ASKA報道で宮根誠司が“謝罪”するもポーズだけ! 釈放後も開き直ってASKAをクロ扱いするワイドショー

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ASKAセルフカヴァーアルバム『12』(ユニバーサル・シグマ)

「ASKAさんに謝らなくちゃならない」

 12月21日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)で、一連のASKA報道に対し、司会の宮根誠司がこんなふうに謝罪の言葉を述べたことが話題になっている。

 当然だろう。ASKAの2度目の逮捕から、宮根と『ミヤネ屋』はめちゃくちゃな人権無視の報道を繰り返してきたからだ。

 逮捕直前の11月28日、『ミヤネ屋』は、ASKAが芸能レポーターの井上公造に送っていた未発表曲のデモテープを許可なく放送。番組終了後には、その井上に逮捕約5時間前のASKAの携帯電話に直接連絡させ、引き継いだ宮根誠司が巧妙に話を聞き出し、それをそのまま翌日29日の放送で「独占スクープ ASKA容疑者逮捕直前の激白」と題して流している。

 さらに12月4日には、『Mr.サンデー』(フジテレビ)でASKAの父親を直撃、司会の宮根は「息子さんは残念ながら覚醒剤を使用してらっしゃると思いますよ」などと断定し、父親を非難した。

 しかも、宮根はASKAが嫌疑不十分での不起訴、釈放になった翌日である20日放送でも、謝罪するどころか冒頭から不満そうな顔をして、開き直ったようにこう言い放った。

「あの逮捕劇はなんだったんでしょうか」

 挙げ句、宮根は尿検査の結果が陽性だったことを繰り返し主張し、今回の結果はあくまで警察のなんらかの手続きミスであり、自分たちの報道はなんら間違ったものではないと強調さえしたのだ。

「なにが起こったのかまったくわからない」
「(科捜研で)陽性が出たのだから普通は尿だ」
「まったく理解できない」

 反省などさらさらないどころか、逆にASKAが“うまく逃げただけ”“嘘を付いている”といわんばかりの内容だった。これに対してはネットを中心に疑問の声が噴出。同日の『スッキリ!!』(日本テレビ)で司会の加藤浩次が「僕自身も起訴の方向になると思っていて(略)僕自身もしっかり考えないといけないなと思った」と反省コメントをしたこともあり、さらに宮根への批判が殺到、冒頭で紹介した謝罪になったと思われる。

 しかし、実はその謝罪発言の詳しい内容をチェックしてみると、それはとても「謝罪」とは呼べるシロモノではなかった。宮根はまず、こう切り出した。

「尿検査をした本人のものである。陽性が出た。これはもう、本人がほぼほぼ覚醒剤を使っていた所持していたって思うじゃないですか。それが絶対的証拠っていうことになりますよね」

 相変わらずの“そう発表されたんだから覚醒剤を使っていると思って当たり前”発言。そのうえで、報道の仕方を「ちょっと考えたい」と言いながら、こんな言葉を口にする。

「僕はちょっと反省しました。もし、本当に、もしもですよ、仮にASKAさんが無実ならば、謝らなくちゃならないことだし」

“もし”“かりに”無罪だったら──。宮根は何を言っているのか。ASKAは警察が立証を断念し、検察も嫌疑不十分と判断して不起訴処分で釈放となっている。つまり“無罪釈放”されたのだ。しかし宮根はそれをどうしても認めたくないらしい。最後にこんなコメントで締めくくったのだ。

「(本当に無実なのか)このあたりが我々、わからないことですが」
 
 ようするに、宮根はこの期に及んでも、自分たちの報道姿勢を本気で反省する気などまったくないのだ。

 だが、こうした態度をしていたのは宮根だけではない。逮捕前から逮捕まで、見世物のように実況中継し、ASKAが逮捕前に乗ったタクシーのドライブレコーダーを“公開”するなど、散々イジり回し笑い者にしてきた他ワイドショーも同様に、反省するどころか完全に開き直っていた。

 たとえば『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)では、安藤優子が「尿検査で陽性が出たのは警察側が発表した事実」とその責任を警察発表に押し付けるような発言をしているし、『とくダネ!』(同)では釈放後のASKAブログに対し小倉智昭が「読んでも何を言いたいのか伝わってこない」とASKAに説明責任があるかのような物言い。『ひるおび!』(TBS)でも恵俊彰が「驚きましたね〜」「一体どういうことなんでしょうか?」とまるで他人事のようにコメントしていた。

 彼らに共通しているのは「警察が発表したのだから事実だと思うのが普通でしょ」という論理だ。一体これまで警察発表したなかに幾多の冤罪があったのか知らないのか、と言いたくなる。

