参院選“改憲隠し”はテレビも同罪! 結果が出たとたん「改憲勢力3分の2確保」「バックに日本会議」と後出しジャンケン

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自由民主党2016年特設サイトより


 昨日、投開票された参院選は、自公とおおさか維新の会などの改憲勢力が非改選と合わせて憲法改正の国会発議に必要な3分の2議席以上を確保した。安倍首相はこの選挙戦において、遊説で憲法改正について一度も言及することなく、「争点隠し」を行ってきたにもかかわらず、だ。

 まさに安倍首相が国民を“騙し討ち”したとしか言いようがない結果だが、しかし、そうした改憲勢力と同じように国民を騙してきたのは、テレビも同じだ。

 昨日、開票が開始された昨晩20時前からNHKおよび民放各局は一斉に選挙特番を放送したが、そこでは今回の選挙の争点が「憲法改正」であることを全面に打ち出し、出口調査結果を発表するなり「改憲勢力が3分の2議席を確保する見込み」「憲法改正発議可能に」「野党共闘ふるわず」などと伝えはじめたからだ。

 ……目がテンになるとはこのことだろう。この参院選の間、ほとんどのテレビは改憲の問題を無視していたんじゃなかったのか。そして、安倍政権の誘導に乗っかってあたかもアベノミクスが争点であるかのような報道を展開していた。いや、そのアベノミクスの検証さえ行わず、むしろ参院選のニュースを最小限に留め、今月末の都知事選のことばかりを取り上げる始末で、きちんと参院選の改憲問題をピックアップしていたのは、『NEWS23』『報道特集』などのTBSの報道番組と、テレビ朝日の『報道ステーション』くらいだったではないか。

 それを、いざ投票が終わった瞬間から「憲法改正発議可能に」などと言い出すのは、完全に視聴者に対して「争点隠し」を行ってきた証拠だ。

 しかも、である。NHKでは選挙前は参院選の話題を最小限にとどめていたのに、いまごろになって“SNSでは「憲法」や「改憲」などのトピックに注目が集まっていた”などと紹介したり、民放でも日本会議などの安倍政権をバックアップする改憲団体にスポットを当てたり、フジテレビにいたっては自民党の憲法改憲草案を解説したりしていた。そうした憲法改正の裏側や問題点を報道することは間違っていないが、でもそれは投票の前に伝えろよ、という話だ。

 こうしたテレビの“後出しジャンケン”に対して、モヤモヤした気持ちを抱いた人は少なくなかっただろう。それを象徴するように、デーブ・スペクターは昨晩、こんなツイートを投稿している。

〈選挙終わってから候補や政党や支援団体のことを特番で見せられてもどうしろと言うんですか? 遅いだろう!全く役に立たない。メディアが公職選挙法の改正を大優先にしないなら開票特番やめて全部アニメでいいです。オチはありませんm(__)m〉

 お決まりのダジャレも封印してデーブが憤るのも当然だ。憲法改正の危険性を伝えても、時すでに遅し。実際、安倍首相は「国民はバカだから黙っていれば気づかない」と言わんばかりに憲法改正の争点隠しを行ってきたにもかかわらず、「(改憲は)政権公約にもしっかりと書きこんでいる」などと開き直り(無論、マニフェストではいちばん最後、ほんの少しの文章でしか触れていない)、「(国民の意見は)国民投票で聞く」と言って、争点隠しを正当化しはじめている。

 そして、この安倍首相の“確信犯”に加担し、憲法改正の問題を報道せずに隠してきたテレビも、視聴者を欺いてきたことに責任など感じていない。

 その実例を示したのは、やはりフジテレビだ。選挙特番内では、前述のように自民党の憲法改正草案を紹介し、その上で改憲勢力が3分の2議席を越える結果となりそうだとしれっと解説。そしてゲストとして出演していたSEALDsメンバーの奥田愛基氏に司会の伊藤利尋アナが「奥田さんはこの結果をどう思っているのか」と話題を振った。そのとき、奥田氏はこのように発言した。

「世論調査によったら3分の2を超えたら何ができるのかわからない国民が6割以上いた。今回、結果を受けては憲法改正の発議があるんじゃないかという話が多いんですけど、でも選挙期間中に全然その話題になっていなくて、なんで終わった瞬間にこんな話になるのか、テレビをご覧のみなさんも『あれ、憲法改正が今回争点でしたっけ!?』っていう人が多いんじゃないかと」

 憲法改正の話題なんて選挙中はニュース番組でも全然出てこなかったのに、どうして選挙が終わったそばから「争点は改憲」と言い出すのか──。この発言はまさしく多くの視聴者が感じた違和感をぶつけたものだったが、しかし、対して司会の宮根誠司は、「あー。逆にね。うん、やはりアベノミクス中心ということもありましたが」と言い、すぐさま別の話題に移したのだ。

「逆にね」って、何が「逆」なのだろうか。逆ではなくて、“争点は改憲”だとわかっていたのに「アベノミクス中心」にミスリードしてきたのは、ほかならぬ宮根をはじめとして報道する側にいるテレビのほうだ。そうした視聴者への“背信”を、宮根は安倍首相と同じで悪びれる様子もない。

 この調子だと、国会で憲法の改正発議がなされ、ついに国民投票にもちこまれても、テレビは今回と同様に安倍首相の顔色を伺い、政権に不都合な改憲の問題点や、その危険な内容が検証されることはないだろう。そして、今回の参院選と同じように、国民は深く考える機会を奪われたまま投票を迎えることになる。

 ジャーナリズムの役割や責任を放り出し、視聴者ではなく政権に“有益”な報道しか行わないテレビ。参院選における安倍首相の国民への騙し討ち行為もさることながら、メディアによる犯罪的な報道姿勢もまた糾弾に値するものだ。
(編集部)

最終更新:2016.07.11 07:16

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