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安倍首相が米国の男女平等イベントで「日本は侍の国」と自慢し「経済成長のために女性活用」を主張するトンデモ発言
安倍晋三公式サイトより
現在、アメリカ、キューバと外遊中の安倍首相。本日未明にはカストロ議長との会談で約13億円の無償資金協力を約束、19日に出席した国連総会でも難民支援として2800億円の拠出を発表しており「バラマキ外遊」などと揶揄されているが、そんななか、20日にニューヨーク近代美術館でのイベントで行った安倍首相のスピーチが、にわかに話題を集めている。
この日、安倍首相が出席したのは、『ハリー・ポッター』シリーズでよく知られるイギリスの女優で国連「UNウィメン」親善大使であるエマ・ワトソンがジェンダー平等を達成するべく男性に協力を呼びかけるために立ち上げたキャンペーン「HeForShe」の2周年記念イベント。安倍首相はここでのスピーチで、冒頭から痛恨のミスを犯してしまった。
「エマ・トンプソンUN Woman親善大使のHeForSheの推進における貢献に感謝を申し上げます」
そう、よりにもよってエマ・ワトソンの名前を「エマ・トンプソン」と間違ってしまったのだ。失礼にも程があるが、しかし名前の間違いなんてまだかわいいもの。そう思わざるを得ないくらい、このあとにつづくスピーチの内容は酷いものだった。
たとえば安倍首相は、G7伊勢志摩サミットにてすべての関係閣僚会議で女性の問題を議題として取り上げるように指示したことを「これはG7サミットの歴史上、初めてのこと」と自画自賛。「女性の潜在力を開放していかなければ、日本の経済成長は望めない」とし、こんな話をはじめた。
「日本の経済界に、上場企業には少なくとも重役に1人の女性を入れるように要請しております。私はその際、よくこう申し上げるのです。もし、リーマン・ブラザーズが、リーマン・ブラザーズ&シスターズだったら、破綻しなかっただろう、と」
いやいや、リーマン・ブラザーズには女性重役もいたし、それよりも2015年の国内上場企業の女性役員比率はたったの2.8%にすぎず、まずは国内をどうにかしろよ、という話だ。
しかも、安倍首相のこのジョーク、どうもパクリらしい。他ならぬ安倍首相が2013年12月に行われた「日本女性エグゼクティブ協会発会式」で、こう語っていた。
「ハフィントン・ポストで有名な、アリアナ・ハフィントンさんは、この9月にもニューヨークでお目にかかりましたが、ハフィントンさんが、かつてこう語ったと言います。「もし、リーマンブラザーズが、リーマンブラザーズ&シスターズだったら、今も隆々と仕事を続けているのではないか」ということであります」(首相官邸HPより)
ようするに、女性ジャーナリストに聞いた話をそのまま「ボク、よくこんな話をしてるんですよ」とあたかも自分が考えついたジョークのように語っていたのだ。
だが、不幸なことに安倍首相の恥ずかしすぎるスピーチにはまだつづきがある。安倍首相は、「エマ・ワトソン親善大使が色々なところで訴えられておられるように、いまだかつて男女平等を実現した国はありません」と言うと、「しかし、私は「女性が輝く社会」を必ず実現させていきたいと考えています」と述べた。──男女平等を実現するための場なのに、なんで実現するのが「女性が輝く社会」になっちゃうの?と首をひねらざるを得ないが、安倍首相はスピーチをこう締めた。
「日本はいわゆる侍の国として、非常に保守的な国でもあります。しかし、日本が変われば世界が変わっていくと聞いています。みなさん、ともに世界を変えていこうではありませんか」
もう何から何まで意味不明である。男女平等を語る場で「日本は侍の国で保守的」と胸を張ってどうする? しかも、「日本が変われば世界が変わると聞いています」って、いったい誰に聞いたというのか。「日本はサムライ」「日本はスゴイ」って、この人は日本会議の集会か何かと勘違いしてるんじゃないか、と本気で心配になったほどだ。
いずれにしても、安倍首相がいくら空気に合わせてポーズをとってみても、ジェンダー平等なんて概念はハナからもち合わせていない、ということはよく理解できた。「HeForShe」は女性に対する暴力や差別をなくすためには男性の協力が必要だと訴えているのに、そういうことには一言も呼応せず、結局「経済成長」の一点張り。スピーチで安倍首相は「これまで女性の参画は社会政策という位置付けでありましたが、安倍政権ではこれを経済政策と位置付け、アベノミクスの中心政策としてまいりました」と述べたが、深刻化する女性の貧困や是正されない男女間の賃金・雇用格差をはじめ、まずは社会政策として女性の問題に取り組まなくては、ジェンダー平等なんて夢のまた夢だ。
だいたい、「女性が輝く社会」という経済政策は、女性に対して一方的に「子どもを産め。かつ働け」と強いるものだ。しかも、そんなことを強いておきながら子育て支援や男性の家事・育児参加、介護問題はおざなりなままで、結局、女に仕事も家事も子育ても介護もすべて押し付けるご都合主義。なるほど家父長的な「侍の国」であることは間違いない。
だが、安倍首相は今回の外遊で、女性差別的な政策を恥ずかしげもなく誇っただけではなかった。安倍首相は19日、国連サミットでの演説で「難民問題の解決に主導的役割を果たす」と述べ、前述したように難民支援として2016年から3年間で2800億円を拠出すると発表。さらに21日には新たに100億円規模での支援を約束した。しかし、肝心の難民受け入れは、伊勢志摩サミットで表明した今後5年間でシリア人留学生を最大150人受け入れる、というものでしかない。
「主導的役割を果たす」と豪語しておいて、5年でたったの150人──。こうした難民支援に対する安倍首相の対応に、欧米では批判的な見方が広がっている。実際、この日本の難民支援の資金拠出策に対して、欧米のサイトでは「移民を受け入れない代償」「国連安保理の席を買うための試み」などという批判が溢れたという(東京新聞9月22日付)。
欧米から失笑される安倍首相の政策。それを裏付けるのが、21日付けのイギリスBBCの記事だ。記事はヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの政策スタンスを世界の指導者たちと比較したものなのだが、このなかの「移民」政策スタンスの比較で安倍首相が登場。その評価は“トランプ以上に国を閉ざすリーダー”となっているのだ。
この記事では、移民に対して国境を開こうとする立場を取るほど数字が小さく、数字が大きいほど移民に厳しく閉鎖的な立場を取るというグラフをつけており、このなかでヒラリーは「2」、トランプは「壁を築いてメキシコに支払わせる」などといった主張を「8」に位置。そして安倍首相はいえば、“移民を制限する政策をとり続けている”とし、トランプより閉鎖的な「9」と評価されている。
ゼノフォビアの象徴的存在で差別発言を繰り返し、世界中から危険人物として注目を集めるトランプよりも上──。安倍首相の国際的評価がいかに厳しいものであるか、これでおわかりいただけるだろう。
「女性が輝く社会」の問題しかり、難民・移民問題しかり、海外から失笑され国際的な信用も損なう政策を勝ち誇ったように強調する安倍首相。このような恥の上塗りは、もう勘弁してほしいものだ。
(水井多賀子)
最終更新:2017.11.12 02:44
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