職場や学校にいる“めんどうくさい人”の対処法「狩野英考作戦」とは?

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『戦略的、めんどうな人の動かし方』(クロスメディア・パブリッシング)

 職場や学校に必ずいるめんどうくさい人。あなたもそういう人に悩まされていないだろうか。めんどうな人とうまくつきあい、物事を頼んだりするのはどうすればいいのか。

「めんどうな人」というのははだいたい4つのタイプにわけられるらしい。タイプその1は、思い込みが激しくキレやすい直情型の「瞬間パワー型」。先輩にいたらうっとうしいタイプだ。その2は何を考えてるか分からないぼんやりタイプの「無反応マイペース型」。部下にいたらイライラして胃が痛くなりそう。その3はとにかく偉そうな尊大オヤジタイプの「建前優先ガンコ型」。きらわれ上司の典型だろう。その4は重箱のスミをつつき人のアラを探すのが得意なネガティブタイプの「理屈先行インテリ型」。経理がこのタイプだったらつらい…。

 こうしたタイプ別に対処法を教えてくれるのが、『戦略的、めんどうな人の動かし方』(五百田達成/クロスメディア・パブリッシング)。著者の五百田氏は作家・心理カウンセラーで、東京大学教養学部卒業後、マスコミ職を経て、サラリーマン時代の実体験と豊富なカウンセリングを生かした「職場の人付き合いにおける実践的アドバイス」を専門にしているという。

「人を動かす」というテーマで様々なビジネス本が出ているが、それらの多くは、ビジネスで成功した大物経営者がドヤ顔で自分の成功談をつらつらと語り、それをゴーストライターがいい話風にまとめているパターンが多い。内容のほうも、「熱い夢をストレートにぶつけよう」といったありきたりの説教をしているだけで、凡人には参考にならないものがほとんど。

 その点、この本は「自分に影響力がないなら、頭を使おう」というのをスローガンにしているだけあって、かなり実践的だ。心理学の最新理論、はたまた職場のリアルな人間関係といった幅広いテーマからヒントを得て生み出された50のワザをレベル別に紹介してくれる。しかも、それぞれのワザに、ちょっと変わったネーミングがつけられているのが特徴だ。その中から印象に残ったものを選んでみた。

■狩野英考作戦
 人気芸人・狩野英考がテレビで披露していた世渡り術にヒントを得た作戦らしい。やり方は具体的な話は一切せずに、相手の好きな話を好きなだけ聞いてあげる。そして、相手が話を聞いてもらっていい気分になった頃に、スッと自分の希望をお願いして、要望を通す。狩野はコツを「人の話をきちんと聞くときは、聞いてやるというトーンではダメで、むしろ自分の話を聞いてほしいかのように話しかけ、結果的に相手の話を引き出すように持っていくのが大事」と語っていたという。

■ビッグダディ作戦
『痛快!ビッグダディ』(テレビ朝日)にて人気を博した通称ビッグダディこと林下清志の処世術にヒントを得た作戦。端的に言うと「“この人ならしょうがない”と思わせるテクニック」。やり方は「私はこういう人だから」と子どものように開き直ってしまうことで状況を強行突破。自分のキャラを宣言し、相手にもそれなりの扱いを強要する。

■落としのヤマさん作戦
 よく刑事ドラマで見る、容疑者を目の前にして、片方が机をばんばん叩いて荒っぽくつめよった後、片方がカツ丼をすすめるなどして優しくし、ホロリと泣かせて自供を促す作戦。つまりは「アメとムチを使う古典的なテクニック」。やりかたはギリギリまで追い込んだあげく、逃げ道を提示。そうすれば、相手は感謝とともにその逃げ道を選ぶ。二人組で行うのがおすすめ。

■大後悔時代作戦
 この作戦のネーミングはもちろん航海と後悔をかけたダジャレ。誰もが抱えている「後悔はしたくない」という心理をくすぐる作戦。端的に言うと「○○しないと損するよ、という不安換起メッセージを送るテクニック」。やり方は決定を迷っている相手に「今これをやらないと他社にやられますよ、それでも後悔しませんか」と言って背中を押す。

■じゃないですか作戦
 冷静に考えれば「ん?」と思うことも、あたかも前から決まっていた当たり前のことのように「〜じゃないですか」と当たり前に話して納得させる作戦。つまりは「こっちで勝手に前提を作り、相手に動いてもらうテクニック」。やり方は「これをいつまでに決済していただくとして、何をやればいいですか?」などと質問し、相手の指示待ちという構図を強引に作る。

■トイレの神様作戦
 トイレで見かける「いつもキレイに使ってくださりありがとうございます」という張り紙にヒントを得た作戦。つまりは「先にお礼を言ってしまうことにより、してほしい行動を押し付けるテクニック」。やり方は会議の前などに、相手に「会議を回す技術」や「決断力」があることを前提に感謝する。そうやって、暗に「ちゃんと仕切れよ」とメッセージを発信。

■フォックス・タイガー作戦
「虎の威を借る狐」になる作戦。つまり「自分でなくほかの人にしてもらう“他力本願”のテクニック」。やり方は、自分が嫌われていたりなめられたりしていて交渉がうまくいかない時は、美人やイケメン、上司など「頼まれたら断りづらい人」をセレクトし、かわりにやってもらう。

 どうだろう。中にはビッグダディ作戦のように凡人にはなかなかむつかしそうな作戦もあるが、めんどうな人に怯え、ただ我慢しているよりは、こうしたワザを意識するだけで、少し攻撃的な気持ちになってストレスから解放されるのではないだろうか。

 また、こういった「人を動かすワザ」を知っていれば、逆に相手が自分に対して何かを説得しようとしているときに、相手の胸の内が分かる。これらを知っているだけで強引な仕事相手やわがままな上司に振り回されることがなくなるかもしれない。

 とりあえず、試す価値は十分ありそうなワザの数々。ただ、あのサムいネーミングはもうちょっとなんとかしてほしい気がしないでもないが……。
(岡崎留美子)

最終更新:2018.10.18 04:55

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