安倍首相の戦後70年談話は日米合作だった! 騙されてるのは日本国民だけ、海外メディアは二枚舌見抜き大批判

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安倍首相お得意の二枚舌に惑わされてはいけない(YouTube「ANNnewsCH」より)


 14日に発表された安倍晋三首相による戦後70年談話は詐術まみれのものだったが、どういうわけか日本国内では評価されているらしい。

 共同通信が14、15日に実施した全国電話世論調査では、安倍談話を「評価する」(44.2%)が「評価しない」(37.0%)を上回った。内閣支持率も依然として不支持(46.4%)のほうが上ではあるものの、支持が43.2%と、先月から5.5ポイント上昇。一部メディアは支持率回復の理由を安倍談話の「高評価」に関連付けて報じている。

 このような結果がでたのは、安倍談話のなかに、国内外が注目していた「4つのキーワード」が盛り込まれていたからだろう。村山談話、小泉談話で使用された、「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「おわび」の4つである。しかし実際には、安倍談話のこれらの文言は上辺だけのものであって、肝心の内容は村山談話を引き継いでいるとは言えない。

 一部で指摘されているように、安倍首相が引き継いだと主張する村山談話は、日本という主語とアジア諸国という目的語を明確にしたうえで、侵略と植民地支配について「痛切な反省」「心からのお詫び」の気持ちを表したものであった一方、安倍談話は「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました」と過去の談話を引用して紹介しただけにすぎず、「事変、侵略、戦争」「植民地支配」についても一般論として否定するのみ。安倍首相自身の考えを明言することを避けているのだ。しかも、安倍談話は「未来志向」の名のもと、こんなことを言っている。

「日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」

 ようするに、安倍首相の本音は、アジア諸国への「謝罪」をここで断ち切ること、すなわち村山談話の否定なのである。だが、それでもいわゆる「4つのキーワード」を使ったのは、アメリカの顔色をうかがった結果だと言われている。

 たとえば、米国家安全保障会議(NSC)のネッド・プライス報道官は、安倍談話発表からわずか数時間後、以下の声明を出した。

「われわれは、安倍首相が、日本が第二次対戦中に与えた被害に対する痛切な反省(deep remorse)を表明したこと、ならびに、安倍首相が日本の歴代内閣の歴史認識に関する談話を継承したことを歓迎する。また、日本が今後より国際平和と繁栄への貢献を拡大していくとしたことを評価する。戦後70年、日本は平和、民主主義、法の支配をかわらず尊重してきた。世界各国にとってお手本だ」

 本当に安倍談話を聞いたのか?と思わずにはいられないほどのベタ褒めというわけだが、実は、安倍談話の作成にあたっては、事前に日米が裏で通じていたという。

 安倍首相が談話を発表する4日前の8月10日、キャロライン・ケネディ駐日大使が官邸を訪れ、安倍首相と会談しているが、ここで談話の最終決定が行われたのではないかと言われているのだ。

「官邸・外務省は以前はジャパンハンドラーと呼ばれる国務省OBを通じてアメリカ政府の意向を探る形をとっていましたが、この夏以降は直接、70年談話の細部について協議を重ねていたと言われています。安倍首相とケネディ大使との会談が行われたタイミングを考えると、そこで安倍談話の内容の最終チェックと、その後の米政府が予定する声明についての確認が行われたのは明らかでしょう」(外交評論家)

 このアメリカとの事前協議はテレビ朝日のニュース番組が短く伝えただけで、国内メディアはまったく報道しなかったが、70年談話はある意味、アメリカとの合作だったといってもいい。

「この談話の取り扱いを間違えたら、合意した日米ガイドライン、集団的自衛権行使が白紙になってしまう。そのために日米両政府で、安倍首相の主張を取り入れながら国際社会に非難をされないギリギリのところを探ったということでしょう」(前出・外交評論家)

