「籾井の存在が恥ずかしい」会長罷免を要求したNHK元職員たちの肉声

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NHK公式HPより「NHKについて 〜視聴者のみなさまへ/お知らせ」


「なんとか辞めていただかなければ、NHKの信用がまったくなくなってしまう」
「みんな猛反発で怒り狂うというか、そういう感じであります」

 今年8月21日、NHKの元職員たちが、今年1月に就任したNHK会長・籾井勝人に怒りの声をあげた。就任会見での「(従軍慰安婦は)戦争をしているどこの国にもあった」発言に始まり、百田尚樹や長谷川三千子などの安倍首相と近い人物で固めた経営委員会の“お友だち人事”……公共放送、そして言論機関のトップとは到底思えぬ政権へのすり寄りが目に余る籾井氏に対して、元職員たちが「NO!」を叩きつけたのだ。

 この「NHK全国退職者有志」は7月に「籾井勝人会長への辞任勧告か罷免」を求めた申し入れを経営委員会へ提出。8月の会見の時点で元職員たちの署名数は1527名に達している。いわば籾井氏は、身内から「退任しろ!」と“血判状”を突きつけた格好だ。

「創」(創出版)11月号に掲載されたこの会見でのOBたちの声を読むと、どれだけNHKが危機的状況なのかがよくわかる。

「(ここ最近のNHKは)ジャーナリズムとは言えないスタンスで報道している」。そう話すのは、1973年入局で『おはようジャーナル』や『ETV特集』などの教養番組のディレクターを務めた池田理恵子氏だ。具体例として池田氏は、集団的自衛権の行使容認を閣議決定したニュースの“偏向ぶり”を挙げている。

「『ニュースウオッチ9』で与党の発言内容を放送している時間と、反論とか首相官邸の周辺に集まったデモの話題をどれくらいの時間、取り上げているかといったら、与党側の放送時間が114分、反対論の方は77秒しかなかったといいます」(池田氏)

 この数字にも政権への気遣いが見えるが、59年入局で元美術デザイナーの小池晴二氏は、「これからいろいろ番組内容への介入が出てくる恐れが強い」と、現場への“政治的介入”を心配する。

 いや、この心配はすでに現実になっている。7月にはNHKがニュース番組の内容をめぐって「安倍官邸からを土下座させられた」一件が「FRIDAY」(講談社)で報道された。集団的自衛権をテーマにした7月3日放送の『クローズアップ現代』に菅義偉官房長官が出演した際、国谷裕子キャスターが「他国の戦争に巻き込まれるのでは」「憲法の解釈を簡単に変えていいのか」など“ごく当たり前の”質問をしたのだが、番組終了後、安倍官邸が「君たちは現場のコントロールもできないのか」と恫喝。そのとき、籾井会長をはじめ上層部が“平身低頭”となって謝罪したというのだ。菅官房長官はこの報道を「ひどい記事」と否定したが、その後、講談社に抗議などは行っていない。おそらくこうした政治介入はすでに日常的に行われ、今後、さらにエスカレートしていくはずだ。

 しかも、事態が深刻なのは、NHK内部で“反・籾井”を訴えることができない状況であることだ。

「NHK職員に今は言論の自由が保証されていません」と話すのは、77年入局の永田浩三氏。永田氏は在局中、自身が番組プロデューサーをつとめたETV特集のシリーズ『戦争をどう裁くか』第2夜「問われる戦時性暴力」が、当時、安倍晋三と中川昭一ら政治家の介入を受け(安倍と中川は否定)、番組改編問題へと発展したことでも有名。いわば、“政治的圧力”の恐ろしさをよく知る人物だが、「現役の職員が籾井会長の罷免を求める、そういう自由がありません。彼らはとても残念に悔しく思っています」と、現場の思いを代弁。いまやNHKは政治家の介入を受ける以前に権力装置となっているらしい。

 また、「第2次安倍内閣はNHKを国営化する道へまっしぐらだ」というのは、59年入局で元政治部記者、ボン支局長、甲府放送局長を歴任した川崎泰資氏。以前、「マスコミは国益追求に重点を置くべきだ」と言った佐藤栄作の話をあげ、「国益というともっともらしいけれども、実は佐藤内閣の利益ということで、今の安倍も同じなんですね。国益というけれどもこれは安倍政権の利益ということです」と批判する。

 このようにOBたちの言葉には不安と怒り、そして危機感に満ちているが、もうひとつ、こんな感情があるらしい。

「どうしてこんなに多くのOBが声を上げたかというと、安倍政権に対する危機感もあるけど、共通しているのは『恥ずかしい』という気持ちじゃないでしょうか」(小中陽太郎氏・元テレビ文芸部ディレクター)

 77年入局で、『おはよう日本』『ニュース7』などを担当してきた元エグゼクティブアナウンサーの村上信夫氏は、「2年半前に辞めて以来、NHKのことをとやかく言うのは避けてきましたけれども、やむにやまれぬ思いでこの場に臨んでいます」と前置きして、こう話している。

「僕はNHKを辞めてから『嬉しい言葉の種蒔き』をしてきました。(中略)言葉というものは使い方ひとつで武器にもなれば楽器にもなると言っています。会長はそういう点ではうれしくない言葉を考えもしないで武器として使っているような気がしています。かつてのお膝元であるトップのリーダーが、うれしい言葉を使っていない、武器としての言葉を使っているということがとても情けない思いで、本当は情けないなんてうれしくない言葉を使いたくないんですけれども」

 恥ずかしい、情けない──。プロデューサーにディレクター、美術、技術、カメラマン、記者、アナウンサーと、職種の垣根を越えて元スタッフたちが籾井氏への不信感をあらわにしている、この異常ともいえる事態。そもそも籾井氏への危惧は、会長就任前からあった。原発への批判や日本の戦争責任を追及する番組を制作するNHKに対し、自民党内部では「偏向報道だ」と問題にする声が挙がっていたためだ。そこで白羽の矢が立ったのが、安倍首相自らが「信頼し評価している」籾井氏だった。そう考えると、籾井体制のNHKが“安倍ちゃん放送局”になるのは必然のこと。籾井氏の口から「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」というジャーリズムの真逆をいく発言が出てくるのは、当然の話なのだ。

 前述の川崎氏は、「(安倍は)国営化の野望をほぼ満たしつつあるというのが現状」と述べているが、今後、籾井体制がさらなる“偏向報道”を加速させていくのは必至。籾井氏の態度は「権力の監視機関」という役目を就任時から放棄しているが、OBたちの指摘通り、NHKの特定機密保護法や集団的自衛権などの報道姿勢を見ると、すでに国民の知る権利さえ守られなくなりつつあるのだ。

 公共放送の死は民主主義の危機を意味する──そのことを、わたしたち視聴者は忘れてはいけない。
(田岡 尼)

最終更新:2015.02.18 11:54

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