少年犯罪の凶悪化は嘘、昔のほうが酷かった! 中学生の連続爆破、小学生同士の殺人も

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川崎市の中1殺害事件について伝える日本国内のニュース(画像はYouTube「ANNnewsCH」より)


 やはり、と言うべきだろう。

 川崎中1殺害事件で18歳、17歳の少年ら3名が逮捕され、世論は少年法の厳罰化に向かっている。これは、メディアが容疑者少年らの素性を暴いて、センセーショナルに報じるたびに起こる現象だ。そしてまたぞろ、政治家たちがこんなことを言い出した。たとえば、自民党の稲田朋美政調会長の発言だ。

「犯罪を予防する観点から、今の少年法の在り方でいいのかはこれから課題になる」
「少年が加害者である場合は名前も伏せ、通常の刑事裁判とは違う取り扱いを受けるが、(少年犯罪が)非常に凶悪化している」

 実名の公開が「犯罪防止」に効果があるのかも甚だ疑問だが、そもそも、未成年による犯罪が「非常に凶悪化している」というのは事実なのだろうか。

 警察庁が公表している統計「平成26年中の少年非行情勢について」によれば、「凶悪犯」とされているのは、殺人、強盗、放火、強姦である。過去10年間の少年による「凶悪犯」罪種別検挙人数を見てみると、その総数は2005年(1441件)から2010年(783件)で下降線を辿り、その後はほぼ横ばいだが、2014年は703件で、過去最小の数字であった。人口比の面から少年犯罪全体を見てみても、グラフは明確に右肩下がりを示している。

 こうした数値だけでも、未成年による犯罪が一概に「凶悪化」しているとは言えまい。だが、この事実を指摘すると必ず少年凶悪化論者から「件数ではなく最近は犯罪の中身がひどくなっている」という主張が出てくる。

 しかし、これもかなり怪しい言説だ。たとえば、女子高生コンクリート詰め殺人や、神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)など、80年代、90年代のほうが世間を震撼させるような少年犯罪が頻発していた。

 その前、70年代だって同じだ。いや、「一億総中流」として国民が物質的に豊かな社会を謳歌し始めたこの時代、少年犯罪はもっとひどかった。82年に刊々堂出版社から刊行された『青少年非行・犯罪史資料』(赤塚行雄)という書籍から、少年・少女による「凶悪犯罪」のいくつかをピックアップしてみよう。

 まずは未成年による殺人を見てみる。近年“ささいなことでキレる”少年・少女が増えたなどと言われるが、それがウソであることは、膨大な事案のほんの一部を取り上げるだけでも分かる。

・神奈川県の中学3年生(15)の少年が、同中学1年生の少女(12)を撲殺。少年は少女から生徒会役員選挙の応援演説を頼まれていたが、応援演説が嫌になって殺したと供述した。

・東京の公園内でスケート場から帰宅途中の、中学1年生(14)と中学2年生(14)の2人が、若い男に全裸にされ、下腹部をいたずらされたうえ、1人が喉などを刺され重傷をおった。現場近くに住んでいた職業訓練校生(18)が親族に付き添われて自首。「すべって転んだのを二人の中学生に見られ、笑われたのでカッとなってやった」と自供。

・大阪府、ビル地下の婦人用トイレで、女性(25)が無職の少女(19)に刺身包丁で刺され殺害された。少女の動機は「誰でも人を殺せば、刑務所に入れると思った」。

・東京都のマンション敷地内で、小学2年生の少女A(7)が死体で発見された。警察が、小学4年生の少女B(10)に様子を聞いたところ、Aをマンションの屋上(約25メートル)に連れ出し、突き落としたことを認めた。2人は運動会で同じ白組だったが、僅差で赤組に敗北。Bは、自分のクラスが弱かったから白組が負けたのだとAに言われ、衝動的に殺人に走ったという。

 以上は、衝動的な殺人の動機という面から、現在と過去に大差ないことを示す例だが、続いては70年代の犯罪史を特徴づける事案を取り上げる。たとえば1970年には高知県で少年(19)がセスナ機を爆破する事件があった。さらに、盗んだ乗用車で逃走し、追いすがるパトカーにダイナマイトを投擲している。この時代には、こうした爆撃事件が多発しており、その犯人が少年であったことも珍しくなかったのだ。

・大阪府、私立高校教諭の自宅のベランダで、「ドカン」という爆発音とともに、パチンコ玉が一斉に飛散、ガラス4枚が吹き飛び、白煙に覆われた。教諭は軽傷、家族も無事だったが、このパチンコ玉爆弾はベランダの囲いを貫通するなど殺傷能力は十分。犯行に及んだのは、その春高校を卒業、あるいは中退した17〜18歳の少年たちであった。

・群馬県の飲食店で、配達された菓子折りの大の小包を店主の妻が開封したところ、突然爆発。妻は胸や腹に大けが、そばにいた手伝いの女性も頭に大けがをおった。県警の捜査により、県立高校の2年生(16)が逮捕された。動機は、少年による家賃の取り立てに店主が応じなかったことに端を発する怨恨だった。得意科目の物理と科学の知識を生かし、爆弾を製造したという。

