日本の税制はトヨタのためにある! 国民への課税強化の一方でトヨタは1200億円の減税、そのからくりとは?

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『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』(ビジネス社)

 今年10月から順次、マイナンバー(社会保障・税番号制度)の通知カードが各家庭に送付される。2016年1月の本格開始に向けたカウントダウンが始まるのだ。この制度はもともと税務当局が富裕層などの所得を把握し課税漏れを防ぐことを目的に導入されるものだが、行政機関で年金、医療、納税などの情報が一元管理できるようになれば、アメリカのように軍隊が経済的に貧困状態の学生をピンポイントでリクルートする、いわゆる「経済的徴兵制」の実現に近づくことができる。対中国戦争に突き進む安倍政権が導入に躍起になるのもわかるだろう。

 そもそも、公平な課税をしようというなら、マイナンバー制度を導入するよりもまず、あのとんでもない制度を見直すべきではないか。

 その制度とは、租税特別措置。特定の政策目標を達成するため、税制上の特例として租税を減免あるいは増徴する措置だが、多くは法人の減税が中心の「政策減税」となっている。財務省の2013年度「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」によれば、法人税関係特別措置の適用総額は5兆3277億円に及ぶ。これは法人税の抜け穴とされ、法人の税負担は実はそう重くはないのだ。

 法人税の抜け穴の最たるものは、03年に導入された「研究開発費」。『税金を払わない奴ら』(大村大次郎/ビジネス社)には、こう書かれている。

「この制度をざっくり言うと、大企業の税金を20%割引するものだ。(略)研究開発をした企業はその費用の10%分の税金を削減する。限度額はその会社の法人税額の20%である。それが結果的に大企業の法人税を20%割引にすることになっているのだ」
「また減税の対象となる研究開発費の範囲は非常に広いものだったので、大企業のほとんどはこの研究開発費減税を限度額ギリギリまで受けることができたのだ。研究開発費の限度額は法人税額の20%なので、限度額ギリギリまで研究開発費減税を受けるということは、事実上、法人税が20%下げられたのと同じなのである」

 こうした政策減税の恩恵を一番受けているのは、日本を代表する企業であるトヨタ自動車(以下、トヨタ)だ。

 15年3月8日付「しんぶん赤旗」は、13年度に6240億円にのぼった法人税の研究開発減税額のうち、トヨタが総額の約2割に及ぶ1201億円もの最多の減税を受けていた事実を明らかにしている。

 しかも、この13年度といえば、トヨタが過去最高を更新する2兆3000億円近い営業利益をあげ、豊田章男社長が決算会見(14年5月8日)で「うれしいことは日本でも税金を納めることです」「社長になって国内で一度も税金を払っていなかった。企業は税金を払うのが使命。納税ができる会社としてスタートラインに立てたことを素直に嬉しく思う」と述べた年度だ。

 これまでにトヨタは08年度から12年度の5年間、黒字の年度も含めて法人税(国税分)を1円も払っていなかったことが明らかになっている。これは「外国子会社からの受取配当の益金不算入」という制度を利用して、トヨタの外国の子会社からの配当への課税を免れていたというものだ。

 だが、それだけではなく、トヨタは「企業は税金を払うのが使命」「うれしいことは日本でも税金を納めることです」などといいながら、その翌年度も研究開発費減税を利用して1201億円もの減税を受けていたということになるのだ。

 ただし、こうした租税特別措置も見直しの機運が高まりつつある。国税と地方税を合わせた法人実効税率は15年度に2.51%引き下げて32.11%となり、16年度にはさらに0.78%下げ、31.33%にすることが決まっている。政策減税の廃止・縮小で引き下げのための代替財源を確保し、どこまで引き下げ幅を拡大できるかが焦点になっているためだ。

 しかし、トヨタへの政策減税はとうてい見直されようがない。というのも、研究開発費減税も「外国子会社からの受取配当の益金不算入」という制度もトヨタ側が強い政治力を利用して、政府に働きかけて採用させた「トヨタ減税」ともいうべきものだからだ。

「法人税制に隠された数々の特別措置には、トヨタのためにつくられたとしか思えないようなものが多々ある」(前出『税金を払わない奴ら』)

 トヨタは財界(日本経済団体連合会)に圧倒的な力を持っている上に、多大な政治献金も行なっているのだ。

「自民党への政治献金が多い企業団体のランキングでは、一般社団法人日本自動車工業会が1位で、2位がトヨタである。この順位は長らく変わらない。日本自動車工業会が毎年6000万円~8000万円、トヨタが毎年5000万円程度、自民党に献金している。日本自動車工業会とは自動車製造企業の団体であり、当然、トヨタは主宰格である。ようするに自民党の企業献金の1位と2位がトヨタ関係なのだ。自民党にとって、トヨタは最大のスポンサーなのである」(同前)

 トヨタからしてみれば、合計年1億円超の企業献金をするだけで研究開発費減税だけでも、1201億円の減税が受けられるというのだからボロい話ではないか。いかに自民党政権は大企業にやさしく、納税者に厳しいかがこの話からもわかるだろう。
(小石川シンイチ)

最終更新:2015.10.26 07:04

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