トランプのマスコミ排除を批判する一方で…橋下・安倍のメディア圧力を批判できない日本のマスコミのだらしなさ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 さらに13年には、朝日新聞が大阪維新の会(当時)の政党広告の掲載しなかった問題をきっかけに、朝日の取材を拒否。取材拒否はじつに半年近くもつづいた。また、同年5月には橋下が「従軍慰安婦が当時必要だったことは誰でもわかる」と発言したことを報じた朝日新聞・毎日新聞をはじめとする報道を「大誤報をやられた」と攻撃。これは明白なメディアへの責任転嫁だったが、橋下はこの一件で毎日おこなっていた囲み取材の中止を宣言したのだった。

 マスコミを仮想敵に仕立て上げ、攻撃を繰り返すことで“闘う政治家”を演出し大衆を煽る──このように、橋下がやってきたことは選挙戦中のトランプとそっくりそのまま同じである。

 そして、この“橋下流”を取り入れたのが、総理大臣に返り咲いた安倍首相だ。かねてより安倍首相の“朝日嫌い”は有名だったが、第二次安倍政権発足後からはそれを憚ることなく公言。たとえば14年に枝野幸男・民主党幹事長(当時)の政治資金問題について、安倍首相が側近議員との食事会で「撃ち方やめになればいい」と発言したとされる問題では、各社ともこの発言を報じたにもかかわらず、なぜか朝日だけを問題視。衆院予算委員会において「朝日新聞の報道は捏造」と名指しで批判し、「朝日新聞は安倍政権を倒すことを社是としているとかつて主筆がしゃべったということでございますが」などと攻撃した。

 橋下のメディアコントロールについては日本ジャーナリスト会議による16年度JCJ賞を受賞した松本創氏の『誰が「橋下徹」をつくったか──大阪都構想とメディアの迷走』(140B)に詳しいが、メディアに対する恫喝が繰り返されてもメディア側は橋下人気にあやかろうと無批判に取り上げ、「改革者」のイメージを大衆に擦り込んでいった。他方、安倍政権はテレビ局に対して批判を封じ込めるための通達をおこない、気にくわないキャスターたちを降板に追い込んでいったのである。

 この国のメディアはこうした実態を体験し、自分たちもそうした権力者に取り込まれている当事者であるにもかかわらず、トランプの言動に「メディアの役割は権力の監視だ」「自分の都合の悪い人には発言の機会を許さないなんて」などと嘆息するのだ。まったく、嘆息したいのは視聴者のほうだ。

 しかも驚くべきは、言語道断のトランプのメディア対応に対して「当然だ」などと述べるコメンテーターがいた、ということだ。実際、『ひるおび!』では八代英輝弁護士が、CNNは選挙中からトランプ批判をおこなってきたことを“中立ではなかった”とし、“トランプから会見で無視されても仕方がない”などとコメントしたのだ。

 マイノリティに対するヘイトスピーチを繰り返してきたトランプを否定することは当然のことだが、そうした当たり前を「中立」なる言葉で歪曲し、メディアに対する圧力を正当化する……。さすがは安倍政権をアシストする発言を連発している八代弁護士らしい主張だが、この国のメディアはこうして詭弁を弄し、トランプ的な橋下・安倍という権力者をのさばらせてきたのだ。

 トランプとメディアの対立は、対岸の火事などではない。そして、トランプに対しては「メディアの役割は権力の監視だ」などと言えても、自国の瓜二つの権力者にはそれを言わないのが、この国のマスコミの実情なのである。
(水井多賀子)

最終更新:2017.11.15 06:08

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

トランプのマスコミ排除を批判する一方で…橋下・安倍のメディア圧力を批判できない日本のマスコミのだらしなさのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。ドナルド・トランプ安倍晋三橋下徹水井多賀子の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