新卒採用では今も露骨な学歴差別、女性差別が…「就活」から格差社会は始まっていた

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『なぜ7割のエントリーシートは、読まずに捨てられるのか? 人気企業の「手口」を知れば、就活の悩みは9割なくなる』(東洋経済新報社)

 2016年卒業予定者向けの就職活動が、この3月1日に解禁になった。このスケジュールは、政府要請を受けた経団連の「採用選考に関する指針」に基づくもので、従来より3ヶ月後ろ倒しになっている。

 だが、現実には、多くの学生はすでに就活を始めており、なかには内定を得ている学生も少なくない。大手求人サイトには2月いっぱいまで求人情報が載っていなかったが、青田刈りはインターンシップ、SNSなどを通じて例年よりむしろ早く始まっていたらしい。

 このように、タテマエとホンネが大きくちがうのが、日本の新卒採用だ。たとえば、各企業のホームページなどを見ていると、人柄や実力重視で、出身大学に関係なく誰でもチャレンジできるような錯覚におちいる。だが、実際の就職活動の現場では、かなり露骨なかたちで「学歴差別」が行われている。

 雇用ジャーナリスト・海老原嗣生氏は、著書『なぜ7割のエントリーシートは、読まずに捨てられるのか? 人気企業の「手口」を知れば、就活の悩みは9割なくなる』(東洋経済新報社)で、「大手の人気企業は応募者の大学名を見ています」「中堅以下の大学からは、ほとんど採用しません」と断言している。しかも、エントリーシートを読む前の段階、つまり説明会の時点ですでに学歴差別が行われているというのだ。

『なぜ7割の~』では、説明会における学歴差別の手口が明らかにされている。その方法とは、「大学レベルによって、説明会に呼び込むメールを送る順番を変える」というもの。企業は公式サイトの採用ページなどでプレエントリーしている学生に対し、説明会開催のお知らせメールを送るが、偏差値の高い大学の学生に優先してメールを送り、説明会の枠を学歴の高い学生から順に埋めていくのだ。

 たとえば、説明会の定員が4000人だとしたら、最初に東大・京大などの旧帝大の学生にメールを送り、まず500人を集める。その後、早慶、ICU、一橋、東工大レベルで1500人、さらにMARCHレベルで1500人といった具合に、偏差値の高い大学から順に学生を呼びこむ。そして最後はその他の大学の学生に対し、メールを一斉送信。中堅以下の大学生たちが残りの500人の枠を奪い合い、その結果、ほとんどの学生が説明会にすら行けないのだ。つまり、学歴が低いととスタートラインにも立たせてもらえないという現実があるのだ。

 また、学生の基礎的な学力を見るための算数や国語のテストが行われるが、この結果についても学歴が大きく左右するという。前出『なぜ7割の~』では、大手菓子メーカーの人事部社員が、「有名大学だと(補足:算数や国語の試験結果が)やや低めでも通し、一般大学だと、かなり高めではないと通さない」と明かしている。つまり、「大学名×試験結果」の“合わせ技”で判別しており、偏差値の低い大学の学生は、就職試験で高得点をマークしても、無駄になってしまうこともあるというわけだ。

 では、中堅以下の大学に通う学生たちは、何を頑張って就職試験に挑めば良いのだろうか? ここで思いつくのが、面接だ。学力がダメなら、面接で直接自分をアピールすればいいということだ。

 学生のなかには、就職面接でアピールする材料を集めるために、サークルで「〇〇長」といった役職に就いたり、NPO法人で一生懸命ボランティア活動に勤しんだりといった努力を重ねるケースも多いかもしれない。しかし、残念ながらこれもまた無駄になってしまう可能性が高いという。

『なぜ7割の~』では、そんな学生たちの努力について、「学生は何とか役職や肩書を言わなければと、本当に些細な集まりの話などをするため、もう、こうした〇〇長はインフレを起こして、聞く側は胸焼けを起こしているほどです」とバッサリ。そして、学生が面接ですべきことは「別に大げさな話でなくてよいから『自分はどんなタイプの人間なのか』をしっかりと表現すること」だと説明している。つまり、学生の“俺、凄いんだぜ”アピールはまったく意味がないのだ。大学が一流ではないからといって、そのビハインドを補うために必死になってイベントサークルのリーダーを買って出ている学生は、どうかこの現実を受け止めていただきたい。

 また、学歴差別同様に根深いのが、女性差別の問題。やはり女性は出産や育児で長期休暇をとる可能性があるということもあり、企業としては採用しにくいと考えがちなのだ。

 しかし、その一方で「(社内)評価が高いのはみな、女子ばかり」と話す採用担当者も多いという。女子学生のほうが評価が高いのに、どうして男子学生のほうが多く採用されるのか?と疑問に思うが、実はなんとも悲しい裏があるのだ。

『なぜ7割の~』では、女子社員が優秀な理由について、こう説明している。「女子はよほど優秀でないと採用されないから」。つまり、同じレベルの男女の学生がいたら、男子は採用、女子は不採用、といったことがよくあるのだ。その結果、採用された女子はかなりレベルが高い人材ばかりとなり、相対的に男子より高評価となる。男女雇用機会均等法の形骸化も甚だしいところだ。

 かつての「就職氷河期」から脱却したとはいえ、大手企業に入りやすくなったかというと、決してそういうわけではない、いまの就職戦線。あたかも自由競争であるかのような就活だが、確実に学歴差別・性差別は存在しており、中堅以下の大学生はそれなりの就職先を目指すほかないのだ。

 この状況について、評論家で人材コンサルタントの常見陽平氏は著書『「就活」と日本社会──平等幻想を超えて』(NHK出版)のなかで、日本の就活の不平等性について指摘したうえで、学生たちに対してその対応をこう説いている。

「いま、日本の就活を見直すうえで、問い直すべきは、就活は平等になり得ないという視点である。このことを再確認したほうが、若者は就活の構造的、摩擦的な問題をむしろ軽減できるのではないだろうか。これが、筆者の暴論のような正論である」

“学歴差別”や“性差別”は学生にとってチャレンジの機会さえ奪われる理不尽な人権侵害であることはもちろんだが、企業にとっても型にはまった人材しか採用できない状態が続き、業績発展が阻害される大きな障害になりかねない。

 そういう意味では、この就職差別は到底、承服できるものではないが、しかし、常見氏が言うように、そういった現実がある以上、学生はこの格差社会を真正面から受けとめて、会社の規模や企業名、ブランドイメージにこだわったムダな就活をキッパリとあきらめたほうがいいのかもしれない。その時間を友好活用して学生生活を充実させ、小さくても将来性のある企業や新しい働き方を探す。10年先、20年先を考えれば、そのほうが、ずっと新しい未来が開けるかもしれない。
(田中ヒロナ)

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