小田原「保護なめんな」ジャンパーは氷山の一角! 安倍政権下で横行する生活保護申請者への差別と辞退強要

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 こうした生活保護バッシングの波に乗り、同年12月の衆院選で自民党・安倍晋三総裁は「生活保護の給付水準を10%引き下げる」という公約を掲げて政権に復帰。生活保護費の削減を断行し、13年には生活保護の申請厳格化という「水際作戦」の強化ともいえる生活保護法改正と生活困窮者自立支援法を成立させてしまったのである。

 そもそも、小泉首相から安倍首相が引き継ぎ、いまなお「アベノミクス」と称してつづける新自由主義政策は、貧困を広げる一方で社会保障を「自己責任」として切り捨てていくものだ。「福祉や保障に頼るな、家族で助け合って生活しろ」というその考え方は、公的責任を逃れ、個人にすべての責任を押しつける。そうしたなかで生活保護バッシングが吹き荒れたことは、偶然の一致などではない。煽動したのが自民党の政治家だったように、起こるべくして起こったものだったのだ。

 だからこそ確認しなくてはならないのは、バッシングの根拠としてもち出される不正受給の問題だろう。自治体による調査強化によって不正受給の件数と金額が過去最多となった2012年度でも、保護費全体で不正分が占める割合は0.53%。一方、生活保護を受けられる水準にあり、実際に受給している人の割合を指す「捕捉率」は2割程度だと言われている。つまり、困窮状態にあるにもかかわらず生活保護を受けていない人が圧倒的である、ということだ。

 不正受給の問題以上に深刻なのは、この受けるべき保障を受けずにいる人びとの存在だということは明白だ。いま、力を入れるべきは捕捉率の向上だが、しかし、そういう空気はこの社会にまったくない。

 だからこそ、何度でも繰り返し言わなくてはいけない。生活保護を受けることは憲法で保障された「権利」であり、生活を保護することは国家の責任だ。それを自民党および安倍政権は、不正受給問題だけを取り上げ「不当に得をしている人間がいる!」という憎悪を掻き立てることで、社会保障を自己責任にすり替えようとしているのである。

 こうしたなかでは、「水際作戦」という行政の犯罪的行為も、小田原市の醜悪なジャンパーさえも、肯定されかねない。「行政による殺人」を見過ごす危うい社会になりつつあるということを、今回の小田原市の問題は突きつけているのだ。
(編集部)

最終更新:2017.01.19 09:08

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