SEALDs奥田愛基が国会公聴会で「政治家である前にひとりの個人として考えて!」と切実な訴え! でも政治家たちは…

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SEALDsの奥田愛基氏が国会に!(画像は『民主主義ってなんだ?』河出書房新社より)

「もう、この議論の結論は出ています。今国会での可決は無理です。廃案にするしかありません」

 本日、国会で安保法制にかんする中央公聴会が開かれ、SEALDsのメンバーである大学生の奥田愛基氏が民主党選任の公述人として出席。約15分にわたって意見を述べ、冒頭のように廃案を迫った。

 いまや反対デモの“顔”ともいえる奥田氏の国会登場に、公聴会開始前からネット上では大きな注目が集まっていた。Twitterのトレンドワードにも「#がんばれオークダーキ」と応援ハッシュタグがランクインし、NHKへは公聴会の放送を求める声が殺到。しかし、NHKは放送しなかったため、参院のインターネット放送に多くの人びとがアクセス。生中継を行ったニコニコ生放送では16時30分現在で約5万7000もの数字になっている。7月に安倍晋三首相がニコ生に出演した際には入場者数が1万人を切ることもあったことを考えると、世間の関心は安倍首相<SEALDsとなっているのだろう。

 そして、肝心の奥田氏の公述は、多くの国民の思いを代弁する熱のこもったものだった。

 まず、6人の公述人のうち、最後のトリを務めた奥田氏は、初っ端から「さきほどから寝ている方がたくさんおられるので、もしよろしければですね、お話を聞いていただければと思います」とジャブ。中継では議員席が映ることがなかったためわからなかったが、この期に及んで居眠りする議員がいるらしい。

 また、世論調査の結果に法案へ反対する意見が拡大していることは表れているとし、政権および賛成派が喧伝する“安保法制はすでに昨年末の選挙で争点になっており、民意は得ている”というトンデモ論にも、このように切り込んだ。

「選挙のときに集団的自衛権にかんしてすでに説明したとおっしゃる方々もいます。しかしながら、自民党が出している重要政策集では、アベノミクスにかんしては26ページ中8ページ近く説明されていましたが、それに対して、安全保障関連法案にかんしては、たった数行でしか書かれていません。菅官房長官は、昨年の選挙でも『(安保は)争点ではない』と言っています」

 その上で、奥田氏は国民無視の国会審議に異議を唱える。

「選挙のときに国民投票もせず、解釈で改憲するような、違憲で、法的安定性もない、そして国会の答弁をきちんとできないような法案をつくるなど、わたしたちは聞かされていません。わたしには、法的安定性の説明をすることを、途中から放棄してしまったようにも思えます。憲法とは国民の権利であり、それを無視することは、国民を無視するのと同義です。
 また、与党の方々は、この法律が通ったらどのようなことが起こるのか、理解しているのでしょうか。想定しているのでしょうか。先日、言っていた答弁とはまったくちがう説明を翌日に平然とし、野党からの質問に対しても、国会の審議は何度も何度も速記が止まるような状況です。
 このような状況で、一体どうやって国民は納得したらいいのでしょうか」

 さらに、SEALDsが安保法制への抗議運動の目になっていることはたしかだが、本質はそこにはない、と奥田氏は指摘する。

「SEALDsはたしかに注目を集めていますが、現在の安保法制に対して、その国民的な世論をわたしたちがつくり出したのではありません。もし、そう考えていられるのでしたら、それは残念ながら過大評価だと思います。わたしの考えでは、この状況をつくっているのは、まぎれもなく、現在の与党のみなさんです。
 つまり、安保法制にかんする国会答弁を見て、首相のテレビでの理解しがたいたとえ話を見て、不安に感じた人が国会前に足を運び、また、全国各地で声をあげはじめたのです」

「今年の夏までに武力行使の拡大や集団的自衛権の行使容認を、なぜしなければならなかったのか。それは、人の生き死ににかかわる法案で、これまで70年間、日本が行ってこなかったことでもあります。一体なぜ、11個の法案を2つにまとめて審議したか、その理由もよくわかりません。ひとつひとつ審議しては駄目だったのでしょうか。まったく納得がいきません」と言う奥田氏の疑問は、どれも多くの人が感じていることだ。しかも、それらは国会審議によって、その違憲性やデタラメさが明らかになっている。そして奥田氏は、冒頭のように、こう断言するのだ。

