「マスコミを懲らしめろ」の自民党・大西議員が原発問題でも! エネ庁幹部に「やつらに知らしめろ!」と報道圧力要求

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大西英男の公式サイトより


 8月11日午前、遂に川内原発1号機原子炉の再稼働が開始された。政府は今後も次々と原発再稼働を推進するとの方針を示しているが、しかし福島原発事故の原因も、責任も、その対策も講じられていないなかでの原発再稼働は、まさしく暴挙である。

 原発再稼働に躍起になる安倍政権だが、そんななか、またしてもあの“安倍チルドレン”の問題発言がクローズアップされている。そう「マスコミを懲らしめる」との言論弾圧発言で世間を騒がせた大西英男衆議院議員だ。

 大西議員は7月30日、党本部で開かれた原子力政策に関する会合で、原発に批判的なテレビコメンテーター、解説者に対し「エネルギー庁が個別にどんどん正確な知識を知らせていくべきだ」「個別撃破でいいから、是非皆さんの知識を知らしめてください」などと発言。出席していた資源エネルギー庁の幹部にマスコミ対策への発破をかけたのだ。

 さすが“言論弾圧・大西”の名に恥じない暴言でもあるが、さらに大西議員はマスコミ軽視ともいえる発言でだめ押しまでしている。

「やつら(マスコミやコメンテーター)も一応インテリ。知識がないことには劣等感を感じる。新しい知識、正しい知識を提供していくべきだ」

 まさに自分たち議員やエネ庁こそ「原発の正しい知識を持っている人間」であり、無知な“やつら(マスコミ)”を啓蒙、洗脳するという上から目線の発言だ。

 しかし言っておくが、無知で啓蒙されるべきは大西議員、あなたの方だ。そもそも2011年の福島原発事故で、大きな批判に晒されたのが東電、電力会社総体による莫大な広告・宣伝費を使ってのメディア支配、そして国民への原発啓蒙だった。

「原発は安全」「地球に優しいクリーンエネルギー」「他電力に比べコストも格安」といった“安全神話”というデマをまき散らし、国民を欺き続けてきた。そして電力会社と一体になってメディアや世論をコントロールしてきたのがエネ庁だった。

 そんなエネ庁にいまさら「正しい知識」「新しい知識」などあるはずがない。もしあるとすればそれは「さらに国民を欺く新手の詐欺手法」だけだ。

 例えばエネ庁は05年以降、玄海原発や浜岡原発など複数の住民シンポジウムにおいて「やらせ」事件の片棒を担いでいる。シンポジウムに“仕込み出席者”を調達し原発推進に都合のいい質問をさせたのだ。その後「やらせ」が発覚し大きな批判を浴びた結果、第三者委員会が設立されエネ庁の幹部6人が処分されるという大不祥事を巻き起こしている。

 本当に「正しい知識」を持ってそれを国民に発信するつもりなら、そもそもこんな「やらせ」をする必要などなかったはずだ。

 姑息な世論誘導はまだある。事故前のエネ庁の広告はなぜか「オレンジページ」(オレンジページ)や「ジュニアアエラ」(朝日新聞出版)といった女性や育児を対象としたメディアや子ども向けのパンフレットに大量に出稿されていた。これについて経済産業省は2010年に行われた事業仕分けの際、こんな発言をしているのだ。

「原子力に関する関心が相対的に低い傾向が見られる女性層」「男性に比べて女性の方が原子力の必要性に対する認識が低い」

 理解が足らない女性層に対する広報が必要という女性蔑視とも思える姿勢だが、子どもに対しても同様で、文部科学省と連携し原発の理解と推進を小学生から啓蒙することを画策。教員向けには副読本まで作成し、勉強会を開催していたのだ。

 安全神話の刷り込みだが、これらエネ庁が主張する「原子力への理解」「有効性」が、いかにインチキだったかは、既に福島原発事故によって実証されたと言っていい。

 しかも最近でもエネ庁の“無知”ぶりが露呈した一件があった。それが7月29日の安保審議で「生活の党と山本太郎となかまたち」の山本議員が追求した「原発にミサイルを撃ち込まれたらどうするのか」との議論だった。このなかで山本は稼働中の川内原発原子炉に弾道ミサイルなどの攻撃を受けた際、最大でどの程度の放射性物質の放出を想定しているか、とエネ庁に問い合わせたことをこう明かしている。

「これ、誰も教えてくれないんですよ。川内原発の場合、1号機原子炉内の核燃料157体の放射性物質がすべて放出された場合、また、貯蔵庫の燃料64体、使用済燃料プール1128体の放射性物質全て環境中に放出された場合、全てです、セシウム137基準でそれぞれ何ベクレルになるんですかと言って原子力規制庁と資源エネルギー庁に質問したんですけれども、誰一人答えられないんです」 

 もちろんエネ庁だけでなく、答弁を指名された安倍首相も、そして安倍首相に代わって答弁した原子力規制委員会の田中俊一委員長も、まともに答えることは出来なかったのだ。

 こんなエネ庁に何を言われたところで、一体誰が信じるというのか。しかし大西議員が発破をかけるまでもなく、またぞろエネ庁による“間違った世論操作”は既に再開されている。

 平成27年度予算の中には「エネルギー環境総合戦略調査等委託費2億7000万円として、「エネルギー政策広報事業」「エネルギー教育に取り組む小中高を広く全国から募り、その実践を支援」という項目が存在し、実際にマスコミ広告でのPR、子ども向けのパンフレット作成や、授業の支援さえ再開している。

 エネ庁による新たな“安全神話”作りだが、川内原発の危険性は本サイトでも既に報じた通りだ。

 次々と原発再稼働を目論む電力会社に、政治に、そして官僚たち“原発ムラ”に再び騙される愚挙だけは繰り返してはならない。
(伊勢崎馨)

最終更新:2015.08.11 04:58

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