国連の「表現の自由」調査を拒否! 安倍政権が国際社会から隠したがった“報道への圧力”全事件簿

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衆議院議員 安倍晋三 公式サイトより


 安倍政権が、日本における「表現の自由」の状況を調査する国連特別報告者、デイビッド・ケイ氏(米カリフォルニア大学教授)の公式来日を、直前でキャンセルしていた問題をご存知だろうか。
 ケイ氏は、昨年12月1日から8日の日程で来日し、政府担当者への面接や市民団体への聞き取りを行う予定だった。報道によれば、施行から1年が経つ特定秘密保護法の現状や、自民党が報道番組をめぐってテレビ局関係者を呼びつけた問題などを調査するはずだったという。
 ところが、来日直前の11月中旬、日本政府は「受け入れ態勢が整わない」などとして、ケイ氏の調査を一方的にキャンセルしてしまったのだ。しかも、延期された具体的日程はいまだに決まっていないというのである。事実上のトンズラだ。
 しかし、安倍政権がやってきたことを考えると、今回、国連調査からバックレたのは、ある意味当たり前かもしれない。というのも、安倍政権が起こした言論弾圧、報道への圧力の数々をまともに調査されてしまうと、報告書で「表現の自由が十分保障されていない」という烙印を押されるのはほぼ間違いないからだ。
 それは、国際ジャーナリストNGO「国境なき記者団」が毎年発表している「世界報道の自由度ランキング」を見ても明らかだ。
 ほんの5、6年前まで、日本は10位台に位置し、世界でもトップクラスに報道の自由があるとみなされてきた。だが、第二次安倍政権発足後の2013年から急転落。53位(13年)、59位(14年)と順位は下げ止まらず、ついに15年には過去最低の61位を記録した。これは、東アジアでは台湾(51位)と韓国(60位)よりも下で、南米のガイアナ(62位)やドミニカ共和国(63位)、アフリカのマダガスカル(64位)とほぼ同じ評価だ。同ランキングでは5段階中3段階目の「顕著な問題」レベルに相当する。
 おそらく、国連が調査をしても同様の評価を下すだろう。いや、それどころか、もっと言論統制国家の烙印を押される可能性もある。そうなれば、日本国民も自分たちが“知る権利”を侵されていることに気づき、批判の声を上げ始めるかもしれない。おそらく連中はそう考えて、調査を拒否したのだろう。
 しかし、安倍政権が隠すならば、リテラが改めてその実態を突きつけてやろう。世界よ、これが2015年に起きた安倍政権による「報道への圧力」全事件簿だ!

■『報道ステーション』人事の裏にあった圧力! 古賀茂明には菅官房長官がオフレコ懇談とメールで恫喝

 まず、筆頭に挙げなければならないのは、テレビ朝日『報道ステーション』問題だ。先日、キャスターの古舘伊知郎氏が今年3月末での降板を表明したが、これもベースにあるのは、明らかに官邸からの圧力だった
 安倍官邸は一昨年9月の川内原発報道をめぐるBPO審査を口実に、テレ朝上層部への介入を始め、昨年4月には、『報ステ』の報道姿勢を守ってきたチーフプロデューサーを更迭、コメンテーターの恵村順一郎氏そして古賀茂明氏を降板させてしまったのである。
 とくに、古賀氏については、昨年1月、「I am not ABE」発言に官邸は激怒、相当な圧力をかけていたという。
 その古賀氏は、最後の生放送出演時に「菅官房長官をはじめ、官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきた」などと発言。圧力による降板である事を暴露したが、慌てた古舘氏と口論になって、世間からは「古賀の被害妄想だ」「陰謀論だろ(笑)」と冷笑された。
 だが、古賀氏の主張には客観的な根拠がある。実は2月、菅官房長官は、記者とのオフレコ懇談ではっきりと古賀氏を攻撃していたのだ。その「オフレコメモ」にはこう書かれていた。
「ひどかったよね、本人はあたかもその地に行ったかのようなことを言って、事実と全然違うことを延々としゃべってる。放送法から見て大丈夫なのかと思った。放送法がある以上、事実に反する放送をしちゃいけない。本当に頭にきた。俺なら放送法に違反してるって言ってやるところだけど」
 ようするに、菅官房長官自らが、放送法を盾にして、古賀氏への恫喝、テレ朝に対する圧力を記者の前で告げていたのだ。さらにその後「週刊現代」(講談社)の報道で、「I AM NOT ABE」放送の直後に菅の秘書官から『報ステ』の編集長の携帯電話に「古賀は万死に価する」というショートメールが入ってきたことも判明した。
 圧力の存在は誰がどう見ても明白だが、不可解なことに、新聞など大手マスコミは、この決定的証拠の存在にほぼ沈黙。政府を批判することも古賀氏を擁護する事も一切なかった。
 対する自民党は、テレビ朝日幹部を呼んで事情聴取を行い、BPO申し立ても検討すると脅すなど、やりたい放題。その結果が、古館氏の降板、『報ステ』の事実上の解体だったのである。
 『報ステ』は官邸に殺された、そう言っても過言ではないだろう。

