橋下徹がバラエティ復帰で“いい人”アピールするも、「保育園対策やっても、お母さん方は選挙に行かない」と切り捨て発言

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橋下徹オフィシャルウェブサイトより


 ついに昨晩、あの男がバラエティに“出戻り”してきた。しかも、恫喝めいた得意のマシンガントークは封印し、しおらしい顔をして──。昨日、ゴールデンタイムに3時間にわたってテレビ朝日で放送された『橋下×羽鳥の新番組始めます!』(テレビ朝日系)に出演した、橋下徹のことだ。

 番組では冒頭から、橋下氏とタッグを組むことになった羽鳥慎一が「(若い視聴者は)怖いおじさんと思ってる」と話を振ると、橋下氏は「記者とのやりとりやってて、怒ってるところだけを何回も何回も繰り返し放送される」「たしかテレ朝の番組でも、羽鳥さんの番組でもそういうふうにやられてましたよね?」と苦言を呈したかと思えば、「じつは(怖くはなく)人がよかったですよと言うつもりはないので、素でやらさせてもらいたいです」とにこやかに宣言した。

 が、その言葉とは裏腹に、「最近のチョコは高すぎる」「キットカットを舐めてウエハースを食べるのが好き」「ゴルフは嫌い」という庶民アピールから、「いまの妻とは学生時代、銭湯でひとつのシャンプーを塀越しに渡して使っていた」「娘のピアス穴を自分がひとつ開けた」などという愛妻家&仲良し家族アピールを橋下氏は終始繰り広げ、あきらかに“いい人”を演じていた。

 いや、あなたってそもそも茶髪弁護士時代からゲスな発言で売っていたし、大阪市長時代も「週刊文春」(文藝春秋)に“ラブホでコスプレ不倫”をスッパ抜かれたときには、不倫の事実と「コスプレ好き」を認めた上で、「娘に制服を着ろと言えなくなった」なんて気持ちの悪い話を堂々としていたではないか。それをいまさら温厚そうなイメージでテレビに出戻り、「これが素です」と言われても……。

 挙げ句、橋下氏は、弁護士志望の学生に向かって、こんなことまで言いのけていた。

「法律使っての仕事なので、とにかくひとつ、権力っていうね、僕はちょっと権力側のほうに立ってたけども、これをコントロールする唯一の手段が法律なわけなんで。これがしっかりしてないと、ほんとに独裁国家みたいになって、めちゃくちゃになってしまうから」

 集団的自衛権の解釈改憲を立憲主義に反しないと言った橋下氏が、まさか立憲主義の説教をぶつとは! 御説ごもっともだが、独裁政権に手を貸すあなたには言われたくない話である。

 だが、それ以上にタチが悪かったのは、保育園問題についての物言いだ。

 番組では討論スタイルの構成だった第二部で、社会学者の古市憲寿氏が「保活っておかしくないですか?」と、保育園問題を俎上に載せたのだが、橋下氏はすかさず「これはホントそうですよ!」と言い、こう続けた。

「保育所というか子ども預ける場所どんどんつくっていかなきゃいけないんですけど、保育所ってもともと儲かる仕組みじゃないから、どっかで税金入れなきゃいけないじゃないですか。でも、税金を入れる対象っていうのがものすごく絞られてるんですよ」

 そして橋下氏は、税金を投入できるように保育園の認可基準を緩める必要がある、と主張したのだ。

 よくその口で言うな、という話だ。というのも橋下氏は、大阪市長時代に保育士の給与が〈民間と比べて物凄く高い〉(2012年11月12日の本人のツイッターより)と言い、保育士の給与を大幅に引き下げるプランを発表。保育士不足に拍車をかけるような政策をぶち上げてきた張本人だからだ。

 しかし最近では、今回の発言同様、あたかも保育園問題に理解のある“いい人”アピールに橋下氏は余念がない。実際、3月6日には、こうツイートしている。

〈保育士の資格要件を拡げるのと、ここは税金を突っ込んで給料を上げれば良いです。一般的な法人税減税に僕は賛成ですが特定企業への政策減税には反対。政策減税に1兆円以上の税金が使われています。それを保育士給料へ〉

