宮根誠司や木村太郎らが反トランプデモを「民主主義否定」と攻撃! 選挙結果に黙って従うのが民主主義だと勘違いするバカ

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読売テレビ『情報ライブ ミヤネ屋』番組ページより


「トランプは私の大統領ではない」。トランプ勝利に対しアメリカ各地で起こった反トランプデモは、大統領選から1週間経ったきょうも続いている。デモ参加者はトランプの差別的言動を問題視しており、ヒスパニック、イスラム教徒、女性、有色人種、移民、性的マイノリティ、障がい者などマイノリティの人権を踏みにじってきたトランプを大統領にしてはいけないと訴えている。

 アメリカ市民たちがいま抱いている危機感はもっともなものだが、しかし、日本では反トランプデモに対して冷ややかな目が向けられている。

 たとえば、反トランプデモが各地で発生していることを伝えた10日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)では、司会の宮根誠司が「まあー、民主主義で自分たちが選挙で選んだ大統領なんで、デモしなくてもってちょっと思うんですけどね」と揶揄するような発言を口にしていた。

 さらに11日放送の『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)では、トランプ勝利を的中させただけで大きな顔をしている木村太郎が「何に抗議してるんですか、あれ。民主主義に抗議してるんですよ。民主主義で選んだ大統領を『俺たち嫌いだ』って言うのはね、民主主義に対する抗議」と批判した。これはほんの一例で、反トランプデモを伝える報道ではこのようなコメントが差し挟まれる場面が幾度もあった。

 選挙結果へのデモは民主主義の否定だ−−−−。いったい日本のマスコミは何を馬鹿なことをいっているのだろう。そもそも、今回のアメリカの場合、選挙人を選んだ段階で、12月19日の正式投票が控えている。正式投票で覆った前例はないが、その可能性に賭けて就任阻止を訴えることは、政治行動としては当然ありうる。

 しかも、アメリカ国内ではいま、トランプ勝利によってまるで差別が肯定されたような状態に陥り、有色人種や移民たちに対するヘイトクライムが多発しており、デモはそうした行為へのカウンター的な役割も担っている。それを、ヘイトクライムの横行を報道することもなく、あたかも反トランプデモがテロ行為か何かであるかのように伝える行為こそ、民主主義に反したものだ。

 さらにもうひとつ、こうしたコメントが犯罪的なのは、「選挙で決まったら黙って結果に従う」のが民主主義のルールだと勘違いしていることだ。

 改めていっておくが、選挙の結果に対して反対することはけっして「民主主義」と矛盾しない。むしろ、民主主義を守るために市民に与えられた権利なのだ。

 なぜか。それは、代表民主制による多数決が、けっして民意を反映するものではないからだ。有権者は自分たちの選んだ代表者のすべての政治行動をあらかじめ把握できるわけではない。選挙前に票集めのための公約を掲げ、当選後は逆の行動をするケースは多々あるし、選挙前には説明していなかった政策を強行しようとする場合もある。

 選挙制度も欠陥だらけだ。多数決が少数派の意見を切り捨ててしまうというのはよくいわれることだが、実は多くの国で採用されている選挙制度は、「死に票」や「票の割れ」によって、多数意見さえも反映される仕組みになっていない。日本の小選挙区制などは典型だし、今回のアメリカ大統領選でも、アメリカ全体での総得票数はトランプよりヒラリーのほうが上回っていた。

 しかも、代表民主制では、莫大な資金や強力な後ろ盾、組織力をもっているものしか選挙に勝つことができず、結果、一部のエリートや世襲政治家、トランプのような金持ちに権力が集中してしまう。そして、特定の人びとの利害が優先され、実際には民主主義とは言えない状態が生まれてしまう。

 事実、現在にいたる民主主義の礎を築いたルソーは、代表民主制は奴隷制と同じだとまで言っている。

〈イギリスの人民はみずからを自由だと考えているが、それは大きな思い違いである。自由なのは、議会の議員を選挙するあいだだけであり、議員の選挙が終われば人民はもはや奴隷であり、無にひとしいものになる。人民が自由であるこの短い期間に、自由がどのように行使されているかをみれば、[イギリスの人民が]自由を失うのも当然と思われてくるのである。〉(『社会契約論』光文社古典新訳文庫)

 代表民主制は人民主権を否定する──そうした問題があるからこそ、民主主義を維持するために、たとえば多数派が少数派を抑圧する法律をつくらないよう、上位の憲法が禁止する立憲主義は生まれたのであり、多くの民主主義国家の憲法では集会の自由や請願権が認められているのである。

 つまり、デモや抗議活動というかたちの直接行動は代表民主制の欠点を補完するものであり、デモを否定することは民主主義を否定することにほかならないのだ。

 実際、2011年以降に世界で起こったデモは、代表民主制の欺瞞を暴くものでもあった。新自由主義の蔓延によって富の権力が集中するなかで、格差は広がり、福祉予算は削られ、失業率は高まった。そうした政治のあり方に抗議したのがスペインのプエルタ・デル・ソル広場を占拠したデモであり、経済界と政界を否定したのがアメリカのオキュパイ・ウォールストリートだった。そして日本における反原発デモ、安保法制反対デモもまた、代表民主制のなかで排除される市民の危機感が高まった結果、生まれたものだ。

 そうした市民の声を「反民主主義」と捉えることは、まさに代表民主制を奴隷制にまで引き下げる行為である。

 しかも、差別主義者のトランプに抗議するアメリカ市民を貶める日本の報道を見ていると、この国でもヘイトの是認が助長されるのではないかと不安を覚えずにはいられない。事実、トランプが打ち出している移民政策に対しては、「日本も在日を叩き出せ」などというヘイトスピーチがネット上で躍っている。

 そうした意味でも、はっきりと反トランプデモは民主主義に則った正当な権利だと強く主張する必要がある。そして、トランプの差別主義を、アメリカ市民とともに世界中が抗議しなければならない。
(編集部)

最終更新:2016.11.16 05:19

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