■大越キャスター降板、安保報道での“国営放送”化で大本営発表!籾井NHKは完全に

 他方、『報ステ』の川内原発報道問題とともに、『クローズアップ現代』がヤラセ疑惑で自民党に呼ばれ、BPO案件入りしたNHKはどうだっただろうか。むしろ、籾井勝人会長はこれを機に、安倍政権に批判的な報道をする『クロ現』を番組改編で葬り去ろうとしている。
 また、テレ朝が古賀茂明問題で揺れていたほぼ同時期、NHKの看板報道番組『ニュースウオッチ9』では、5年間キャスターをつとめた大越健介氏が降板した。突然の決定で大越氏自身も寝耳に水、上層部になぜなのか?と食い下がったというが、ここにも官邸の影がちらつく。原因は大越氏が原発問題に関心が強かったからだとも言われているが、籾井会長を頂点とするNHK上層部が安保法制の審議などを控えていた昨年、少しでも政権に楯突く可能性のある人物を番組の顔役から降ろすことで恭順の意を示したと見る向きも強い。
 安倍官邸が昵懇の仲である籾井会長を通じてNHKを手なずけていることは有名だが、実は昨年、NHKは“国営化”に向けてまた一歩前進している。きっかけは9月、自民党側が受信料の支払い義務化を検討するよう総務省に求めたことだ。籾井会長も前向きな姿勢を見せ、マイナンバー制度の活用も検討したいと表明。その場合、罰則規定を含む法的拘束力は国が担保するため、NHKは事実上の“国営化”へと一気に傾く。
「NHKは国営放送ではありません。(略)これからもこれまで同様の報道姿勢を貫いていきたいです」
 そう就任会見の場で語ったのは『ニュースウオッチ9』の後任キャスターである河野憲治氏だが、結果はとんでもないものだった。NHKは安倍首相の「早く質問しろよ!」ヤジなど安倍政権に都合の悪いことは一切報じず、衆院特別委での安保法強行採決の中継すら行わなかった。官邸と上層部が強固に結びついた結果吹き荒れる“自粛”の嵐。もはや、NHKは戦中の“大本営”とほとんどかわらない状態になっている。

■放送法違反は安倍政権のほう!別働隊で『NEWS23』キャスターを降ろし、一方生出演した『ミヤネ屋』では……

 安倍政権が得意とする報道圧力の手法には、御用マスコミや民間団体を動かすことで、特定のメディアやジャーナリストを狙い撃ちにするというものがある。
 象徴的だったのが、『NEWS23』番組アンカーの岸井成格降板騒動だろう。
 昨年11月、「放送法遵守を求める視聴者の会」なる民間の団体が突如、安保法制で安倍政権に批判的なコメントをした岸井氏を放送法違反だとする意見広告を読売新聞、産経新聞に出稿。これに震え上がったTBS上層部は岸井氏と膳場邦子キャスター2人の降板をひそかに決定してしまった。
 だが、この「視聴者の会」は、自民党が下野していた時期に、安倍首相をもう一度首相に復帰させることを目的につくられた「2012年安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」と呼びかけ人がかなり重なっている。
 しかも、「視聴者の会」の事務局長は、安倍復活のきっかけをつくった礼賛本『約束の日 安倍晋試論』(幻冬舎)の著者で、安倍首相の資金管理団体が同書を数百万分爆買いしていたことも明らかになっていた。