 しかも、呆れたのが、こうしたワイドショーが警察の捜査ミスと自分たちの責任逃れのために、例の“尿とお茶の入れ替え”問題ばかりを取り上げたことだ。

 たとえば、20日の『バイキング』(フジ)や『あさチャン!』(TBS)、『ミヤネ屋』などはこぞって科学捜査研究所出身の専門家などを登場させて、彼らに「お茶から覚醒剤反応は100%出ない」「陽性が出るということは尿としか思えない」などとコメントさせていたが、そもそもこんなわかりきったことを真剣な顔で検証する意味がわからない。

 一方、21日の『グッディ!』にいたっては、逆に、覚醒剤逮捕歴がある人物に“尿とお茶のすり替えは覚醒剤使用者がよくやる方法”などと解説させる始末だった。

 たしかに、逮捕後、ASKAは「あらかじめ用意しておいたお茶を尿の代わりに採尿カップに入れた」と供述し、ブログでも同様の記述をしていた。しかし、ASKAの言動を鵜呑みにできないことは、これまでさんざんASKAをいじり倒してきたワイドショーなら承知のはずだろう。

 それをわざわざ本気で検証したふりをしたのは、ようするに、「嘘をついているのは自分たちや警察でなくASKA」であると強調したかったからだろう。

 実際、“尿とお茶の入れ替え”問題垂れ流しの一方で、こうしたワイドショーは警察の捜査、失態に対する踏み込んだ検証をほとんどやらなかった。

 そもそもなぜ、最初の段階で微量しか採尿できなかったのか。尿をすべて使い切ってしまったのは本当なのか。採尿カップという物証をなぜ破棄したのか。本鑑定での陽性反応は事実なのか。なぜ再検査を行わなかったのか。しかしワイドショーでは「誤認逮捕ではない」という警察発表を鵜呑みにしているのか、こうした当然の疑問に一切触れていない。

 さらに物証についても同様だ。今回、警察はASKAの自宅を家宅捜査し、タブレット端末やパソコンなどダンボール2箱分の証拠を押収している。ところが覚醒剤の“ブツ”どころか、覚醒剤に関連する道具さえ見つかっていない。そのため、警察は自宅以外の、ASKAが滞在したとされる都内ホテルや頻繁に訪れていた福岡でも物証や入手ルート解明のために捜査するなどと報じられた。だが、それら捜査の有無やその結果について警察はなんら発表していないが、こうした疑問についてもワイドショーは一切触れなかった。

 検証すべきは山ほどあるのに、肝心なことはスルーし続ける。なかでも最大の謎は「毛髪検査」をめぐる姿勢だ。

 覚醒剤使用容疑で逮捕した以上、尿検査だけでなく、毛髪鑑定が行われたと考えるのは当然だ。しかも1〜3日間といわれる尿鑑定検出に比べ、90日前の使用でも検出されるといわれるのが毛髪鑑定だ。起訴できなかったというのは、つまり毛髪検査ではシロだったということではないのか。だが、警察は毛根鑑定について「すでに釈放されていて、プライバシーに関わることなので、回答は控える」などと、その有無さえ“隠蔽”したままだ。

 加えて1度目の逮捕の際、ともに逮捕された元愛人には2度の毛髪鑑定が行われており、今回のASKAの逮捕でそれが行われなかったと考えるほうが不自然だろう。

 しかしワイドショーは最大の謎である毛根鑑定にほぼ触れることはなかった。確かに20日の『ミヤネ屋』では毛髪鑑定に言及していたが、専門家の若槻龍児氏らに「(毛髪鑑定は)覚醒剤を常用しているか立証するもの」「尿検査で陽性が出たからやらない」と説明されるや、宮根は我が意を得たりと言わんばかりに「毛髪検査は必要ないということですね」と警察の正当性を代弁する始末だった。

 本サイトでは先日、今回のASKA逮捕は警視庁組織犯罪対策部5課による冤罪事件、誤認逮捕だと指摘した。ワイドショーにはそんな発想はまるでないらしい。陽性反応の真偽、毛根鑑定の有無、誤認逮捕、冤罪など一切を検証することなく、問題を“お茶の入れ替え”にすりかえ矮小化した。しかもあくまでASKAは覚醒剤を使用していたことを“前提”にして、だ。

 しかし何度でも言うが、ASKAは警察が立証を断念し、検察も嫌疑不十分と判断し不起訴処分で釈放、つまり“無罪”となっている。

 そもそも一般刑法犯及び特別法犯(道交違反を除く)すべての事件の起訴率はたったの32.8%。つまり逮捕された7割近くが起訴されてはいない(平成27年版犯罪白書より)。

 ワイドショーに限らず、日本のマスコミは“逮捕”された時点でそれを大きく報じるが、しかしその後不起訴になったとしてもほとんどの場合、それを報じることはない。さらに“推定無罪”という近代法の基本原則に照らしても、今回の報道は異常なものだ。

 もっとも、『ミヤネ屋』を筆頭に、安倍応援団だらけのいまのワイドショーに近代法の基本原則や人権意識を求めること自体がそもそも「八百屋で魚を求める」ようなものなのかもしれないが……。
(伊勢崎馨)

最終更新:2016.12.22 03:46

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