ASKAのタクシー車内映像まで流したテレビ局に宇野常寛が「視聴率目的のクソ」「テレビの傲慢」と真っ向批判

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ASKAセルフカヴァーアルバム『12』(ユニバーサル・シグマ)

「ドライブレコーダーの件とかありましたけど、あれを流したタクシーの運転手もとんでもないし、あれを視聴率目的で流すテレビもクソですよ、はっきり言って。大事なのは更生プログラムと、やっぱりクスリの害をちゃんと訴えること。更生プログラムのような社会的な取り組みを訴えることが大事であって、『人気歌手がヤクに手を染めました。ちょっと面白いでしょ、変な妄想してるし』というスタンスで(報道を)やるのは、僕は反対ですね」

 本日12月1日放送の『スッキリ!!』(日本テレビ)で、レギュラーコメンテーターの宇野常寛がこんな発言をしてネットで大きな話題になった。ASKAの覚醒剤逮捕に大はしゃぎして、タクシーのドライブレコーダーの映像まで放送してしまった件で、テレビ報道を真正面から批判したのだ。

 一方、MCの加藤浩次はこれに大慌てで「そのスタンスでやってると思えないですけどね」などと否定。宇野がなおも「いや、僕はあのドライブレコーダー流したのは、明らかにテレビの傲慢だと思います」とテレビ側の倫理観を批判すると、キレ気味に「ああいう犯罪に手を染めてる人間に関してもそこはそう思う?」と言い放って、この話題を強制終了させてしまった。

 しかし、加藤がどう言い繕おうが、これは明らかに宇野のほうが正しいだろう。本サイトは報道の必然性があればドライブレコーダーだって放送してかまわないというスタンスだが、ASKAの件についてはレコーダー放送の価値なんてまったくない。まさに宇野が見抜いた通り、視聴率を稼ぐために、“おかしい言動を繰り返すASKAの逮捕前の様子”を見世物にしようとしただけだ。

 いや、ドライブレコーダー放送だけじゃない。そもそもテレビのASKA報道は最初からまさに“むちゃくちゃ”だった。先日、本サイトでもお伝えしたように、テレビ各局は28日午後2時半頃、逮捕状すら出てない段階で、警視庁組織犯罪対策部5課のリークに乗っかって「ASKA元被告 逮捕へ」と一斉に報道。午後10時前に警視庁に逮捕されるまで、その模様をマスコミ各社が見世物にして実況中継した。

 そして、ASKAが事実関係を否定し、物的証拠も出ていないのに、ASKAの言動をすべて覚醒剤中毒に結びつけ、あることないことを暴き立てた。

 取材のやり方もルール無視のひどいものだった。『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)にいたってはASKAが芸能レポーターの井上公造に送っていた未発表曲のデモテープを許可なく放送。番組終了後には、その井上に逮捕約5時間前のASKAの携帯電話に直接連絡させ、引き継いだ宮根誠司が巧妙に話を聞き出し、それをそのまま翌日29日の放送で「独占スクープ ASKA容疑者逮捕直前の激白」と題して流した。

 相手が安倍政権の閣僚だったら、ささいな批判さえ「公平な報道をしないと」「公正な取材ができない」などどいって腰が引けてしまうのに、バーニングプロダクションやジャニーズ事務所のような大手所属タレントが痴漢のような犯罪行為を犯しても報道することすらしないのに、ASKAが相手となったらまさにやりたい放題なのである。

 しかも、彼らはそのことに恥じ入る様子はまったくなく、『スッキリ!!』の加藤のように、「ああいう犯罪に手を染めてる人間だから、レコーダーを公開したってもいいんだ」と開き直っている。

 だが、違法薬物使用は、本当に連中が言うような重大犯罪なのか。たしかに、禁止薬物の使用は刑法で罰せられる行為であり、再犯率も約6割と高い。しかし、欧米では、薬物依存症は犯罪ではなく病気として対応するのが主流となってきている。たとえば、アメリカでは1980年代後半から摘発後も刑務所に収容せずに施設に通わせて治療させる取り組みが始まっている。これは「ドラッグコート」と呼ばれるもので、裁判官が回復プログラムを監督し、終了すれば刑事手続きも終えるという仕組みだ。しかも、重要なのはこのプログラムの導入の結果、効果を上げており、再犯率も下がったといわれている。

 こうした薬物依存に対する日本と欧米のスタンスのちがいについて、水道橋博士も本日放送の『バイキング』(フジテレビ)で、こんなふうに語っていた。

「たとえば、アメリカでいうと、多くのアーティストの人が、このハードドラッグをやって体を潰していくけど、そこから再生する物語があるじゃないですか。たとえば、キース・リチャーズでも、アンジェリーナ・ジョリーでも、誰でもいいですよ。そういう薬物からの再生のストーリーっていうものを社会的に認めてあげよう、社会から排除してはならないっていう話があるじゃないですか。そこと一緒に語らないと、どんどんと孤独になるだけじゃないですか。とくに顔がもうすでにわれた人にとっては。その部分をこう、テレビは話し合ってほしいなと思いますけどね」

 薬物依存者を異物として排除するのでなく、社会のなかで包摂していけるよう、報道のあり方もあらためるべきだと。

 ところが、ワイドショーの報道は薬物依存をまるで性犯罪並みの「重大犯罪者」扱いをし、「栄光からの転落した」と、まるでおもちゃのようにいじり倒すことしかしないのだ。これでは更生なんてできるはずもないだろう。

 というか、日本のテレビは最初からきっと薬物犯罪者の更生なんて考えてもいないだろう。それどころか、犯罪を糾弾しようとしているのだって、ポーズに過ぎない。彼らの目的は、自分たちに歯向かう力のない安全な獲物を見つけ、それをいじって見世物にして視聴率を稼ぐ、それだけのことにすぎないのだ。
(本田コッペ)

最終更新:2016.12.02 12:12

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