広末涼子が「育児放棄バッシング」に大反論! 紗栄子、辻希美、スザンヌら芸能人ママ攻撃にひそむ歪んだ“母性神話”

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 だが、日本社会はこの「育児は母親がすべき」という母性神話の強制力がとてつもなく強く、いまでも「3歳までは母親が常に傍にいないといけない」「24時間密着していることが望ましい」などというまったく科学的根拠のない迷信が平気でまかり通っている。

 それはやはり、政府が、長い間「子育ては母親が担うもの」として強制、刷り込みを行ってきたからだ。しかも、現在の安倍政権はその母親への育児押し付けを緩和させるどころか、さらにエスカレートさせる政策を次々と打ち出している。

 そもそも少子高齢化が深刻化しつつあった小泉政権下の05年、「子育ては社会のもの」という概念が取り入れられたことがあった。この年の国民生活白書「子育て世代の意識と調査」にはこんな一文が記されている。

〈親世代だけでなく、同世代の友人、あるいは会社の同僚、近隣に住む人々など、社会全体で何らかの子育てに参加する、あるいはそれができる仕組みを構築していくことが望まれる。子育てが家族の責任だけで行われるのではなく、社会全体によって取り組む、『子育ての社会化』が重要〉

 しかしこうした「子育ての社会化」理念に逆行し、ストップをかけたのが安倍政権だった。

 例えば、「女性の活躍」「1億総活躍社会」を打ち出した安倍政権は「3年育休」なるものをもち出したこともあった。これは「子育ては母親が担うべきもの」「3歳まで母親と過ごすことが大切」とする3歳神話に基づいたものだ。

 さらに、子育て支援の充実として、親・子・祖父母の3世代同居に対応するリフォームに所得税減税を打ち出したが、これにしても「子育ては母親や家族がする」というもので、「社会全体で子育て」という理念とは遠く離れたものだった。また、待機児童問題をクローズアップさせた「保育園落ちた日本死ね」問題でも、当初、安倍首相は「匿名である以上、実際起こっているか確認しようがない」などと嘯き、子育て世帯を支援する「子育て給付金」も廃止方針が決定している。

 こうした閉塞した現状のはけ口が、噴出する有名芸能人ママに対する育児放棄批判であり、バッシングなのだろう。

 しかし、いま、夫婦が子育てを等しく分担、共有し、家族だけでなく、国や自治体、社会全体がそれに協力していくことは世界的な流れであり、少子化を食い止める唯一の方策でもあると考えられている。

“母親への育児を押し付け”を続ける安倍政権に踊らされて不毛で無根拠な著名人“育児放棄”バッシングに耽るより、こうした建設的な政策実現をはかっていくべきだろう。
(伊勢崎馨)

最終更新:2016.06.26 07:03

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