逮捕された講談社社員“『進撃の巨人』生みの親”報道は間違いじゃない! 報道を非難するネット世論の歪み

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「もちろん最終的に、連載のゴーサインを出したのは編集長です。というか、『少年マガジン』などでは連載できない『進撃の巨人』のようなマニアックな作品を連載するために『別冊少年マガジン』を立ち上げた。彼がいなくては、『進撃の巨人』は世に出ていなかったと思います」(講談社社員)

 ようするに、容疑者が『進撃の巨人』の生みの親のひとりであることは動かしがたい事実なのだ。むしろ、それをファンが「無関係」と言い切るのは、逆に同作の経歴を無視していることになるだろう。

 もっとも、事実であっても、容疑者の段階で氏名や勤務先など個人情報を報じるべきではない、という論理ならよく理解できる。たしかに、逮捕されたとはいえ、民主主義国家には推定無罪の原則があるし、この容疑者の男性はまだ容疑を否認している。「知る権利」との兼ね合いの問題はあるが、有罪が確定していない段階で犯人扱いをし、個人情報を書き立てるのは人権侵害だ、というのはひとつの考え方だろう。

 ところが、いまネット上で飛び交っている発言を観察すると、容疑者の男性の氏名や、講談社勤務であること、逮捕前の彼のSNSでの発言が盛んに報じられていることについては、まったくクレームをつけていない。また、男性は「少年マガジン」副編集長などを歴任し『GTO』や『七つの大罪』、『聲の形』などの大ヒット作も手がけており、マスコミはこれらの作品名も報じているが、ネットではほぼ『進撃の巨人』の報道だけが批判の矛先になっている。

 そう考えると、いまネット上で叫ばれているのは「容疑者段階で個人情報を報じるな」という話ではない。「俺の大好きな『進撃の巨人』を汚すな」という話にすぎないのだ。

 だとしたら、これは報道というものをまったく理解していないと言わざるをえない。逮捕された以上、ある程度の個人情報を報道してよいという立場に立つなら、その仕事内容も社会の正当な関心事として伝えることになる。とりわけ、容疑者が作品などの表現に関わる仕事をしていたのならば、その人物が手がけた作品名を報じるのは、当然だろう。

 それを、「報道するな」とがなりたてるのは、“見たくないものは見たくない”という個人的な感情を社会正義として押し付ける傲慢な行為であり、民主主義の根幹である表現の自由、報道の自由をゆるがす幼稚な態度だ。

 しかも、こうしたネット世論の“見たくないものは見たくない”という感情の押し付けは、一方で反転し、逆に“見たいものだけを切り取り、攻撃材料にする”というグロテスクなかたちで表出している。いま、ネット上では、またぞろネット右翼たちが、容疑者の男性が韓国籍であるのをあげつらって、こんなことをほざいているのだ。

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