PC遠隔操作被告の弁護人は池田大作の弁護人だった!

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『訊問の罠 ――足利事件の真実』(角川oneテーマ21) 

「あなたを見捨てない!」。こんな発言で注目を集めたのが、パソコン遠隔操作事件で片山祐輔被告の弁護をつとめた佐藤博史氏だ。自作自演メールが発覚した当初は、えん罪を主張していたことに対して、「赤っ恥」「見る目がない」と嘲笑が浴びせられていたが、自殺をはかろうとした被告を説得して出頭させ、裏切りを一切非難せずに弁護を続けたことで、「だまされても相手を信用し続ける姿勢はすごい」「人としてのやさしさに感動した」「こんな誠実な弁護士は他にいない」と、日本中から感動と賞賛の声が集まった。

 だが、佐藤弁護士はワイドショー視聴者が感動しているような「だまされやすい、いい人」なだけの弁護士ではない。ネトウヨが批判するたんなる「人権派」でもない。

 佐藤氏といえば、足利事件で無罪を勝ち取った弁護士として知られている。足利事件は1990年5月、栃木県足利市で幼女が殺害され、幼稚園バスの運転手だった菅谷利和さんが逮捕、無期懲役判決を受けた事件。佐藤氏はDNA鑑定の知識を買われて弁護人を依頼され、二審から担当。そこでも無期懲役判決が出たが、その後の2009年6月、DNA再鑑定の結果、無罪が明らかになり、菅谷さんは17年半ぶりに釈放された。

 だが、佐藤氏は菅谷さんの無実、えん罪を信じて、弁護を引き受けた訳ではなかった。無罪判決直後に出版された菅谷さんとの共著『尋問の罠──足利事件の真実』(角川書店)で、佐藤氏ははっきりとこう書いている。

〈ある人の弁護を引き受けるということは、弁護士にとっても重大な判断です。(中略)私が引き受けるしかないと思えたことから、とっさに菅谷さんの弁護人になることを決意したのです。菅谷さんが無罪であると思ったからではありません〉

〈刑事弁護人は、被告人の無実の訴えを、たとえ地球上のすべての人が信じなくとも、最後まで信じて弁護しなくてはならない使命を帯びています。私は、これを弁護人の「誠実義務」と呼び、弁護人のもっとも重要な任務であると説いてきました〉

 つまり佐藤氏の行動をつらぬいているのは被告への信頼などではなく、弁護士としての使命や義務、プロ意識なのだ。

 実際、それを裏づけるように、佐藤弁護士は、えん罪事件や社会的弱者を守る訴訟だけでなく、意外な人物の弁護人も引き受けている。それは、あの創価学会の池田大作名誉会長だ。

 今から18年前の1996年、創価学会元女性幹部が「週刊新潮」(新潮社)で、池田大作にレイプされたという告発手記を発表。直後に池田大作に対して、レイプ被害で受けた精神的苦痛の賠償を求める民事裁判を起こした。いわゆる「池田大作レイプ訴訟」とよばれているものだが、佐藤氏はこの裁判で、池田名誉会長側の弁護団に名を連ね、しかも中心的な役割を担っているのだ。

 しかも、この裁判で佐藤氏ら弁護団は、池田名誉会長にレイプされたという女性幹部の訴えをそもそも「狂言訴訟」だとする戦術を採用。女性の法廷証言すら拒否して封じ込め、一審、二審、最高裁と、すべての判決で“原告の請求棄却”という全面勝利を勝ち取っている。

 ちなみにこの裁判終了後、池田弁護団は『判決 訴権の濫用―断罪された狂言訴訟』(日本評論社)という本を出版している。序文には、弁護団長だった宮原守男氏のこんな池田礼賛が掲載されている一冊だ。

〈八〇〇万世帯の会員を抱えるわが国有数の宗教団体である創価学会の最高指導者、池田大作名誉会長は、世界各国の指導者・有識者と対話を重ね、一〇〇を超える大学に名誉博士、名誉教授として迎えられている平和活動家・哲学者・教育者であり、世界桂冠詩人の称号を贈られた詩人でもある〉

 この本にも佐藤弁護士は共著者として名を連ねており、弁護団とともにレイプ被害を訴えた女性や「週刊新潮」に対して徹底批判を展開している。

 こう書くと、レッテル貼りが大好きな一部のネット民は、佐藤氏が学会や池田大作と特別な関係があったと騒ぎ立てるもしれないが、取材した範囲ではその形跡はない。このケースでも、佐藤弁護士は腕を見込まれて弁護団に抜擢され、依頼者である池田大作名誉会長を勝たせるために、さまざまな戦略、技術を駆使して奮闘と見るのが妥当だろう。

 おそらく佐藤弁護士にとってもっとも重要なのは、依頼人の主張を勝ち取ることなのではないか。そう考えると、PC遠隔操作事件における肝の据わったブレない対応も納得がいく。会見で佐藤氏は「私自身は否認している被疑者が『実はやってました』と告白することに何回か遭遇している。それをもとに弁護するのが弁護士だ。裏切られたと非難するものでもない」と語っていたが、まさに佐藤氏は弁護士の仕事をまっとうしようとしただけなのだろう。

 見事なまでのプロ意識。そういえば先日、「週刊文春」(文藝春秋)14年6月5日号で、佐藤氏が金融商品取引法違反の企業の顧問をつとめていたことが報道されていたが、もしかすると、佐藤弁護士に一番近いのは『リーガル・ハイ』で堺雅人が演じた敏腕弁護士・古美門研介なのかもしれない?
(白門志郎)

最終更新:2017.03.02 05:36

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