福田萌も加藤浩次もわかってない!

衝撃! 貧乏な子どもがいくら勉強しても遊んでる金持ちの子より成績が悪いとの驚愕データが

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上・日本テレビ『スッキリ!!』番組ページより/下・福田萌オフィシャルブログより


 オリエンタルラジオ中田敦彦の妻でタレントの福田萌が“学歴自慢”をしたとして、炎上騒動が起きている。福田は横浜国立大卒であり、夫のオリラジ中田敦彦もまた慶応大卒という高学歴カップルだ。4月28日に放映された『解決!ナイナイアンサー』(日本テレビ系)で、そのことについて問われた福田は「私たちは、自分の力で学歴をつかみ取ってきたという誇りがある」「親が用意してくれた道を歩んだわけでなく、努力の証明として学歴がある」などと発言したことでネット大炎上、「学歴自慢」など大批判が展開されたのだ。そのため福田も「学歴自慢ではなく努力したことを誇りに思っているだけ」などと釈明に追われる事態となったのだ。

 本サイトが気になるのは、福田が自慢したかどうかではない。「学歴ではなく努力したことを誇っているだけ」という釈明のほうだ。学歴は本人の努力の証明。福田だけでなく、こう思い込んでいる人は少なくない。

 たとえば、5月14日に放映された『スッキリ!!』(日テレ系)での加藤浩次の発言だ。この日、千葉県南房総市が導入する「小学校塾代助成事業」について取り上げられ、コメンテーターの宇野常寛は親の収入と子どもの学歴に大きな関係があると説明したうえで、「学歴による階級上昇のためには塾に行けるかいけないかがものすごく大きい」「貧しい家庭に生まれた子どもにとって人生逆転のチャンス」と手放しで賛成した。しかしこれに対し司会の加藤が「そこはひっかかる」「学校教育は成熟していないのか?」と異議を唱え、ほかの出演者も賛同したのだ。

 しかし宇野が指摘したとおり、たしかに親の経済力と学力・学歴との相関関係は大きい。教育統計学者の舞田敏彦が発表した「東京大学生の家庭の年収分布」によれば、世帯収入950万円以上が一般世帯の倍以上の57%を占めたことで「教育格差は収入格差」と大きな話題となったほどだ。

 ただ福田や加藤のように、親の経済力との相関を踏まえたうえでも「本人たちが努力さえすれば、学歴格差は縮まる」「環境のちがいがあっても、努力で克服できる」などと信じている人は多いのではないだろうか。しかし残念ながら、こうした“子どもの努力次第論”は、根本から間違えていると言わざるを得ない衝撃のデータが存在する。それがお茶の水大学が調査、発表した「平成25年度全国学力学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」だ。

 公表されたグラフによると、両親の学歴と世帯所得が高い子ども(小6)は国語、算数ともに正答率が高い。次に平日の家庭学習時間と正答率の相関関係を示したグラフを見ると、長時間勉強する子どもほど学力の平均値は高くなっている。この2つのデータを見ると、「親の経済力」と「子どもの努力(学習時間)」両方の要素が学力に影響を及ぼすことがわかり、一見、親の経済力だけでなく、子ども自身の努力によっても、学力はあがるかに見える。

 しかし、問題はさらなるもうひとつのデータの存在だ。それは世帯所得と父母の学歴を合成した指数(SES)と学習時間、そして国語の平均正解率を掛け合わせたもの。それによると、たしかに同じ所得層のなかでは長時間勉強する子どものほうが学力は高い。しかし、最高所得層で「全く勉強しない」子どもの正解率は60.5%、それに対し、最低所得層で「3時間以上勉強する」子どもの正解率は58.9%なのだ。つまり、貧しい家庭の子どもがいくら勉強しようとも、裕福な家庭で全く勉強しない子どもに学力が劣るという衝撃の“事実”だ。

 実際、この調査を中心的に行った一人お茶の水大学元副学長で教授のである耳塚寛明は「中央公論」(中央公論新社)6月号で、結果に衝撃を受けたとしてこう発言している。

「SES(親の収入と学歴)の効果は勉強時間という努力の効果に比べてずっと大きいということを、この結果は意味しています。
 私はこれを見た時に、相当の力を入れてなんとかしなければと感じました。われわれの社会は、能力と努力によって自分の地位を手に入れることができる、そういう前提で組み立てられています。家庭の状況によって子どもが平等な機会を手に出来ないというのでは、その前提自体が覆されてしまいます」

 そう、既に現在の日本教育は子どもに平等な機会を与えず、それは子どもの努力などといった精神論ではどうにもならないところまできているということだ。

「貧しくても自分の努力次第で、何とかなる」──そんな陳腐な根性論をこのデータは見事に覆しているのである。さらにこのデータが示すのは、世代間の学力・学歴格差であり、それは世代間で連鎖するということでもある。低学歴、貧困の定着ともいえよう。

 こうした事態に対する解決法として耳塚教授は「少数指導」「幼児教育で文化的環境を作る」「教員の効果的配置」「小中一貫教育」などを上げているが、しかしそれ以上に解決しなくてはならない問題としてこんな指摘をしている。

「これは教育問題というより社会問題ということです。ですから、所得の再配分や雇用の確保、保護者の就労支援、教育機会を保障する経済的な支援などがまず必要だろうと思います(略)自由な競争社会の前提条件を調えるという意味で、教育費負担の軽減と教育の質の向上の両方に投資し、学力格差をなくしていくことが重要だと思います」

 福田萌が言う「親とは関係なく自分の努力」や加藤浩次の「塾に行くのが人生逆転?」などと言った発言など、単なる戯言だということがわかるだろう。

 実際、「学校教育は成熟していないのか」などと宇野に異論を唱えた当の加藤も自分の子どもは小学校から私立に通わせている。また大逆転の物語と話題のビリギャルも実は名門私立中高一貫校に通い、塾に百万円以上の費用をかけていたことも以前指摘した。

 子どもの貧困が叫ばれて久しい。さらに貧困と格差は子どもたちの学力、そして将来の様々なチャンスさえ奪う。これは子どもを持つ親だけでなく、日本社会全体の問題でもある。どんな親の元に生まれようとも、誰でも平等な機会、チャンスがある。まずはそんな社会にすることが必要だろう。
(伊勢崎馨)

最終更新:2015.06.01 12:14

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