・福岡県の繁華街路上で、釘を仕込んだビンが爆発する事件があった。さらにその約1週間後には、同県の国鉄の駅のコインロッカーが爆発、1名が重傷、4名がけがをした。これらを含む7件の連続爆破事件で逮捕されたのは、中学3年生(14)の少年だった。動機について、「学校の友だちとうまく交際できず、むしゃくしゃしてやった。世間に対する反感から、みんなを驚かせたくてやった」と自供。さらには同級生の共犯者が2人いることもわかった。爆弾は少年の勉強部屋で製造されたという。

・栃木県下の警察署に置かれていたトランジスタ・ラジオに警部補が触れたところ爆発した。警部補は左手首を吹き飛ばされ、右手と腹部に大けが、左目を失明した。落とし物のラジオを装った爆弾で、釘や鉛片が詰め込まれていた。本件を含む連続5件の爆弾事件の容疑者として、まず同県の高校生3名が逮捕。同グループの主犯各だった少年(18)は、逃走を企て、指名手配された。少年は、グループの友人に「今の日本には破壊活動こそが必要だ。そのためにダイナマイトを盗まねばならない」などと語っており、実際に砕石現場からダイナマイトを窃盗していた。

 さらに衝撃的と言えるのが、未成年によるハイジャック事件も複数存在することだ。

・北海道へ向かう羽田発の全日空機がハイジャックされた。機長は犯人を説得しながら羽田にUターン。警官が突入し、確保した。犯人は高校2年生(17)。「どこか遠くへ行きたいと北海道を選んだ」とハイジャックを思いついたという。

・羽田発那覇行の日航機・ボーイング747SRが学生風の男にハイジャックされた。那覇空港に着陸後、機内に立てこもった。男は5500万ドル、日本円2億円(計167億円)、パラシュート15個、ロープなどを要求。逮捕されたのは18歳の少年で、海外に移住し、鉱物、エネルギー、生態学などの研究に没頭したいという目的だった。

 また、現代は性の情報が氾濫し、ゆえに性犯罪が悪化しているというのもよく聞く話である。しかし、70年代にそうした事案がなかったかというと、やはりそんなことはない。

・沖縄県の離島の診療所で、女医(53)が血まみれで殺されているのが発見された。この事件で中学3年生の少年(15)が逮捕。少年は、事件発覚前夜に女医のもとを訪ね、「用事があるので中に入れてほしい」と上がり込むと、いきなり女医の顔を殴りつけ、失神状態になったところを乱暴、首を絞めて殺した。

・福島県の小学2年生の少女(8)が下校途中行方不明になり、捜索したところ、ヤブのなかで絞殺体として発見された。暴行の形跡があった。逮捕されたのは同校小学6年生の少年(12)。「いたずらしようとしたところ、抵抗されたので殺した」と自供した。

・鹿児島県で、小学2年生の少女(8)が、自宅近くで乱暴され殺害された。逮捕された予備校生(19)は、下校途中の少女を尾行し、人気のない山道にさしかかったとき、後ろから手で口をふさぎ、首を絞めて失神させたという。その後、雑木林内に引き込み、持っていた注射器で腕の静脈に空気を注入し乱暴した。もがく少女の下着をナイフで切り刻み、ブラウスの襟で絞殺した。供述では「小さいころ、空気を静脈にうつと死ぬと聞いていたのでうってみた」。

 70年代は暴走族による抗争が活発化した時代であることも忘れてはならない。神奈川県内の東名高速サービスエリア駐車場で暴走族らが乱闘。日本刀、木刀、鉄パイプ、自動車のチェーンなどが武器として使われ、乱闘は総勢200人にのぼった。同じく、神奈川県で、暴走族の「東京連合」と「神奈川レーシング連盟」が衝突し、両グループの600人が、ヌンチャクや角材などで殴り合ったり、投石したり、乗用車をひっくり返して火をつけるなど、約1時間にわたって暴れるという事件もあった。「東京連合」は暴走族「ブラックエンペラー」などが加入するグループ。暴走族の対立抗争では最大規模である。

 ──いかがだっただろうか。結局、昨今の少年犯罪の「凶悪化」という言説は、たんなる印象論であると考えるのが自然だ。あるいは、少年法の厳罰化を目的とする、一種の政治的な恣意性によって誘導されているとも考えられる。

 というのも、稲田氏のような極右保守政治家は、家父長制の復権、上意下達的な共同体の再構築を思想として掲げているからだ。その大義となっているのが“家族崩壊”という問題提起で、これをもっとも端的にアピールすることができるのが、少年・少女たちの非行、ひいては未成年犯罪の「凶悪化」なのである。もちろん、その最終的目標は、国民の“臣民化”に他ならない。

 極右イデオロギーのため少年犯罪を出しに使う言説に、騙されてはいけない。
(梶田陽介)

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