 つまり、今回の降板騒動は、安倍政権に批判的な『NEWS23』と岸井氏を潰すために、安倍別働隊が仕掛けた謀略だったのだ。
 そもそも、安倍官邸とそのシンパたちは自分たちへの批判報道を「放送法」違反と攻撃するが、これは逆だろう。放送法は、“公権力が「放送の不偏不党」「表現の自由の確保」を保障する”(第1条)、「放送は何人からも干渉されない、規律されない」(第3条)と定めている。第4条の“政治的公平”も公権力から独立した報道を保障するための業者の倫理規定にすぎない。
 むしろ、公権力と市民が保持している情報の量や質の差を考えると、報道機関が、政権が流す情報を徹底して検証・批判してはじめて、政治的公平が保たれるのだ。 
 そういう意味では、むしろ安倍政権の言い分をそのまま垂れ流した番組こそ、国民の「知る権利」を阻害しているのである。
 たとえば、読売テレビ『情報ライブ ミヤネ屋』だ。最近も、番組に定期出演していたジャーナリスト・青木理氏が、政治的にリベラルなスタンスと安倍政権批判が原因で首を切られたことを本サイトで伝えたが、安保法制の国会審議中に安倍首相が生出演した9月4日放送でも、コメンテーターの日本テレビ報道局解説委員・青山和弘氏がこんなトンデモ発言を口にした。
「たとえばこのあと、この法案が廃案にされては困りますので、うまくこう、巻き込んでいく。その努力の姿を見ていく必要がありますよね」
 問題点はひとつも挙げず、平気で“安倍目線”で政権の広報のような解説を垂れ流す。ここに国民の知る権利を守るための“権力の監視”は存在しない。ようするに、「公平中立」を名目にして批判報道を潰し、マスコミを翼賛報道だらけに仕立て上げていく、それが安倍政権のやり口なのだ。
 そういう意味では、放送法違反は安倍政権のほうなのである。

■安倍チルドレンが「マスコミを懲らしめる」発言、しかも批判されると『朝生』トンズラ!

「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」
「不買運動をするよう働きかけるべき」
「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」
「言論の自由」や「報道の自由」を真っ向から否定するこんなトンデモ発言が飛び出たのは、昨年6月、自民党の若手議員勉強会でのこと。
 スポンサーという“急所”を経由して圧力をかけ、政権批判を封じるという、卑劣な発想。しかもこの会に、安倍チルドレンたちがゲストとして呼んだ百田尚樹氏にいたっては、「本当に沖縄の2紙はつぶさなあかん」と、琉球新報と沖縄タイムスを攻撃。堂々と言論弾圧を宣言したのだ。
 こうした発言はさすがに国民の間から強い反発の声が上がったが、唖然とさせられたのは、その世論の批判に対する自民党の対応の仕方だった。
 例の自民党勉強会での発言が報じられてから2日後の26 日、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)の収録があった。
 この日の放送では、安保法制を中心テーマに与野党の若手議員が討論する予定だった。だがなんと、自民・公明の議員は全員欠席。しかも、安保審議で形勢不利の自民党は、本部が直々に議員に出演禁止を命令していたという。さらに、25日の夕方になって『朝生』側が一人だけ確保したという自民党議員も、放送数時間前になってドタキャン……。
 いつもは「政府与党側の意見も取り上げろ!」とがなっておきながら、劣勢になるとトンズラ。これは、安倍政権がいう「偏向」「公正中立ではない」というのが完全にペテンであることの証左。国民の「知る権利」など、安倍政権の頭のなかには存在しないのである。


■週刊誌への訴訟圧力と“根回し”で金正日なみの情報統制が進行中! 安倍死亡の報が禁忌になる日も近い!?

 安倍政権の圧力は週刊誌メディアにも及んでいる。昨年夏から秋には、各週刊誌が相次いで安倍首相の“健康問題”を記事にしたが、安倍首相は、そこで法的措置をチラつかせ、記事の撤回を求めた。言っておくが、総理大臣は一国の行政の長である。取材や関係者の証言を通じ、健康状態を報じることは、国民の関心が極めて高く、また公共の利益という観点からも、制限されていいわけがない。
 もっと陰湿な手も使っている。昨年7月、「週刊ポスト」(小学館)編集長の三井直也氏が就任わずか1年で更迭、代わりに前編集長の飯田昌宏氏が返り咲くという前代未聞の人事があったが、その原因は、高市早苗総務相の秘書官をつとめる実弟が関与したとされる「高市後援会企業の不透明融資」問題や、菅義偉官房長官が代表をしていた自民党神奈川県連への「3000万円迂回献金疑惑」など、三井体制の「ポスト」が毎号のように政権スキャンダルを特集していたことだった。
 官邸は高市氏の実弟に「ポスト」の三井編集長、発行人や担当編集者、ライターらを民事、刑事両方で告訴させるという強圧的手段に出る一方で、小学館上層部を揺さぶり。「編集長更迭は、官邸と小学館の間で、何らかの裏取引があったのではないか」ともいわれている。
 本来、週刊誌ジャーナリズムは、新聞やテレビメディアが及び腰になるグレーゾーンへ果敢に切り込むことがその役割のひとつであるはず。しかし、週刊誌業界全体の不況化で、訴訟圧力に一層弱くなっているのが現実だ。そうした状況を見越しての圧力……。安倍政権は、ありとあらゆる批判を封じ込めようとしている。