 そして、安倍首相は、「4つのキーワード」を盛り込むことでアメリカの顔を立てつつ、国内右派に向けては「先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と“謝罪の必要はない”と言わんばかりの歴史修正主義の姿勢を残す、得意の二枚舌作戦に出たわけである。

 事実、早くもその歴史修正の本質が露呈している。談話閣議決定当日の14日、外務省はホームページ上の「歴史問題Q&A」というコーナーから、歴代日本政府の歴史認識に関する箇所などを削除。ページでは、第二次世界大戦における日本の行為が「植民地支配と侵略」とされており、また「痛切なる反省と心からのおわびの気持ちを常に心に刻み」と記されていた。外務省は、安倍談話に則した内容に更新し、再掲載するとしている。つまり、安倍政権は、村山談話を継承などしておらず、「未来志向」の麗句のもと、アジア諸国への「おわびと謝罪」を政府ぐるみでネグりはじめたわけである。

 しかし、どうやらこうした安倍談話の危険な本質に気がついていないのは日本国民だけで、国際的には完全にバレてしまっているようだ。海外メディアは冷静に安倍談話の欠点を指摘している。中国、韓国については多く報じられているので触れないが、とりわけ注目すべきは欧米メディアの分析だ。

 アメリカの主要紙(いずれも電子版)では、「ワシントン・ポスト」が「日本の指導者、第二次大戦で謝罪に至らず」という見出しで、米「ウォール・ストリート・ジャーナル」が「日本の安倍首相は第二次世界大戦における直接的謝罪の手前で止めた」との見出しで報じた。また、「ニューヨーク・タイムズ」も安倍談話について、ボストン大学の政治学者・トーマス・バーガー教授の「安倍首相は、歴史を“誰も非難できないような種類の歴史的ツナミ”として描くことで、日本の責任を希釈化した」というコメントを紹介した。

 イギリスも同様だ。日経新聞によれば、英ロイター通信は、安倍首相が「彼自身の新しいおわびは表明しなかった」と報じ、英国放送協会(BBC)も、独自の新たな謝罪は示さなかったと分析。さらに、時事通信の報道では、英保守系高級紙「タイムズ」は15日付朝刊で、安倍談話についての社説を掲載し、「恥ずべきほどなまでに、(戦争中の)日本の罪ときちんと向き合わなかった」と論評。「原爆忌や終戦記念日で、日本は戦争の加害者というより、被害者であるという神話を維持している」として強く非難した。

 フランスメディアの報道もまた安倍談話に批判的だ。「リベラシオン」電子版は昭仁天皇の戦後70年における本心を紹介し、それと対比させる構成で安倍首相を「国家主義者」として批判的に談話を報じた。また、仏のメジャー紙「ル・モンド」は、「安倍総理大臣個人として、過去の侵略や植民地支配に対する謝罪を一切行っていない」と指摘している。

 日本と同じく第二次世界大戦の敗戦国であるドイツでの報道も見逃せない。朝日新聞が報じたところによれば、ドイツの主要紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」は「謝罪──しかし疑心は残る」との見出しで、「首相自身の言葉でおわびは言わなかった」と指摘。「南ドイツ新聞」も、「安倍首相は圧力に対して頭を下げた」とのタイトルで、「首相が半年前は侵略や謝罪について話すつもりはなかったが、与党内や歴代首相、多くの国民からの圧力に屈した」が、「首相自身の見解を変えたわけではない」と分析している。

 ようするに、安倍談話の欺瞞と露骨なレトリックに気がついていないのは、日本国民のほうなのである。アメリカ政府のポチ犬となりつつ、じわじわと歴史の修正を進める安倍首相。その戦略は、軍事侵略や核兵器の輸送までもが可能となる安保法案を「平和安全法制」などと言い換えるのと同じである。

 安倍首相がどれだけ美辞麗句を並べようが、いま、この国が戦後70年かけて築き上げてきた平和の道のりを破壊しようとしていることに変わりはない。見せかけだけの「文言」に騙されず、その危険な本質を直視せねばならなない。
(田部祥太)

最終更新:2015.08.20 08:06

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