会談それ自体に対する評価しか尋ねていなかった。これと比べれば、産経の質問文、設定は明らかな論点のすり替え、詐欺的としか言いようがないだろう。

 だが、これは今に始まったことではない。本サイトではこれまで、産経によるデタラメな世論調査について、以下の記事で指摘してきた。

●「安保法制必要が7割」はインチキだった! 産経、フジテレビの世論調査が今度は質問改ざんで回答を誘導(2015年9月22日)
https://lite-ra.com/2015/09/post-1516.html

●フジ産経が「天皇の生前退位のために改憲が必要」のデマにもとづく詐欺的世論調査を実施! 安倍政権もグルか(2016.08.10)
https://lite-ra.com/2016/08/post-2484.html

 詳しくはリンク先をご一読いただいきたいが、これらはいずれも今回の日露首脳会談のケースと同様、恣意的な設問文で回答を誘導したケースである。しかし、さらにたちが悪いは、こうした産経による露骨な“世論操作”と安倍政権が、二人三脚の関係にあることだ。

 たとえば、今年4月、新安保法が施行された前後、安倍政権と自民党は「安保法制に対する国民の理解が深まってきた」と言いふらしていた。もちろんこれは大ウソ。事実、同時期に実施されていた各社世論では、共同通信や毎日新聞だけでなく、政権に好意的な読売新聞でさえ「評価しない」が「評価する」を10ポイント前後上回っていた。

 しかし、菅義偉官房長官は会見で「昨今の世論調査では、(賛否が)逆転するところもあり、ほとんど接近してきている」と述べ、小野寺五典・元防衛相もテレビ討論で「実は、法案成立のときは、賛成3割、反対6割だったのですが、直近の調査では賛成6割、反対3割になっています」と嘯き、事実とは反対のことを喧伝していた。そして、その根拠となっていたのが、産経FNNが3月1に実施した全国電話世論調査であった。産経はこのときも、設問文で意味を恣意的に限定して、政権に有利になるような数字を弾き出していたのだ。

●安倍政権の「国民に安保法制への理解が広がっている」は大ウソ! 根拠は“応援団”産経のインチキ世論調査だった(2016年4月1日)
https://lite-ra.com/2016/04/post-2117.html

 何度でもいうが、賢明な読者諸賢は、こうした安倍政権と団結して詐欺的な“世論操作”を行うマスメディアを、決して信頼してはいけない。とくに、何かの縁で産経新聞や「産経ニュース」を読む場合は、見出しで判断するのではなく、世論調査にしてもしっかりと設問の文章に“罠”が仕込まれていないか、よくよく確認してもらいたい。

 なお、余談ではあるが、最近、産経の名物記者である阿比留瑠比氏が、22日付のコラムで面白いことを書いていた。阿比留記者は、天皇の「生前退位」をめぐって、民進党の皇位検討委員会が一代限りの特別法でなく、皇室典範の改正で恒久的に制度化すべきと主張したことに関して、こう攻撃している。

〈「メディア各社の世論調査で、国民の高い割合で、皇室典範を改正して今後すべての天皇に退位を認めるべきだという声が、圧倒的に高い」
 蓮舫代表は15日の記者会見でこう述べていたが、世論調査はあくまで参考に資するものにすぎない。世論調査通りに物事を決めるのであれば、専門家も政治家も必要がなくなる〉

 あれだけインチキな調査で政権をバックアップしておいて、都合が悪いときはそう言うのか(笑)。まあ、少なくとも“産経の世論調査は「参考に資するもの」以下である”と認識しておけば、ほぼ間違いないだろう
(小杉みすず)

最終更新:2017.11.12 01:36

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