 さすがは“西の安倍晋三”、すさまじい二枚舌である。だが、なぜ橋下氏は、いわく「私人」「民間人」になったいま、ここまで“いい人”偽装をしようとするのか──。それはもちろん、彼は「私人」でも「民間人」でもなく、いまも政界に足を突っこんでいるからだ。

 番組冒頭では、羽鳥氏が「立候補しないですよね? 何にとは言いませんけど」と質問すると、「それやったら、ホントもう、人間としてダメですよ(笑)。ないです」と、参院選出馬を否定した橋下氏。しかし、ご存じの通り、橋下氏は現在もおおさか維新の会の「法律政策顧問」というポストに就いている。以前も本サイトで指摘したが、これは名誉職でもなんでもなく、事実、橋下氏はおおさか維新の会の参院選に向けた公約や政策などを話しあう会議に参加したり、おおさか維新が擁立候補の発掘を目的で設立した「維新政治塾」にも出席している。つまり橋下氏は、「政界引退」どころか事実上の“オーナー”として、国政政党の“院政”を行っているのである。

 その上、おおさか維新の会代表・松井一郎大阪府知事は、これからも党の方針などについて橋下氏から「さまざまなアドバイスをもらう」と公言。おおさか維新側も“橋下氏が党の顔”というイメージ戦略を発信しているのだ。

 だからこそ橋下氏は、参院選を控えたいまこそテレビにガンガン出演し、“政党の顔”として自身と党のイメージアップを図る必要がある。番組では「(自分は)民間人」と何度も言っていたが、そんな民間人がいるわけがない。これは明らかなダブルスタンダードであり、4月から橋下氏がレギュラー出演することは「政治的公平」に反し、放送法にも抵触しかねない問題だ。

 ただ、いくら“いい人”を強調したくても、うっかり素が漏れてしまう場面が昨晩の放送では何度もあった。たとえば、ロケで出向いた母校の早稲田大学で、橋下氏が学生相手に五木寛之の『青春の門』のストーリーについて滔々と語り、それに対して学生が鼻で笑うような表情を見せると、橋下氏は「朝日新聞の記者だったら、もうスイッチ入ってる」と一言。さらに、学生時代に通っていた資格スクールで、学校側が“橋下氏が在籍していた事実を在校生に伝えていない”ということがわかると、「(この学校は)反橋下なのかなって」。これには羽鳥氏も「民間人として生きていく上で“反橋下”とか、そういうのはない」とツッコんでいたが、どうやら橋下氏のなかでは、いまだに“自分は抵抗勢力に阻まれて戦っている”という仮想敵づくりがつづいているらしい。

 だが、もっとも化けの皮が剥がれたのは、前述した保育園問題の際だ。古市氏が「保育園の義務教育化」について語ると、橋下氏はそれも可能だと反応したが、ついでにこんな話をはじめたのだ。

「(保育園の義務教育化を)政治家、旗振ればいいの。でも、それやったところで、そういうお母さん方って票をくれないんですよ。僕らも一生懸命若いお母さん方のためにいろんなことやるんだけれども、そういう人たち無関心だから、選挙行ってくれないじゃないですか」

 自分にとって都合が悪い有権者は「無関心」と切り捨て、他方で「多数決」「民意」を振りかざす。ここで“素”の橋下徹の顔があらわれたが、果たしてどれだけの視聴者が橋下氏の二枚舌や矛盾に気づいただろうか。現にネット上では「橋下さん、やっぱおもしろい」「ものをはっきり言うところがいい!」という感想も見られた。

 ちなみに橋下氏は、今月21日に広島市で行った講演で、「(憲法改正は)今度の参院選がワンチャンスだと思っている。泣いても笑っても、ここを逃せば、10年、20年と憲法改正の機会は遠のく」と語ったという。大阪都構想のときも「ワンチャンス」と繰り返していたが、4月からのレギュラー番組でも「憲法改正はワンチャンス」と喧伝するつもりなのだろうか。
(大方 草)

最終更新:2017.11.24 09:15

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