八つ当り!? 絶不調のフジテレビ・亀山社長が視聴率調査を批判

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『メディアの苦悩 28人の証言』(光文社)

 フジテレビの恒例番組『27時間テレビ』が、本日18時30分から始まった。今年は総合司会にSMAPをたてて「武器はテレビ。」なんていう大仰なタイトルがついている。

 だが、近年のフジテレビはその「武器」が“絶不調”の状態だ。新番組はことごとく惨敗、今期はかろうじて木村拓哉主演の『HERO』が高い数字を獲得しているがこれも続編でしかなく、瀕死の月9枠の盛り返しを狙ったフジが背水の陣で木村に頼み込んで実現したという話もある。

 こうした危機的状況を裏付けするように、先日はフジの全社員約1500人のうち、3分の2にあたる1000人の人事異動を発表。コンテンツ事業局に異動していた『めちゃ×2イケてるッ!』の育ての親である片岡飛鳥プロデューサーをバラエティ担当に戻すなどテコ入れを図っているが、テレビ業界ではすでに「手を付けるのが遅すぎた」という声もあがっている。その“戦犯”は、もちろん現社長・亀山千広氏だ。

 亀山氏が社長に就任したのは、2013年6月。90年代には『ロングバケーション』『踊る大捜査線』などの人気ドラマをプロデュースし、03年に映画事業局へ。05年には邦画の興行収入約30%がフジの映画事業が占めるなど、大きな成果を出した。しかし、社長に就任してからは『笑っていいとも!』の打ち切りを断行するも、後番組『バイキング』はまったく数字がふるわずじまい。月9も『極悪がんぼ』で大きく路線変更してみたものの、月9史上最低視聴率を記録している。

 そんな状況に耐えかねたのか、亀山社長は最近、とあるインタビューでついにタブーを口にしてしまった。それは、ずっとテレビというメディアの指標となってきた視聴率調査への批判だ。

 発言があったのは、5月に発売された『メディアの苦悩 28人の証言』(光文社)という本におさめられたインタビューでのこと。同書の著者は元電通の社員で現インターネット広告推進協議会事務局長の長澤秀行氏だが、亀山社長は冒頭、長澤氏に「これからのテレビはどうあるべきですか?」と問われると、なんと「全くわからないですね。お聞きしたいくらいです」と回答を拒否。そして、テーマとはまったくちがう視聴率調査のことをしゃべり始めたのだ。

「かつては視聴率というものは国民の総意だと僕らは信じていた。ただ、いわゆる『コンテンツ』という言葉が前面に出始めた頃から、実はちょっと『……?』ってなってきているところもある。(中略)こんなこと僕が言っちゃいけませんけど、果たして今の世帯視聴率は何を表しているものなんだろう……?と。少なくともコンテンツそのものの本当の価値、総合力を表しているとは素直に思えないのが正直なところです。」

 まるで、我々はいいコンテンツをつくっているのに、今の視聴率では数字に反映されない、とでもいいたげなのだ。そのうえで、亀山社長はこんな泣き言を語り始める。

「ネットの何百万ダウンロードとか、何千万ページビューという数字に比べて、テレビは15とか20とか二桁の数字で、分母の100を超えることは絶対ないんです。それって悲しくなりますよ(笑)」

 え、そんな問題?と唖然としていると、今度は“オワコン”といわれているテレビがいかに今も影響力をもってるかを強弁するこんな発言も。 

「たとえばHUT(総世帯視聴率)が65%だとすると、5000万人、6000万人が見ていたと単純に言えませんが、少なくとも数時間で同時に数千万人を間違いなく集めているわけです。そんなメディアは他にありますか?」

 なんだか新橋の居酒屋で愚痴と過去の栄光話を交互に語っている窓際サラリーマンみたいで悲しくなるが、そんな読者をおいてきぼりにして、ひとりで勢いづいた亀山社長はこんな提案をするのだ。

「だから、今の視聴率では測れないですが、いったいどれくらいの数字を見たのかを出してみませんか?」
 
 さらに、亀山社長はこうたたみかける。

「でも、その数字を言えない仕組みに今はなっているんですよ。だから、電通さんだったら、こういう本をお書きになるんだったら、テレビの未来を僕なんかにお聞きにいらっしゃるんじゃなくて、むしろそういうところに一緒に危機感を持ってほしいんですよ(笑)」
 
 こ、これって、もしかして電通批判? たしかに視聴率調査は、電通の“子会社”のビデオリサーチが独占しており、その調査方法が実態を表していないという批判はしばしば聞かれてきた。だが、まさか民放キー局の社長からそんな批判が飛び出すとは……。そこまでフジテレビは追い詰められているということなのだろうか。

 もっとも、亀山社長の指摘は的を得ている部分もある。視聴率至上主義がテレビというメディアをつまらなくしてきた部分は絶対にあるし、マーケティングという観点から見ても、現在、50代以上の中高年に支えられている世帯視聴率でCM価格を決めるというのは明らかにナンセンスだ。

 だが、フジテレビが絶好調だった1980年から2000年代、その視聴率をもっとも重視していたのが当のフジテレビではなかったか。数字をとるためには手段を選ばず、売れっ子タレントを囲い込み、似たような番組ばかりを量産。しかも、自分たちの視聴率を誇示し、番組の中でまで「視聴率三冠王達成!」などと喧伝したのもフジテレビだった。それが自分たちが低迷したとたん、“視聴率のやり方がおかしい”といいだしても、あまり説得力はないだろう。

 だいたい、亀山社長は今も数千万人がテレビを見ているなんて本気で思っているのだろうか。亀山社長のいうとおり、ほんとうに全数調査をやったら、逆に「え、テレビってそんな数の人間しか見てなかったの?」と業界が凍りつくような数字がはじき出される気がしてならないのだが……。
(酒井まど)

最終更新:2018.10.18 03:24

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メディアの苦悩――28人の証言 (光文社新書)

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