絶景より野生の猿に感動? 外国人が選んだ意外な「日本百景」とは

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『外国人が選んだ日本百景』(講談社+α新書)

 昨年、富士山が世界遺産に登録され、2020年に東京オリンピックの開催が決定するなど、世界的に注目されている日本。いまや、秋葉原で本気コスプレに興じ、器用にラーメンをすする外国人観光客の姿も珍しくなくなった。

 そんな彼らに人気の観光スポットと言えば浅草や秋葉原、築地に京都……というのが定説だが、『外国人が選んだ日本百景』(講談社+α新書)には、われわれ日本人が想像だにしない意外なスポットとその魅力が挙げられている。

 著者は、日本の旅行情報や文化情報を集約したサイト『ジャパンガイド』を運営するステファン・シャウエッカー氏。スイスで生まれ、日本好きが高じて群馬に移住し、自分で見て、聞いて、歩いて収集したきめ細かい最新情報を発信する筋金入りの日本フリークだ。

 本書には、月平均で800万アクセスを誇る『ジャパンガイド』による日本の観光地BEST100ランキングが掲載されているが、その評価は訪れた人数だけでなく、登録ユーザーによる5段階の満足度も加味。つまりリアルな訪問者の声ということだが、まず、50位以内に東京では「渋谷」(46位)と「築地」(50位)のふたつしか入っていない事実が興味深い。

 しかも、2年前にできたばかりの「東京スカイツリー」(73位)より外国人が惹かれるのは、近畿圏以外の人は存在すらあやふやな「姫路城」(9位)だという。「渡櫓(わたりやぐら)で三基の小天守と繋がった連立式天守は防御性に優れ、日本に12城しかないオリジナルのまま残された天守の中でも最大規模の大きさに感動」と、もはや城壁マニアレベルの視点に驚かされるが、山の上に鎮座する和歌山県の「熊野那智大社」(22位)は「朱塗りの三重塔と荘厳な大自然の滝の不思議なコンビネーションが最大の魅力」と絶賛。行きづらい場所にあっても外国人観光客にとって「伝統的な日本やありのまま残された自然の原風景」を体感できるスポットがたまらないようで、街全体に風情が漂う「城崎温泉」(26位)に至っては、「外湯があり、美しい川が流れ(中略)私は外国人なのに、なぜか『懐かしい』と感じてしまう……」とノスタルジー体験が斬新すぎる。

 さらに、雪が降るなか温泉に入るスノーモンキーでお馴染みの「地獄谷野猿公苑」(24位)には、「先進国の中で野生の猿が見られるのは日本だけです。人工的に作られたモンキーパークのような施設でも人気があるのですから、自然の山の中で温泉に入っている猿なんて見られたら……最高です!」と大興奮。絵に描いたような絶景が魅力である長野県の「上高地」(29位)も、「豊かな自然の中には野生の猿もいます。全体の数は100匹ほどで小さいグループごとに木の上で食べたり遊んだりしている姿はとても愉快」と紹介し、「嵐山」(36位)でも竹林を始めとした自然の素晴らしさを述べた後に「さらにモンキーパークもあります」……。観光客誘致に悩む地方自治体は今すぐB級グルメ会議を止め、近所の山に“モンキーマジック”が潜んでいないかを調査したほうがよさそうだ。

 もちろん「宮島」(2位)や「清水寺」(4位)、「東大寺」(13位)といった定番人気の名所も少なからずランクインしているだけでなく、例えば「宮島は夜はライトアップされ、8時頃までは人が少ないので早朝の散歩が爽快」といった実用的な情報もふんだんにもりこまれており、「周辺旅館の宿泊料金が高い」「ここがなければわざわざ訪れる人はいないと思う」という、欧米人ならではの忌憚のない意見も満載。そして何より、「約120種類もの苔を使って作る庭園を見た時の思いは、筆舌に尽くし難い」寺や、「アメリカの日本庭園専門誌で何年も1位に選ばれている庭園は完璧といえるほど美しい!」美術館など、聞いたこともない名所の描写は、読んでいるだけで行きたくなってしまう。

 どの地方にいっても中身は大差ない巨大アウトレットモールや、「あべのハルカス」「虎ノ門ヒルズ」などの新興高層ビルのような新しい観光地もいいが、広告絡みの提灯持ち記事とネットに氾濫する素人の私怨口コミに飽きた方は、本書を片手に、改めて日本の魅力に立ち返ってみてはいかがだろうか。
(藤谷良介)

最終更新:2018.10.18 05:02

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