DaiGoのメンタリズムはただの手品!? 作家転身でバレた中身の浅さ

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メンタリストDaiGoオフィシャルブログより


「すべての超常現象は科学的に再現できる」

 メンタリズムで一世を風靡したDaiGoの公式サイトには、そんな言葉が掲げられている。パフォーマー引退宣言をし、評論家として「メンタリズムを誰にでもできる能力としてシェアして、コミュニケーションツールやビジネスなど日常生活に活かす方法を提案していきたい」と語っていた彼。その言葉通り、昨年から今年にかけて次々と著作を刊行し、しかも売れ行き好調のようだ。

「メンタリズム」とは、とりあえず「心理操作を上手く使い、あたかも超能力のように見せるテクニック」と考えれば良いだろう。特にイギリスのダレン・ブラウン登場以降は、わざとタネ明かしをして「これは超能力でもなんでもなく、メンタリズムという技術なんですよ」と提示する点に妙味がある。

 DaiGoはたびたび「メンタリズム=手品ではない」と主張しているのだが、少なくともテクニック部分については手品術が積み重ねてきたノウハウに依拠している。マジシャン業界では古くから「メンタルマジック」と呼ばれているものだ。相手の心を読んだり心理を操ることによって、あたかも超能力さながらの演出を見せるワザである。DaiGoによれば、あのユリ・ゲラーもメンタリストの一人として挙げられており、それは言い換えれば、ユリ・ゲラーのスプーン曲げも時計を直す念力も「超能力ではなく、トリックである」という主張になるだろう。

 確かに、メンタルマジックが超能力というパッケージングで悪用された例は多々ある。例えば日本の新興宗教団体でも、勧誘や教祖の神格化のために「超能力」トリックが使われていた(某団体の教祖も、手品でお馴染みのトリックを流用していたらしいが……)。その辺りを危惧した松田道弘(奇術研究家)が『超能力(メンタル)マジックの世界』(筑摩書房 /1993年)『メンタルマジック辞典』(東京堂出版 /1997年)を発表し、予言・透視・念力などの超能力にまつわるトリックとテクニックを解説していた。

 マジシャン側からのオカルト告発として最も有名な例は、スピリチュアル・ブームに沸き立った20世紀初めのアメリカ、奇術師ハリー・フーディーニが、霊媒師・超能力者たちのトリックを次々と暴く「サイキック・ハンター」として活躍した例が挙げられるだろう。前述のダレン・ブラウンも霊能者とTVで対決していたりと、明らかにフーディーニの系譜に連なる存在だ。オカルトやスピリチュアルが隆盛し、メンタルマジックが悪用されるようになれば、そのテクニックに精通した側からの告発、いわば「科学的なオカルト否定」が出てくる。これは様々な国と時代で散見されてきた事象なのだ。

 とはいえDaiGoのスタンスは、彼の尊敬するダレン・ブラウンのようにオカルトを告発するというハードなものではない。このところ精力的に発表され続ける書籍タイトルを見ても『メンタリズム 恋愛の絶対法則』『不安を自信に変える「逆転の発想術」』『人生がラクになる7つの方法』『男女脳戦略。──男にはデータを、女にはイメージを売れ』といった、恋愛指南本、ビジネス書、あるいは自己啓発本といった趣きのものばかり。記事冒頭の宣言通り、心理操作のノウハウであるメンタリズムを実社会に応用しようというテーマを前面に出している。「今すぐ実生活に役に立ちそう」といった印象が、DaiGo本がウケている理由だろう。ただ、本来ならマジックショー(またはそれを悪用した超能力サギ)といった限定空間における演出であるメンタルマジックが、広く日常生活でそのまま応用できるのかという疑問は残る。

 今年9月に刊行された『こっそり人を操る心理法則』を見てみよう。

「300円の付箋で、第一印象を良くする」「200円のリングメモがクレーマーをファンに変える」「200円の栄養ドリンクで苦手な人が見方に変わる」と、不況時代に相応しい実際的かつ質素な目次が並んでいる。その内容はといえば……

「付箋に自分の特徴を3つ書いておき、意識しておくようにする」「クレームを受ける時はメモをとるようにする」「苦手な人にこそ栄養ドリンクなどを差し入れれば仲良くなれる」

 といった、特別に言われるほどでもないことのようなものばかり。

 他にも「優れたアイデアはリラックスしているときに生まれる」「相手が驚くくらい大げさに謝った方が上手くいく」など、社会人なら誰でも知っているようなアドバイスが続く。“これがメンタリズムってことなの?”と、思わず首を傾げてしまう。

 やはりメンタルマジックのノウハウとは、純粋にエンターテインメントとして驚きを楽しむもの、もしくはサギ行為に悪用された際に告発するもの、として活用するからこそ意義があるのではないだろうか。社会全般のシーンにまで広げてしまっても、人間関係における当たり前のコツ・気配りといった程度にしか感じられない。間違ったことは言ってなくても、当たり障りが無さ過ぎるのだ。

 DaiGo自身はセルフ・プロデュースが上手い人間のようだし、そこは彼の長所でもあるだろう。『こっそり人を操る心理法則』において一番「上手いな」と感じたのは、コンビニ商品を活用するよう勧めているところだ。大豆バー、メモ、栄養ドリンクの他、コーヒーやレモネードなど、コンビニに置いてある品を活用するよう、それとなく提言しているのだ。イジワルな見方かもしれないが、これは本書をコンビニ流通にて扱ってもらう狙いだろう。だがその当たり障りなく上手く立ち回るところが、同時にDaiGoに物足りなさを覚える点でもある。「すべての超常現象は科学的に再現できる」と言うのなら、それこそユリ・ゲラーや某霊能者の「テクニック」を解説し、対決するくらいしてもらえれば面白いのだが……。
(吉田悠軌)

最終更新:2015.01.19 04:55

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