■安倍批判の海外メディア特派員に外務省が「反日」攻撃! 世界中に恥を発信し続ける安倍政権

 安倍政権の報道圧力は海外にまで波及している。昨年4月、ドイツの保守系高級新聞紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」(FAZ)の記者、カーステン・ゲーミス氏が、日本外国特派員協会のウェブサイト上で行った告白は、まさに衝撃的なものだった。

「私が離れようとしているこの国は、2010年の1月に私が到着した国とは別のそれになっている。表面上は同じように見えるけれども、日本社会の雰囲気──それは最後の1年間の私の記事に一層反映されているのだが──は、ゆっくりと、しかし著しく変化していっている」
 ゲーミス記者によれば、民主党政権下で受け入れられてきた海外ジャーナリストと当局の議論が、安倍政権が誕生した頃から風向きが180度変わったという。
「実際、海外特派員から官僚へ聞きたいことは長いリストになった。エネルギー政策、アベノミクスのリスク、憲法改正、若者世代のための機会、地方の過疎化。だが政府を代表して海外メディアに快く話してくれる人は、ほとんどゼロだった。そのうえ、その安倍首相が勇ましく叫ぶ新構想を批判するものは誰でもあっても、“反日”などと言われた」
 そして、ゲーミス記者が安倍政権の歴史修正主義を批判する記事を書くと、政府は、外務省を通じて「中国の反日プロパガンダに利用されている」というデマ攻撃で、圧力をかけてきたのだ。総領事に記事の誤っている点の説明を求めるも無視され、外交官は「金が絡んでいると疑わざるをえない」とすら言いはなったという。ゲーミス氏はこう記している。
「外交官は、中国のプロパガンダ記事を書かねばならないのは中国へのビザ申請を認めてもらうためではないのかと解釈していた。
 私が? 北京へ行くために金で雇われたスパイだって? 私は中国へ行ったこともなければ、ビザの申請すらしたこともない」
 他にもゲーミス氏は、政府が海外特派員と会食し懐柔する作戦に出ていることも告発している。国内のみならず、海外メディアや記者にまで圧力をかけ、しかもネット右翼なみの陰謀論をまくしたてる……。なんという恥知らずだろうか。
 仮に、この国の評価を下げるような行為をすることを「反日」「売国」と呼ぶのならば、まさに安倍政権こそが「反日」「売国」であるとしか言いようがない。

■安倍政権で“表現の自由後進国”に……すでに骨抜きの表現の自由が、憲法改正で崩壊する!

 このように2015年に起きた安倍政権の“報道圧力事件簿”を簡単に振り返ってみても、今、この国をめぐる言論・報道の自由はどんどん制限されて、情報統制化が進行していっていることがわかるだろう。

 そうした状況のなか起こったのが、冒頭にあげた安倍政権による“国連調査拒否”だったのだ。自分たちに都合の悪い報道は握りつぶし、ジャーナリストや言論人を血祭りにあげ、メディア上層部を懐柔することで翼賛報道機関に仕立て上げる……。繰り返すが、こうした安倍政権の所業が表現の自由への意識が高い欧米で広まれば、日本の国際的信頼は地に堕ちる。しかも、安倍政権の戦前回帰的傾向を考えれば、海外からの批判ですら、「レッテル貼りだ」「日本を貶める」などとわめき、暴走しかねない。

 そして、今年2016年。夏の参院選の後には、安倍首相はついに憲法改正に踏み切ると言われている。言うまでもなく、国民投票で反対が上回れば安倍は退陣せざるを得ない。ゆえに、いままで以上のメディアコントロール、報道圧力を強め、情報を統制、世論を誘導しにかかるだろう。

 日本国憲法第21条にはこうある。〈集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する〉。昨年の安保法制も明確に憲法違反だったが、安倍政権はすでに、この第21条をも空文化させていると言えるだろう。しかも、自民党改憲案では緊急事態条項の新設により、第21条も制限する見込みだ。

 かつて言論の自由を公権力に奪われたこの国が進んだ道を、いま再びたどってよいのか。2016年は、その分水嶺となるだろう。
(編集部)

最終更新:2016.06.21 07:31

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