「結局、(国民に)説明した結果、国会の審議としては異例の9月末まで延ばした結果、国民の理解を得られなかったのですから、もう、この議論の結論は出ています。今国会での可決は無理です。廃案にするしかありません」

 きょうの国会における奥田氏の公述で印象に残ったのは、あらゆる世代・あらゆる立場の人びとの声を届けようと、スピーチ内にメッセージに込めていた点。なかでも、奥田氏は「先日、予科練で特攻隊の通信兵だった方と会ってきました」と言い、自分たちと同じ年齢だったころに戦地に赴いた人びとの安保法制に対する「強い危惧」を代弁していたが、この「予科練で特攻隊の通信兵だった」という男性は、7月18日付けの朝日新聞の投書欄に、こんな文章を寄せていた人だ。

〈安保法案が衆院を通過し、耐えられない思いでいる。だが、学生さんたちが反対のデモを始めたと知った時、特攻隊を目指す元予科練(海軍飛行予科練習生)だった私は、うれしくて涙を流した。体の芯から燃える熱で、涙が湯になるようだった。オーイ、特攻で死んでいった先輩、同輩たち。「今こそ俺たちは生き返ったぞ」とむせび泣きしながら叫んだ〉
〈天皇を神とする軍国で、貧しい思考力しかないままに、死ねと命じられて爆弾もろとも敵艦に突っ込んでいった特攻隊員たち。人生には心からの笑いがあり、友情と恋があふれ咲いていることすら知らず、五体爆裂し肉片となって恨み死にした。16歳、18歳、20歳……。
 若かった我々が、生まれ変わってデモ隊となって立ち並んでいるように感じた。学生さんたちに心から感謝する。今のあなた方のようにこそ、我々は生きていたかったのだ〉

 あなた方のようにこそ、我々は生きていたかったのだ──。この投書を、反対デモの前にSEALDsメンバーたちは読み返すのだという。あるときのデモのスピーチでは、この投書を読み上げ、奥田氏はこらえきれずにTシャツの裾で涙をぬぐっていた。その後、奥田氏たちは投書主の男性に会いに行ったというが、こうして国会で、奥田氏は彼の思いをも伝えたのだ。

「いま、これだけ不安や反対の声が広がり、説明不足が叫ばれるなかでの採決は、そうした思いを軽んじるものではないでしょうか。70年の不戦の誓いを裏切るものではないでしょうか。
 いまの反対のうねりは世代を超えたものです。70年間のこの国の平和主義の歩みを、先の大戦で犠牲になった方々の思いを引き継ぎ、守りたい。その思いが、わたしたちを繋げています。わたしはそのうちのたったひとりとして、ここで、話をしています。つまり、国会前の巨大な群像のひとりとして、国会にきています」

 いろんな人びとの思いを抱えて、国会に挑んだ奥田氏。もちろん、強行採決を見越し、政治家たちへプレッシャーをかけることも忘れなかった。

「仮にこの法案が強行に採決されるようなことがあれば、全国各地でこれまで以上に声があがるでしょう。連日、国会前は人で溢れかえるでしょう。次の選挙でも、もちろん影響を与えるでしょう。当然、この法案にかんする野党の方々の態度も見ています。ほんとうにできることはやったのでしょうか?
 わたしたちは決して、いまの政治家の方の発言や態度を忘れません。『三連休を挟めば忘れる』だなんて、国民をバカにしないでください。むしろ、そこからまたはじまっていくのです」

 最後に奥田氏は「わたしからのお願いです」と言い、このようにつづけた。

「SEALDsの一員ではなく、個人としての、ひとりの人間としてのお願いです。どうかどうか、政治家の先生たちも、個人でいてください。政治家である前に、派閥に属する前に、グループに属する前に、たったひとりの個であってください。自分の信じる正しさに向かい、勇気を出して、孤独に思考し、判断し、行動してください。みなさんにはひとりひとり、考える力があります。権利があります。政治家になった動機は人それぞれさまざまあるでしょうが、どうか政治家とはどうあるべきなのかを考え、この国の民の意見を聞いてください。勇気を振り絞り、ある種、賭けかもしれない、あなたにしかできない、その尊い行動をとってください。日本国憲法はそれを保障し、何より、日本国に生きる民ひとりひとり、そしてわたしは、そのことを支持します」

 きょう、安倍首相は中央公聴会には出席しなかったが、ぜひこの国の若者から発せられたメッセージに耳を傾けてほしい。そして、この切実な言葉をこそ、胸に刻んでほしいと切に願う。
(水井多賀子)

最終更新:2015.09.16 07:01

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